第9章:遠回り
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①日曜日空いているか
②空いていたら会えないか
③どこで会うか
「うーん」
奈々は机の上でメモ帳に①〜③の文言を記入した後、電話の子機に手を伸ばし、ピ・ピ・ピと番号を打ち始めた。
これから電話をかける相手を前に、パニックにならず要件を言えるように、言いたいことを全部書き出して見たらしい。
プルルルル・・・
3回目の呼び出し音の後、「はい」と無愛想な男の声が電話に出た。
「あ、あの。高杉・・・ですが」
「ああ・・・どうした?」
宮田は電話の時、すぐに要件を聞きたがる。
男の人と電話をした経験は、父親と弟以外は宮田くらいしかいないが、みんなそうなのだろうか。
これがミズキだったら、本題の前に世間話を20分ほど挟んでくるのだが。
「え・・・あの・・その・・・」
頭が真っ白になって来たので、パニックになる前に手元のメモに目をやる。
すぅと一呼吸を吸い込んでから、はっきりとした口調で言った。
「日曜日、空いてますか」
「・・・空いてるけど。なんで敬語なんだよ」
「空いていたら会えますか」
「・・・会えるけど。だからなんで敬語なんだよ」
「どこで会いますか」
「お前・・・大丈夫か?」
宮田が訝しげな声で様子を伺っていることすら分からぬほど、冷静さを欠いていた奈々。
全部言い切った安堵が先に来て、それからちょっと遅れて、相手の返事が頭に入って来た。
「え?空いてるの?」
「・・・」
宮田は呆れてものも言えないらしい。
ふう、と大きなため息をついたのが聞こえてきた。
それから、やれやれと言った感じで呟く。
「何がしてえんだ」
懐かしいセリフ。
高2の夏も、高3の夏も、こんな風に言われたっけ。
そして遊園地も水族館も「小学生かよ」って笑われたな。
「イ・・・イルミネーション・・・・見たい」
絞り出すような声で奈々がボソリと呟くと、宮田は少し笑って
「付き合うよ」
と言った。
初めて「小学生かよ」とは言われなかった。