第8章:新しい恋
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ある日の川原ジム。
「あの・・・すいません」
一人の練習生が、2階でミーティング中だった宮田たちのいる部屋をノックして、なにやら慌てたような顔でドアを開けた。
「なんだね、ミーティング中だぞ」
「それが・・あの、例の」
「また!?」
“例の”と聞いた宮田がピクリと反応したのを、父親は見逃さなかった。
「一郎、お前はここに・・・」
「父さん」
宮田がすっくと立ち上がる。
「やっぱりオレが直接・・・」
「いや、こういうのは本人じゃなくて、周りや警察に任せたほうがいい」
制止するように木田が口を挟む。
ほどなく、宮田父と木田が1階に降りて、“例の”相手をしに行った。宮田はミーティングルームで待機を命じられる。
「また君かね。もう警察を呼びますよ?」
「一郎くんに会わせてください!私、納得できません!」
「一郎ならジムにはいないよ」
「嘘!嘘でしょう!?・・そうよ嘘よ!高杉さんにキスしたのだって嘘なんでしょう!?一郎くん!!」
2階の宮田のいる部屋まで、声はまる聞こえだ。
『高杉さんにキスした』だの個人的な恥ずかしい過去を、皆真偽のほどは知らないとは言え、ここまでおおっぴらに叫ばれるといたたまれないものがある。
宮田はたまらず1階へ降りていき、“例の”と対峙した。
「一郎!」
「一郎くん!降りてきてくれたのね!」
「・・・・父さん、ソイツを連れて上がってきて。話をさせてくれ」
「しかし・・・」
当惑する父を前に木田が、
「今、親御さんの方にも連絡しました。じきに迎えにきてくれるそうです。それまでなら・・」
「う、うむ」
そして、“例の”と宮田、宮田父、木田、川原会長というメンバーで2階の応接室へ。
「ちょっと二人で話をさせてくれ」
「大丈夫なのか、一郎」
「一応、ドアは開けておいて」
二人を残して、他の3人は応接室を出る。
宮田は今まで本当にどうでもよく、興味すらなかった人物と対峙せざるを得なくなった事態に、そしてそれを引き起こした自分と相手に、心底ウンザリしていたが・・・
「一郎くん、やっと二人きりになれたね」
そう言いながら嬉しそうに笑う相手に、強烈な寒気を覚えた。