第9章:遠回り
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宮田と駅で待ち合わせして向かった先は、イルミネーションが綺麗だと評判の遊歩道。
ただの電飾にも関わらず、クリスマス直前ともあって、なかなかの人でごった返していた。
「混んでるね、結構」
色とりどりのイルミネーションを、宮田と一緒に並んで見る。
手すら繋いでないものの、シチュエーションだけなら、立派な大人のデートだ。
ぼうっとイルミネーションを眺めていたら、知らずに歩みを進めていた宮田と離れてしまったらしい。
「あ、あれ宮田?」
キョロキョロと前方を見渡して見ると、宮田も隣に奈々がいないことに気が付いたらしい。
少し小走りで後ろに戻ってきて、
「掴んどけよ」
と言って、腕を差し出した。
そっと軽く手を回して、宮田のジャンパーの端っこを掴むようにして腕を組む。
腕を直接触っているわけじゃないのに、ぐっと縮まった距離と、“腕を組んでいる”シチュエーションに、心拍数は上がる一方だ。
「お前に、聞いておきたいことがあったんだけど」
宮田がボソリと、呟くように聞くと、奈々は首を傾げながら「何?」と答える。
「いつから・・・勘違いしてたんだ」
「え?」
「アレが彼女だって、いつから」
「あー・・・あれは・・高3の、宮田が入院した時かな」
見舞いに行った際、病院で遭遇して、そのまま宣告された旨を伝えたところ、宮田は呆れたように大きなため息をついて、
「信じられねぇ」
「だって・・・宮田は私が見舞いに来たこと知ってたでしょ?てっきり、彼女さんが伝えたんだと思ってた」
「親父から聞いたんだよ」
「でも私、名乗らなかったよ?」
「名札でも見たんじゃねえの」
宮田に冷たく言われて、奈々は「あ」と間抜けな声を出した。
「そ、それにあの子、4月の試合も見に来てたし」
「・・・ひょっとして、お前も来てくれてたのか?」
「う・・うん」
宮田が驚いた様子で聞くと、奈々は気恥ずかしそうに頷いた。
「見に来てたんなら言えよ」
「い、言う機会なかったし」
「控え室に来ればいいだろ」
宮田があんまりにもサラリと言うので、奈々は少し頭にきて、語気を強めて反論する。
「バカじゃないの?振られた女がどのツラ下げて会いに行くのよ」
そっぽを向いた奈々に、宮田が反論できることは何もなかった。
「仕方ねえだろ・・・あの時は・・・」
ボソリと呟いたその声は、喧騒に紛れて奈々には届かなかったらしい。
その言葉のすぐ後に、奈々はやや大きい声で、
「あ!それにさ」
「なんだよ」
せっかく呟いた言葉がかき消されたことに少々苛立ちを見せながら、宮田が答える。
「修学旅行で抱き合ってたじゃない」
「!!あれは・・・」
「それに学校で・・キ・・キスとかしてたじゃん・・・」
新幹線の一件は、ガタンと大きく揺れたところに抱きつかれただけの単純な出来事であったが、後者は全く身に覚えがない。
宮田は意味がわからず、目を大きく見開いて聞いた。
「・・・なんだよそれ、説明しろよ」
偉そうな態度が面白くなく、奈々は膨れた顔で答えた。
「社準でキスしてたって・・・」
「・・・はぁ?」
「目撃者がいて、噂になってたんだから」
全く身に覚えのない話が、自分の知らないところで勝手に噂になって飛び回っていたらしい。
自分に対するゴシップにまるで興味がない宮田とはいえ、これには流石に驚いて、ただ固まるばかりだった。
「その事言ったら、宮田が“だからどうした”とか」
「・・・?」
宮田はかなり前の記憶を必死に掘り起こそうと、頭を巡らせた。
____
「何怒ってんだよ」
「うるさい、このスケベ」
「っ…お前なぁ」
「コソコソ隠れてキスしたって、誰かに見られてんだからね!」
____
「あれは・・・・水族館での話じゃなかったのか?」
「は?水族館?」
今度は奈々が素っ頓狂な声をあげる。
その瞬間、全てを悟った宮田は力なくうなだれた。
「・・・もういい、わかった」
「え、私よく分かんないんだけど!」
宮田は、頭を抱えた手を再び下げて、ポケットにしまいこむ。
「全く・・・遠回りしたもんだぜ」
横から見た宮田の耳たぶが少し、赤くなっているのを奈々はまだ知らなかった。
宮田と駅で待ち合わせして向かった先は、イルミネーションが綺麗だと評判の遊歩道。
ただの電飾にも関わらず、クリスマス直前ともあって、なかなかの人でごった返していた。
「混んでるね、結構」
色とりどりのイルミネーションを、宮田と一緒に並んで見る。
手すら繋いでないものの、シチュエーションだけなら、立派な大人のデートだ。
ぼうっとイルミネーションを眺めていたら、知らずに歩みを進めていた宮田と離れてしまったらしい。
「あ、あれ宮田?」
キョロキョロと前方を見渡して見ると、宮田も隣に奈々がいないことに気が付いたらしい。
少し小走りで後ろに戻ってきて、
「掴んどけよ」
と言って、腕を差し出した。
そっと軽く手を回して、宮田のジャンパーの端っこを掴むようにして腕を組む。
腕を直接触っているわけじゃないのに、ぐっと縮まった距離と、“腕を組んでいる”シチュエーションに、心拍数は上がる一方だ。
「お前に、聞いておきたいことがあったんだけど」
宮田がボソリと、呟くように聞くと、奈々は首を傾げながら「何?」と答える。
「いつから・・・勘違いしてたんだ」
「え?」
「アレが彼女だって、いつから」
「あー・・・あれは・・高3の、宮田が入院した時かな」
見舞いに行った際、病院で遭遇して、そのまま宣告された旨を伝えたところ、宮田は呆れたように大きなため息をついて、
「信じられねぇ」
「だって・・・宮田は私が見舞いに来たこと知ってたでしょ?てっきり、彼女さんが伝えたんだと思ってた」
「親父から聞いたんだよ」
「でも私、名乗らなかったよ?」
「名札でも見たんじゃねえの」
宮田に冷たく言われて、奈々は「あ」と間抜けな声を出した。
「そ、それにあの子、4月の試合も見に来てたし」
「・・・ひょっとして、お前も来てくれてたのか?」
「う・・うん」
宮田が驚いた様子で聞くと、奈々は気恥ずかしそうに頷いた。
「見に来てたんなら言えよ」
「い、言う機会なかったし」
「控え室に来ればいいだろ」
宮田があんまりにもサラリと言うので、奈々は少し頭にきて、語気を強めて反論する。
「バカじゃないの?振られた女がどのツラ下げて会いに行くのよ」
そっぽを向いた奈々に、宮田が反論できることは何もなかった。
「仕方ねえだろ・・・あの時は・・・」
ボソリと呟いたその声は、喧騒に紛れて奈々には届かなかったらしい。
その言葉のすぐ後に、奈々はやや大きい声で、
「あ!それにさ」
「なんだよ」
せっかく呟いた言葉がかき消されたことに少々苛立ちを見せながら、宮田が答える。
「修学旅行で抱き合ってたじゃない」
「!!あれは・・・」
「それに学校で・・キ・・キスとかしてたじゃん・・・」
新幹線の一件は、ガタンと大きく揺れたところに抱きつかれただけの単純な出来事であったが、後者は全く身に覚えがない。
宮田は意味がわからず、目を大きく見開いて聞いた。
「・・・なんだよそれ、説明しろよ」
偉そうな態度が面白くなく、奈々は膨れた顔で答えた。
「社準でキスしてたって・・・」
「・・・はぁ?」
「目撃者がいて、噂になってたんだから」
全く身に覚えのない話が、自分の知らないところで勝手に噂になって飛び回っていたらしい。
自分に対するゴシップにまるで興味がない宮田とはいえ、これには流石に驚いて、ただ固まるばかりだった。
「その事言ったら、宮田が“だからどうした”とか」
「・・・?」
宮田はかなり前の記憶を必死に掘り起こそうと、頭を巡らせた。
____
「何怒ってんだよ」
「うるさい、このスケベ」
「っ…お前なぁ」
「コソコソ隠れてキスしたって、誰かに見られてんだからね!」
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「あれは・・・・水族館での話じゃなかったのか?」
「は?水族館?」
今度は奈々が素っ頓狂な声をあげる。
その瞬間、全てを悟った宮田は力なくうなだれた。
「・・・もういい、わかった」
「え、私よく分かんないんだけど!」
宮田は、頭を抱えた手を再び下げて、ポケットにしまいこむ。
「全く・・・遠回りしたもんだぜ」
横から見た宮田の耳たぶが少し、赤くなっているのを奈々はまだ知らなかった。