第9章:遠回り
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「あ・・宮田」
奈々を見つけると、宮田はまっすぐにそこへ来て腰掛けた。
ミズキは店内カウンターの中へ隠れている。
個人経営の喫茶店で、高校時代からの馴染みの店だからこそできる技だ。
「電話遅れてごめん・・あの・・」
何を話せばいいのか、しどろもどろになりながら切り出した奈々の言葉にまた被せるようにして、宮田が問い詰めるような口調で聞いていた。
「あいつ、誰だ」
「え?」
「車を運転していた奴」
宮田はどうやら、メガネ君のことを聞いているようだった。
電話が遅れたことを怒られるのかと思っていた奈々は、少し拍子抜けしながら
「あ、サークルの友達・・・」
「友達?」
「うん」
「友達がコンドームなんか買うのか」
「・・・・はぁ!?」
宮田から似つかわしくない単語が飛び出して、奈々は思わず品のない大声をあげてしまった。
「コ・・・コ・・え!?えぇ!?何それ知らない!!わ、私何もしてないからね!!?」
顔を真っ赤にしてあたふたと否定する奈々の前で、宮田は眉間にシワが寄るほどの形相で、再び問い詰める。
「恋人じゃないのか」
「・・・ち、違う・・・正確には・・・ふ、振りました」
“振りました”の一言で、宮田は額を押さえてうなだれたように下を向いた。
「あ、あのー・・・」
「なんだよ」
「電話するって・・・このこと聞きたかったの?」
「別に」
宮田は相変わらず、下を向いたままで、前髪で表情がよく見えない。
いきなり現れて、変な質問をされて、自分のことは相変わらず何も言わなくて、強気で一方的な態度に、奈々もなんだか少しイラついてきて、反撃する。
「宮田こそ」
「なんだよ」
「彼女に悪いと思わないの?」
「は?」
「私とこんな風に会ったり電話番号教えたりして」
宮田はハッと顔を上げて、まじまじと奈々の顔を見つめ始めた。
そして、奈々が冗談でもなんでもなく、真面目に言っているのだと察して、ますます訳がわからなくなった。
「彼女?」
「そうよ。高校の時のさ・・・たしか中学も同じだったんだよね?」
そう言われて、もう忘れかけていた“例の彼女”を思い出した。
まさかアレが、コイツにまで、嘘をついていたとは。
「お前・・・信じたのかよ」
「え?」
「アレの話、信じたのかよ」
「・・・・どういうこと?」
宮田が大きくため息をついて、がっくりと肩を落としたのがわかった。
そしてしばし、先ほどと同じように、額に手を当てて俯き加減に考え込む。
「まさか・・・嘘なの?」
「お前、一度でもオレに直接聞いたことあったか?」
何が何だかわからなくなってきた。