第8章:新しい恋
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「おまたせ」
「あ、いえ全然」
「いろいろ買い込んじゃってさ」
車に戻ってきたメガネ君は、袋の中から飲み物だけを取り出し、残りを後部座席のシートの上に乗せた。
運転席に乗り込み、買ったばかりのペットボトルを開け、一口飲んで、それからシートベルトをして、エンジンをかけた瞬間だった。
助手席側の窓に、コンコンと2回、ノックする音。
奈々がそちらの方に目を向けると、そこには店から出てきた宮田が立っていた。
「え?な、なに?」
何か忘れ物でもしたかと思い、車の窓を開ける。
ウィーン・・・と間抜けな速度で下がっていく窓が、少しもどかしかった。
「ど、どうしたの、宮田」
宮田は奈々の顔が見えるくらいまで体をかがめて、そして睨む
ようなややこわばった顔で呟いた。
「今夜電話するから、9時までに帰宅しろよ」
「・・・え?」
困惑する奈々のことも気にせず、自分の言いたいことだけ呟いて、そのまま店に戻って行ってしまった。
ふと我に返って、隣のメガネ君を見てみると、彼は何があったか分からないような顔をして、
「大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫です。行きましょう」
その後は、何事もなかったようにドライブをして、食事をして。
時間は夜の8時半になっていた。
「・・・・メガネ君、私そろそろ、帰らないと」
「いつも10時くらいまで大丈夫だったよね?もう少し一緒にいられないかな?」
いつもイエスマンでなんでも言うことを聞いてくれるメガネ君が、珍しくお願いをして来た。
「・・・でも、今日はちょっと・・・」
「あのコンビニの店員から電話があるから?」
今度はやや強めの口調でメガネ君が少し苛立っているように言った。その言葉と態度に、奈々はハッとして、思わず黙り込む。
「僕は・・・今日は君を帰したくない」
メガネ君はそのまま、青信号の道路を走り続けた。
腕時計の針は、間も無く9時を指そうとしていた。