第8章:新しい恋
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いくら待っても鳴らない電話。
今頃、お楽しみってわけか。
この結果は、当然だろ?
そう仕向けたのは、自分だろ?
まさか、こんなことにならないとでも、思っていたのか?
随分と自惚れていたな、宮田一郎。
後から後から、黒い感情が溢れては消えて行く。
ベッドに横になりながら、寝付ける感じがしない。
初恋は実らない、と俗にいう。
「本当だな」
と呟いて、自嘲気味に笑ってみる。
「宮田くんって、何にも知らないよね」
「お前ボクシングばっかでつまんねぇ」
子供の頃、テレビも見ない、漫画も読まない、ゲームもしない宮田に、同級生は口々にこんな言葉を投げかけてきた。
当の本人はボクシングが何より楽しくて、他の子供が好むようなものを欲しいとも思ったことなど一度もない。
誕生日などに父親が流行りのオモチャを買ってくれようとしたこともあったが、それよりも新しいウェアやトレーニング器具、本などを欲しがったくらいだ。
それを周りは、“おかしい”と、バカにしたような口調で笑い、面白がるばかり。
幼心に、ただただ疎ましいと思っていた。
そしてその頃から宮田は無意識に、”集団で人を嗤うつまらない奴ら”と、周囲のことを見下げ始めていたらしい。
孤立していたとまでは言わないが、独特の存在として君臨することを是としたのは、ほかならぬこのプライドのためだった。
「宮田ってみんなことバカにしてると思って」
高杉にそう言われた時、宮田は心の中を見抜かれたような気がして、ハッと目の覚める思いがした。
と同時に、そんな自分を笑わずに「こっち側に引きずり込んでやりたい」と言ったセリフに、またも面食らった。
コイツは人を笑わないで、まっすぐ向き合おうとしてくるのか、と。
高杉の最初の印象は最悪だった。
よくいる優等生で、変な義務感から仕事を押し付けてくるような、うっとおしい奴。
自分とは全く無関係の場所にいる奴だと思っていた。
でもいつの間にか、ペースに乗せられて、知らず知らずのうちに、その場所に入れられて。
見てみた景色は、案外悪くなかった。
「そっちに入ったつもりはないけど」
精一杯の強がりを、ケラケラと笑って流してくれた。
そんなところが少しずつ、心に染みていったらしかった。
そして学祭が終わって、教室で花火を見ている時に、ふと流した涙を見て・・・
自分の中で、何かが芽生えたのがわかった。
こいつはどんな人間なんだろう。
興味がわいて、気になって、気がつくと目で追うようになっていた。
これが俗に言う「恋」なんだと、案外すぐにわかった。
そして戸惑った。
誰にも渡したくない。
そう思いながら、自分には、
手に入れたものを大事にする余裕がなかった。
相手は未来ある学生で、
オレは試合のたびに命を賭けるボクサーだ。
今の自分に・・・何ができる?何が言える?
今のままじゃ、アイツを抱きしめる資格なんて、ない。
アイツの気持ちはとうに知っていた。
だから、安心して突き放してみせた。
何をしても、離れないと思い込んで。
アイツが陰でどれだけ泣いていたか、知りもせずに。
「さようなら」もない別れ際を思い出す。
あの愛おしかった笑顔が、
もう2度とこちらに向かないなんて、
もしあの時、それを知っていたのなら・・・
オレは違った選択肢を選んだのだろうか。
いくら待っても鳴らない電話。
今頃、お楽しみってわけか。
この結果は、当然だろ?
そう仕向けたのは、自分だろ?
まさか、こんなことにならないとでも、思っていたのか?
随分と自惚れていたな、宮田一郎。
後から後から、黒い感情が溢れては消えて行く。
ベッドに横になりながら、寝付ける感じがしない。
初恋は実らない、と俗にいう。
「本当だな」
と呟いて、自嘲気味に笑ってみる。
「宮田くんって、何にも知らないよね」
「お前ボクシングばっかでつまんねぇ」
子供の頃、テレビも見ない、漫画も読まない、ゲームもしない宮田に、同級生は口々にこんな言葉を投げかけてきた。
当の本人はボクシングが何より楽しくて、他の子供が好むようなものを欲しいとも思ったことなど一度もない。
誕生日などに父親が流行りのオモチャを買ってくれようとしたこともあったが、それよりも新しいウェアやトレーニング器具、本などを欲しがったくらいだ。
それを周りは、“おかしい”と、バカにしたような口調で笑い、面白がるばかり。
幼心に、ただただ疎ましいと思っていた。
そしてその頃から宮田は無意識に、”集団で人を嗤うつまらない奴ら”と、周囲のことを見下げ始めていたらしい。
孤立していたとまでは言わないが、独特の存在として君臨することを是としたのは、ほかならぬこのプライドのためだった。
「宮田ってみんなことバカにしてると思って」
高杉にそう言われた時、宮田は心の中を見抜かれたような気がして、ハッと目の覚める思いがした。
と同時に、そんな自分を笑わずに「こっち側に引きずり込んでやりたい」と言ったセリフに、またも面食らった。
コイツは人を笑わないで、まっすぐ向き合おうとしてくるのか、と。
高杉の最初の印象は最悪だった。
よくいる優等生で、変な義務感から仕事を押し付けてくるような、うっとおしい奴。
自分とは全く無関係の場所にいる奴だと思っていた。
でもいつの間にか、ペースに乗せられて、知らず知らずのうちに、その場所に入れられて。
見てみた景色は、案外悪くなかった。
「そっちに入ったつもりはないけど」
精一杯の強がりを、ケラケラと笑って流してくれた。
そんなところが少しずつ、心に染みていったらしかった。
そして学祭が終わって、教室で花火を見ている時に、ふと流した涙を見て・・・
自分の中で、何かが芽生えたのがわかった。
こいつはどんな人間なんだろう。
興味がわいて、気になって、気がつくと目で追うようになっていた。
これが俗に言う「恋」なんだと、案外すぐにわかった。
そして戸惑った。
誰にも渡したくない。
そう思いながら、自分には、
手に入れたものを大事にする余裕がなかった。
相手は未来ある学生で、
オレは試合のたびに命を賭けるボクサーだ。
今の自分に・・・何ができる?何が言える?
今のままじゃ、アイツを抱きしめる資格なんて、ない。
アイツの気持ちはとうに知っていた。
だから、安心して突き放してみせた。
何をしても、離れないと思い込んで。
アイツが陰でどれだけ泣いていたか、知りもせずに。
「さようなら」もない別れ際を思い出す。
あの愛おしかった笑顔が、
もう2度とこちらに向かないなんて、
もしあの時、それを知っていたのなら・・・
オレは違った選択肢を選んだのだろうか。