第8章:新しい恋
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私の横で運転している“メガネ君”。
サークルのみんなは彼をこう呼ぶ。
だから私も、そう呼んでいる。
少し前に告白されて、“お友達から”付き合いを始めた。
そして何回か、健全なデートをするようになった。
いい人だ。
穏やかで、気が利いて。
だけど。
「奈々ちゃん」
「は、はい」
「・・・好きな人、いるの?」
いつまでも、はぐらかし、ごまかし。
相手の気持ちをかわし続けているのは、よくない。
「・・・いま・・した」
「した?」
でも、前に進まなきゃ・・
もう、忘れなきゃ・・・
「ずっと好きだった人がいました」
「・・・今も好きなの?」
「はは、もうとっくに振られてます。それに、相手には長いこと付き合っている彼女もいるんです」
「そうなんだ」
静まり返る車内。
メガネ君は、カーステレオのボタンを押してラジオをかけた。
「ごめんね、変なこと聞いたね!話題を変えよう」
日曜日の午後。
メガネ君は車で奈々の家まで迎えにきて、二人はこれからデートに向かうところだった。
「何か飲み物でも買っていく?」
「そうですね・・・じゃ、そこのコンビニに寄りませんか?」
自宅からそう遠くない場所にあるが、初めて立ち寄るコンビニ。
比較的新しい建物で、どうやら最近できたらしい。
奈々は店内に入り、真っ先に飲料水のコーナーへ向かう。
それから小袋に入ったチョコレート系のスナックを手にとって、レジへ向かった。
そして、目の前にいた店員の名札を見て、それから顔を見て、奈々は一瞬時間が止まったかと思うくらいの衝撃を味わった。
「・・・み、宮田」
「・・・よぉ」
ピッと商品のバーコードを読み込みながら、無言で接客をする宮田。
「こ・・・ここで、働いてたんだ?」
「・・・ああ」
商品を全てスキャンして、ボソリと合計金額を言う。
奈々があたふたと財布を開いて、支払いをしようとすると・・・
「奈々ちゃん、僕が払うよ」
メガネ君が後ろから声をかけてきた。
「い、いえ。自分の分くらい自分で出しますから・・・」
宮田の目にメガネ君が映っているのかどうか知らないが、そのやりとりを無視するように、奈々がカウンターに置いた1000円札を拾ってレジを打つ。
「どうも」
飲み物とお菓子の入ったビニール袋を、無言で手前に差し出される。
伏し目がちの目線は、奈々の方に向けられることはなかった。
「私・・・先に車に戻ってますね」
「あ、うん」
「ゆっくり見ててください」
メガネ君にそう告げて、奈々はパタパタと小走りでコンビニを後にする。
その様子を不思議そうに見、そしてカウンター内にいる店員をもう一度よく見てから、メガネ君は買い物を続けた。
メガネ君は飲み物やお菓子のコーナーをぐるりと回りつつ、先ほどの奈々とカウンターに立つ店員の間の奇妙な雰囲気をもう一度、反芻してみた。
何か、妙に苛立つものがあった。
そして日用品のコーナーに差し掛かった時、ふと目に止まった商品を、おもむろにカゴに入れる。
使うわけでもないのに。
「お願いします」
店内を一周してきたメガネ君が戻ってきた。
買い物かごがカウンターに乗せられ、宮田は機械的にバーコードを読み取っていく。飲み物、お菓子、そして・・・
「あ、すいません。それ紙袋に入れてもらえますか」
宮田はカウンター下から紙袋を取り出すと、これまた機械的に、カゴの中に入っていた避妊具を詰めた。
小さな箱は、カサ…と軽めの音を立てる。
ほんの一瞬。
体中の血が逆流してくるような、熱さが宮田の全身を支配した。
無言の会計を済ませ、ビニール袋を相手に差し出す。
とても店員とは思えないほど無礼な対応にも関わらず、メガネ君は何も言わずにそのまま店を後にした。
サークルのみんなは彼をこう呼ぶ。
だから私も、そう呼んでいる。
少し前に告白されて、“お友達から”付き合いを始めた。
そして何回か、健全なデートをするようになった。
いい人だ。
穏やかで、気が利いて。
だけど。
「奈々ちゃん」
「は、はい」
「・・・好きな人、いるの?」
いつまでも、はぐらかし、ごまかし。
相手の気持ちをかわし続けているのは、よくない。
「・・・いま・・した」
「した?」
でも、前に進まなきゃ・・
もう、忘れなきゃ・・・
「ずっと好きだった人がいました」
「・・・今も好きなの?」
「はは、もうとっくに振られてます。それに、相手には長いこと付き合っている彼女もいるんです」
「そうなんだ」
静まり返る車内。
メガネ君は、カーステレオのボタンを押してラジオをかけた。
「ごめんね、変なこと聞いたね!話題を変えよう」
日曜日の午後。
メガネ君は車で奈々の家まで迎えにきて、二人はこれからデートに向かうところだった。
「何か飲み物でも買っていく?」
「そうですね・・・じゃ、そこのコンビニに寄りませんか?」
自宅からそう遠くない場所にあるが、初めて立ち寄るコンビニ。
比較的新しい建物で、どうやら最近できたらしい。
奈々は店内に入り、真っ先に飲料水のコーナーへ向かう。
それから小袋に入ったチョコレート系のスナックを手にとって、レジへ向かった。
そして、目の前にいた店員の名札を見て、それから顔を見て、奈々は一瞬時間が止まったかと思うくらいの衝撃を味わった。
「・・・み、宮田」
「・・・よぉ」
ピッと商品のバーコードを読み込みながら、無言で接客をする宮田。
「こ・・・ここで、働いてたんだ?」
「・・・ああ」
商品を全てスキャンして、ボソリと合計金額を言う。
奈々があたふたと財布を開いて、支払いをしようとすると・・・
「奈々ちゃん、僕が払うよ」
メガネ君が後ろから声をかけてきた。
「い、いえ。自分の分くらい自分で出しますから・・・」
宮田の目にメガネ君が映っているのかどうか知らないが、そのやりとりを無視するように、奈々がカウンターに置いた1000円札を拾ってレジを打つ。
「どうも」
飲み物とお菓子の入ったビニール袋を、無言で手前に差し出される。
伏し目がちの目線は、奈々の方に向けられることはなかった。
「私・・・先に車に戻ってますね」
「あ、うん」
「ゆっくり見ててください」
メガネ君にそう告げて、奈々はパタパタと小走りでコンビニを後にする。
その様子を不思議そうに見、そしてカウンター内にいる店員をもう一度よく見てから、メガネ君は買い物を続けた。
メガネ君は飲み物やお菓子のコーナーをぐるりと回りつつ、先ほどの奈々とカウンターに立つ店員の間の奇妙な雰囲気をもう一度、反芻してみた。
何か、妙に苛立つものがあった。
そして日用品のコーナーに差し掛かった時、ふと目に止まった商品を、おもむろにカゴに入れる。
使うわけでもないのに。
「お願いします」
店内を一周してきたメガネ君が戻ってきた。
買い物かごがカウンターに乗せられ、宮田は機械的にバーコードを読み取っていく。飲み物、お菓子、そして・・・
「あ、すいません。それ紙袋に入れてもらえますか」
宮田はカウンター下から紙袋を取り出すと、これまた機械的に、カゴの中に入っていた避妊具を詰めた。
小さな箱は、カサ…と軽めの音を立てる。
ほんの一瞬。
体中の血が逆流してくるような、熱さが宮田の全身を支配した。
無言の会計を済ませ、ビニール袋を相手に差し出す。
とても店員とは思えないほど無礼な対応にも関わらず、メガネ君は何も言わずにそのまま店を後にした。