第1章:夢追う人
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それから次の日。
1日働いたからもういいだろう、と宮田が帰り支度をしているところに、奈々が腕組みをしながら、やや強い口調で声をかけた。
「宮田くん、今日はペンキを塗ってほしいんだけど?」
「…悪いけど、そういうことやってる暇ないから」
「学校行事ですので、断る権利、ありませんから」
うざったいにもほどがある、と短気な宮田は今にも大声を出して相手を怒鳴りつけたくなった。
向かいに居る女は、自分を怒らせて楽しんでいるようにも見える。
「あのなぁ…」
「じゃ、ジャンケンしようよ」
奈々の唐突な意見に、宮田は耳を疑った。
「はぁ?」
「私が勝ったら、学祭までの残り1週間、みんなと一緒に作業すること。君が勝ったら帰っていいよ」
「…いや、そういう問題じゃ…」
「はい、じゃーんけーん・・・・」
「おいっ」
…宮田はペンキの缶を両手に抱え、階段を上りながら思った。
あの時、パーを出すべきだった…いや、そもそもなぜ勢いでチョキなど出してしまったのか…
一体なんなんだあの女は。
教室に戻ると、奈々は別のグループでメニューの打ち合わせなんかをやっていた。
奈々と同じように一生懸命作業に取り組んでいる者もいる。
もちろん、それとは対照的に、教室には居残っているものの、口ばかり動かして何もしていない者も少なくない。
そして、ペンキの缶を抱えて戻ってきた宮田に、小さな声でつぶやく。
「わ〜マジかよ、高杉、ありえねぇ」
「宮田かわいそうじゃね?っていうかアイツ、宮田のこと好きなんじゃね?」
「私もそう思った〜引くよね〜キャハハ」
机の上に座り込んで、爪の手入れなんかをしながら世間話をする、冷めたクラスメイト。
たかが学校行事に全身全霊で取り組み、自分まで巻き込んでくる、厚かましいクラスメイト。
宮田はどちらも疎ましく感じた。