第9章:遠回り
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どこからどこまでが嘘で、本当なのか。
頭が混乱して、コンピューターがショートしたみたいに、煙が出て来そうだ。
「はいはい、ちょっといいですか」
手を挙げながら二人の間にぐいっと割り込んで来たのは、先ほどからカウンターで様子を見ていたミズキだった。
「お久しぶり、宮田くん」
宮田の中では、奈々と仲のいい女子として認識はされているようだった。
突然現れたにも関わらず、驚くそぶりも見せないでミズキを見ている。
「奈々に代わって、話を整理しよう。宮田くんは、彼女はいないのね?」
「・・・そうだけど」
「じゃあ、あの子は何だったの?」
「・・・・つきまとわれていた」
「え!?まじ?」
宮田は多くは語らなかったが、何度もジムに来て騒いで問題になったこと、今は田舎の方へ行ったことなどがポツリポツリ明かされた。
「じゃあ、なんで奈々のこと振ったのよ?」
単刀直入にズバズバと攻めて行く。
ただでさえ彼女の存在が嘘だとわかって混乱している最中、これ以上の混乱は心のキャパシティを超えてしまうと奈々は少々パニックに陥っていた。
「宮田、奈々のこと好きなんでしょ?」
腕組みをしながら仁王立ちして、座っている二人を見下ろす感じのミズキ。
セリフもオーラも威圧感がたっぷりだ。
ミズキの声が、他に誰もいない、日曜なのに全く繁盛してない喫茶店に響く。
思わぬコトの成り行きに、喫茶店のマスターまでもが、心臓を高鳴らせていた。
宮田はしばし黙って、それからすっくと立ち上がって、ミズキより上から目線で答えた。
「お前に関係ないだろ」
そして背を向けて、店を出て行こうとした時だった。
「関係あるわよ!あたしの奈々を泣かせるなんて許せない!!」
「ちょ、ちょっとミズキ!!」
奈々が止める暇もなく、飛び上がって宮田に殴りかかったミズキだが、相手はもちろんプロボクサー。
さっと身を躱されて、伸ばした拳どころか手首を掴まれた。
「は、離しなさいよ!」
もう片方の拳も突き出してみたが、こちらもあえなく捉えられる。
ミズキに格闘技の経験などないし、ましてや男女では力の差は歴然。
ところが、宮田が何やらボソリと呟いた瞬間に、ミズキは急に力を抜いて、おとなしくなった。
自由になった両手は、力なくうなだれて、だらりと下を向いている。
にも関わらず、ミズキの目は、まっすぐに宮田を見ているままだ。
「じゃあな」
またガランガラン、と派手な音を立てて、ドアが閉まる。
呆然と立ち尽くすミズキに奈々が駆け寄って、
「ちょっと、大丈夫?」
と聞くと、ミズキはフルフルと両肩を震わせ始めた。
「ミズキ?」
「ふ・・ふふふ・・・」
「ちょっと、どうしたの」
「さすが女好き宮田ね・・・許してやることにするわ」
「???」
ミズキは振り上げた拳を二つとも阻止されてしまったにも関わらず、すっきりとした表情を浮かべていた。
奈々が不思議そうにそれを眺めていると、にっこり笑って、いつものカラッとした調子で言った。
「まぁー、彼女がいなくてよかったじゃん?」
「・・・うん・・そうだけど・・・」
「アンタにもチャンスがあるかもね?」
「・・・うーん・・・だといいけど・・・」
「ま、湿っぽい話は終わり終わり!あたしとたっくんの話聞いてよ!」
それからは愚痴なのか惚気なのかわからない話が延々と続いた。
ミズキが今までずっと親身になって(むしろ自分以上にアグレッシブに)対応してくれたこともあり、奈々は黙ってウンウンと話を聞いていた。
その一方で、ミズキはさっき宮田の放った一言を伝えられないもどかしさを、ただただマシンガントークに乗せて発散していた。
『あたしの奈々を泣かせるなんて許せない!!』
『・・・もう泣かさねえよ』
「ふ・・・ふふふ・・・」
思い出してはニヤけてしまう。
なるほど、これがいわゆる、世間の女子がコロリと落ちる要因の一つか、と妙に納得してしまうミズキであった。
「ちょっとミズキ・・・惚気にもほどがあるって。その笑い方何?」
「むふふ・・・だってなんか、嬉しくてさ」
「ちぇ、いいなぁ」
ふと喫茶店の窓の向こうを見やる。
もうすぐクリスマスで、街はまた緑や赤の装飾でいっぱいになっている。
ミズキのクリスマスの計画を聞きながら、奈々はぼんやりと、宮田を誘ってみようかなと考えたりしていた。
頭が混乱して、コンピューターがショートしたみたいに、煙が出て来そうだ。
「はいはい、ちょっといいですか」
手を挙げながら二人の間にぐいっと割り込んで来たのは、先ほどからカウンターで様子を見ていたミズキだった。
「お久しぶり、宮田くん」
宮田の中では、奈々と仲のいい女子として認識はされているようだった。
突然現れたにも関わらず、驚くそぶりも見せないでミズキを見ている。
「奈々に代わって、話を整理しよう。宮田くんは、彼女はいないのね?」
「・・・そうだけど」
「じゃあ、あの子は何だったの?」
「・・・・つきまとわれていた」
「え!?まじ?」
宮田は多くは語らなかったが、何度もジムに来て騒いで問題になったこと、今は田舎の方へ行ったことなどがポツリポツリ明かされた。
「じゃあ、なんで奈々のこと振ったのよ?」
単刀直入にズバズバと攻めて行く。
ただでさえ彼女の存在が嘘だとわかって混乱している最中、これ以上の混乱は心のキャパシティを超えてしまうと奈々は少々パニックに陥っていた。
「宮田、奈々のこと好きなんでしょ?」
腕組みをしながら仁王立ちして、座っている二人を見下ろす感じのミズキ。
セリフもオーラも威圧感がたっぷりだ。
ミズキの声が、他に誰もいない、日曜なのに全く繁盛してない喫茶店に響く。
思わぬコトの成り行きに、喫茶店のマスターまでもが、心臓を高鳴らせていた。
宮田はしばし黙って、それからすっくと立ち上がって、ミズキより上から目線で答えた。
「お前に関係ないだろ」
そして背を向けて、店を出て行こうとした時だった。
「関係あるわよ!あたしの奈々を泣かせるなんて許せない!!」
「ちょ、ちょっとミズキ!!」
奈々が止める暇もなく、飛び上がって宮田に殴りかかったミズキだが、相手はもちろんプロボクサー。
さっと身を躱されて、伸ばした拳どころか手首を掴まれた。
「は、離しなさいよ!」
もう片方の拳も突き出してみたが、こちらもあえなく捉えられる。
ミズキに格闘技の経験などないし、ましてや男女では力の差は歴然。
ところが、宮田が何やらボソリと呟いた瞬間に、ミズキは急に力を抜いて、おとなしくなった。
自由になった両手は、力なくうなだれて、だらりと下を向いている。
にも関わらず、ミズキの目は、まっすぐに宮田を見ているままだ。
「じゃあな」
またガランガラン、と派手な音を立てて、ドアが閉まる。
呆然と立ち尽くすミズキに奈々が駆け寄って、
「ちょっと、大丈夫?」
と聞くと、ミズキはフルフルと両肩を震わせ始めた。
「ミズキ?」
「ふ・・ふふふ・・・」
「ちょっと、どうしたの」
「さすが女好き宮田ね・・・許してやることにするわ」
「???」
ミズキは振り上げた拳を二つとも阻止されてしまったにも関わらず、すっきりとした表情を浮かべていた。
奈々が不思議そうにそれを眺めていると、にっこり笑って、いつものカラッとした調子で言った。
「まぁー、彼女がいなくてよかったじゃん?」
「・・・うん・・そうだけど・・・」
「アンタにもチャンスがあるかもね?」
「・・・うーん・・・だといいけど・・・」
「ま、湿っぽい話は終わり終わり!あたしとたっくんの話聞いてよ!」
それからは愚痴なのか惚気なのかわからない話が延々と続いた。
ミズキが今までずっと親身になって(むしろ自分以上にアグレッシブに)対応してくれたこともあり、奈々は黙ってウンウンと話を聞いていた。
その一方で、ミズキはさっき宮田の放った一言を伝えられないもどかしさを、ただただマシンガントークに乗せて発散していた。
『あたしの奈々を泣かせるなんて許せない!!』
『・・・もう泣かさねえよ』
「ふ・・・ふふふ・・・」
思い出してはニヤけてしまう。
なるほど、これがいわゆる、世間の女子がコロリと落ちる要因の一つか、と妙に納得してしまうミズキであった。
「ちょっとミズキ・・・惚気にもほどがあるって。その笑い方何?」
「むふふ・・・だってなんか、嬉しくてさ」
「ちぇ、いいなぁ」
ふと喫茶店の窓の向こうを見やる。
もうすぐクリスマスで、街はまた緑や赤の装飾でいっぱいになっている。
ミズキのクリスマスの計画を聞きながら、奈々はぼんやりと、宮田を誘ってみようかなと考えたりしていた。