第10章:ずっと
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タイトルマッチを終えたその夜。
「一郎、今日はどうする?私がそっちに泊まるか?」
「・・・・来てもらった方が助かる・・・かな」
激しい乱打戦にもつれ込んだ試合の後は、必ず誰かが選手に付き添って1日を過ごすことになっている。
万が一の事故を防ぐためだ。
宮田の場合は父親がトレーナーなので、自然とその役割を父親が果たすことになる。
帰宅したのは、高校の時に住んでいたアパートの、同じ一室。
実はここは、宮田の親戚が経営するアパートで、格安で入居させてもらっていたのだ。
「防衛を重ねればもう少しいい家に住めるようになるな」
「・・・まぁ、ここも割と気に入ってはいるけど」
狭いアパートの一室で父親が呟くと、息子はあまり興味がなさそうに返事をした。
荷物を降ろして休もうとした瞬間、電話の【留守】のボタンが点滅していることに気がついた。
ピ、と一押しすると、「デンゴンヲ サイセイ シマス」という機械的な音が流れた。
『おう、オレだ!小物なりによくやったじゃないか、褒めてやる!』ピー
『おめでとうな宮田!ラーメンでも奢ってやるよ!花が必要な時はおまけしてやるぜ!』ピー
騒々しい伝言に、宮田父が思わず吹き出す。
宮田はいつもの調子の鴨川3人組に、やれやれ、といった表情で肩をすくめた。
続いて流れた伝言。
『あの・・・高杉です。その・・・お、おめでとう。お疲れさまでした。ゆっくり休んでね』ピー
今までの騒がしい伝言とは違う落ち着いた女性の声は、部屋が静かなのもあって、意外と響き渡った。
宮田はメッセージを聞いても顔色一つ変えず、着替えをしながらポーカーフェイスを貫いていたが、宮田父は何かを思い出したらしい。
「一郎、これって例の見舞いに来てくれた子か?」
「・・・そうだけど。よく覚えているね」
「礼儀正しくて感じが良かったからな。そうか。これがお前が・・」
“お前がキスした高杉さんか”と言いかけて、父親は口をつぐんだ。
何か、言ってはいけないような雰囲気を察したからだ。
「何?」
「いや・・・あとで、お礼の電話でもしておけよ」
「わかってるよ」
宮田は軽いため息をついて、スウェットに着替えてベッドに潜り込んだ。
潜り込んですぐに、すぅすぅと寝息を立てて寝入ってしまった。
よっぽど疲れていたのだろう。
父親は、床に無造作に置かれたベルトケースを静かに開けて、中に入っているOPBF王者のベルトをまじまじと眺めながら、ぐっすり寝入る息子の頭を、一つ撫でた。
「ガキだと思ってたら、いつのまにか大きくなったもんだ」
「一郎、今日はどうする?私がそっちに泊まるか?」
「・・・・来てもらった方が助かる・・・かな」
激しい乱打戦にもつれ込んだ試合の後は、必ず誰かが選手に付き添って1日を過ごすことになっている。
万が一の事故を防ぐためだ。
宮田の場合は父親がトレーナーなので、自然とその役割を父親が果たすことになる。
帰宅したのは、高校の時に住んでいたアパートの、同じ一室。
実はここは、宮田の親戚が経営するアパートで、格安で入居させてもらっていたのだ。
「防衛を重ねればもう少しいい家に住めるようになるな」
「・・・まぁ、ここも割と気に入ってはいるけど」
狭いアパートの一室で父親が呟くと、息子はあまり興味がなさそうに返事をした。
荷物を降ろして休もうとした瞬間、電話の【留守】のボタンが点滅していることに気がついた。
ピ、と一押しすると、「デンゴンヲ サイセイ シマス」という機械的な音が流れた。
『おう、オレだ!小物なりによくやったじゃないか、褒めてやる!』ピー
『おめでとうな宮田!ラーメンでも奢ってやるよ!花が必要な時はおまけしてやるぜ!』ピー
騒々しい伝言に、宮田父が思わず吹き出す。
宮田はいつもの調子の鴨川3人組に、やれやれ、といった表情で肩をすくめた。
続いて流れた伝言。
『あの・・・高杉です。その・・・お、おめでとう。お疲れさまでした。ゆっくり休んでね』ピー
今までの騒がしい伝言とは違う落ち着いた女性の声は、部屋が静かなのもあって、意外と響き渡った。
宮田はメッセージを聞いても顔色一つ変えず、着替えをしながらポーカーフェイスを貫いていたが、宮田父は何かを思い出したらしい。
「一郎、これって例の見舞いに来てくれた子か?」
「・・・そうだけど。よく覚えているね」
「礼儀正しくて感じが良かったからな。そうか。これがお前が・・」
“お前がキスした高杉さんか”と言いかけて、父親は口をつぐんだ。
何か、言ってはいけないような雰囲気を察したからだ。
「何?」
「いや・・・あとで、お礼の電話でもしておけよ」
「わかってるよ」
宮田は軽いため息をついて、スウェットに着替えてベッドに潜り込んだ。
潜り込んですぐに、すぅすぅと寝息を立てて寝入ってしまった。
よっぽど疲れていたのだろう。
父親は、床に無造作に置かれたベルトケースを静かに開けて、中に入っているOPBF王者のベルトをまじまじと眺めながら、ぐっすり寝入る息子の頭を、一つ撫でた。
「ガキだと思ってたら、いつのまにか大きくなったもんだ」