第9章:遠回り
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突然抱き合い始めたカップルを見て、通行人が「わぁ」だの「若いねぇ」だの面白がって茶々を入れながら通り過ぎていく。
「な、何それ・・・意味わかんない」
宮田を引き離そうと力を入れたが、たくましい2本の腕が奈々の体をしっかりと抱きしめて離そうとしない。
「オレの気持ちは最初から変わらない」
ぐっと力を入れて、再度抱き寄せる。
「・・・今はまだ、お前の気持ちに応えられない」
いつか聞いたようなセリフがまた飛び出す。
自分の気持ちには応えられないのに、期待してろ?
人のことをこんな風に抱き寄せながら、お断りのセリフ?
宮田の言うことなすこと、全てが理解できない。
「意味わかんないって言ってるじゃん!!」
大声に一瞬ひるんだ宮田の腕を振りほどき、奈々は右手を振り下ろす。
パシン、と冷たい音がして、手のひらは宮田の頬を捉えた。
通行人が通り過ぎ様にまた「おぉ」と小さい声で冷やかしを入れる。
「ッテェ」
「・・・な、なんで避けないのよ!?」
ボクサーともあろう人物が、ど素人の、それも女性のビンタを避けられないはずがない。
奈々自身も当然避けるものだと思って全力で振り下ろした手のひらが、ジンジンと痛む。
「来年」
宮田は打たれた頬をひとさすりしてから、奈々の目をまっすぐ見て、
「タイトルマッチが内定しそうなんだ」
宮田の真剣な顔を、奈々もまた見つめ返す。
「見に来いよ」
「・・・・そりゃ、見に行くけど」
その話をしていたんじゃないんですけど、という恨めしい目で宮田を睨むと、宮田はさらに半歩前に進んで、また奈々を抱き寄せた。
「それまで・・・」
“待って欲しい”の一言がどうしても言えない。
宮田はギリリ、と歯を噛み締めて、それから少し息を吸って、続けた。
「忙しくなるから・・・」
それきり、宮田は黙ってしまった。
そして、周りが少しざわついているのにようやく気づく。
自分たちが人混みの流れをせき止めているせいで、舌打ちしながら通り過ぎる人などもで始めた。
「・・・邪魔になってる。行こうよ」
「・・・わかった」
宮田は体を離して、またくるりと前を向く。
そしてポケットに手を入れながら、肘を後ろの方に突き出して、奈々を誘導する。
奈々は差し出された腕の、ジャンパーの端っこを掴むようにして、腕を回した。
「ばか」
静かに呟いた言葉が宮田に届いたかどうかは、わからなかった。
「な、何それ・・・意味わかんない」
宮田を引き離そうと力を入れたが、たくましい2本の腕が奈々の体をしっかりと抱きしめて離そうとしない。
「オレの気持ちは最初から変わらない」
ぐっと力を入れて、再度抱き寄せる。
「・・・今はまだ、お前の気持ちに応えられない」
いつか聞いたようなセリフがまた飛び出す。
自分の気持ちには応えられないのに、期待してろ?
人のことをこんな風に抱き寄せながら、お断りのセリフ?
宮田の言うことなすこと、全てが理解できない。
「意味わかんないって言ってるじゃん!!」
大声に一瞬ひるんだ宮田の腕を振りほどき、奈々は右手を振り下ろす。
パシン、と冷たい音がして、手のひらは宮田の頬を捉えた。
通行人が通り過ぎ様にまた「おぉ」と小さい声で冷やかしを入れる。
「ッテェ」
「・・・な、なんで避けないのよ!?」
ボクサーともあろう人物が、ど素人の、それも女性のビンタを避けられないはずがない。
奈々自身も当然避けるものだと思って全力で振り下ろした手のひらが、ジンジンと痛む。
「来年」
宮田は打たれた頬をひとさすりしてから、奈々の目をまっすぐ見て、
「タイトルマッチが内定しそうなんだ」
宮田の真剣な顔を、奈々もまた見つめ返す。
「見に来いよ」
「・・・・そりゃ、見に行くけど」
その話をしていたんじゃないんですけど、という恨めしい目で宮田を睨むと、宮田はさらに半歩前に進んで、また奈々を抱き寄せた。
「それまで・・・」
“待って欲しい”の一言がどうしても言えない。
宮田はギリリ、と歯を噛み締めて、それから少し息を吸って、続けた。
「忙しくなるから・・・」
それきり、宮田は黙ってしまった。
そして、周りが少しざわついているのにようやく気づく。
自分たちが人混みの流れをせき止めているせいで、舌打ちしながら通り過ぎる人などもで始めた。
「・・・邪魔になってる。行こうよ」
「・・・わかった」
宮田は体を離して、またくるりと前を向く。
そしてポケットに手を入れながら、肘を後ろの方に突き出して、奈々を誘導する。
奈々は差し出された腕の、ジャンパーの端っこを掴むようにして、腕を回した。
「ばか」
静かに呟いた言葉が宮田に届いたかどうかは、わからなかった。