第9章:遠回り
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宮田のタイトルマッチが、4月に確定した。
あと2ヶ月以上も先のことではあったが、タイトルのかかった試合を目前に、宮田の意気込みは今まで以上に強くなっていた。
『父さんのスタイルで世界の頂点を獲る』、そう教えてくれた日のことを、まるで昨日のことのように思い出す。
今回のタイトルマッチは、その“世界”までの足がかり…とても大切な試合だと、雑誌でも読んで理解していた。
それゆえ、宮田のタイトルマッチにかける思いがどれほどのものか、十分理解しているつもりだった。
自分にできることはただ、相手の邪魔にならないようにして、静かに勝利を祈ることだけ。
“きっと宮田はチャンピオンになるよ”
あのセリフを口走った時。
チャンピオンというものが、そんな遠いものだとは知らなかった。
飲まず食わずでフラフラになりながら、身を削って極限まで闘争心と集中力を高めて・・・
それでも、同じことをしている人たちの中で、ほんの一握りの人しか成れないのが「チャンピオン」。
宮田はそれをずっとずっと目指して来た。
幼い頃からずっとずっと。
どんな気分なんだろう。
夢に手を伸ばすことは誰にでもできるけど・・・
夢をつかもうとしている瞬間は、どんな感触なのかな。
宮田はどんな気持ちでいるんだろう。
初春。京都に開花宣言が出された頃。
試合まで後、1ヶ月となった。
宮田から、チケットを渡したいと連絡があった。
自宅まで持って来ると言う宮田を制止して、例の本屋で落ち合うことになった。