第6章:失恋
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風に少し雪の混じる、肌寒い日。
公立大学入試の合格発表を待たずに、高校の卒業式が行われた。
胸に花をつけた同級生らが、式典までのHRの最中に、今朝配られた卒業アルバムを眺めたり、記念写真をとったりしながら、高校生活最後の日を過ごしている。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
「ん、行ってらっしゃい」
奈々がミズキたちに告げて廊下に出ると、廊下も写真を取り合う生徒たちでひしめき合っていた。
その中をすり抜けるようにしてトイレへ。
ちょうど入り口のところで、これまた数ヶ月ぶりに会う人物に遭遇した。
「奈々さん、久しぶりね」
宮田の彼女だ。
「どうも」
「あれから一郎くんとは距離を取ってくれてるみたいで、ありがとうね」
「・・・いいえ、じゃあ」
わざわざ下の名前で呼んでみせる、妙な上から目線。
彼女という身分と、ただの同級生という身分の差が、この態度を生むのだろうか。
「一郎くん、あと数日で海外に行っちゃうから、あたし、寂しくて」
「・・・海外?」
「あら、知らなかったの?」
海外なんて、全く聞いていない。
一体何をしに?って、ボクシング?
明らかに顔色を変えた奈々を見て、宮田の彼女は勝ち誇ったように微笑んで続けた。
「まぁ、あなたにいう必要なんて無いものね」
そうして彼女は、宮田のいる教室の方へ歩いて行った。
教室のドアの中に入って行った背中をずっと眺めていたが、追いかけてその中を覗く勇気はなかった。
くるりと踵を返し、逆方向の自分のクラスの方へ歩いて行く。
頭の中にできた大きな疑問符を、顔に出さないようにして、大きく深呼吸をしながらクラスの扉を開けた。
「あ、奈々!写真とろー!?」
「うん!撮ろう撮ろう!」
無邪気に話しかけてくるクラスメイトに、笑顔で答える。
実際に、何も知らないクラスメイトたちの明るさは、今しがた大打撃を受けた奈々の心の傷の痛みを、紛らわせてくれる。
人一倍声を上げて笑って、体全体に麻酔を打っている。
風に少し雪の混じる、肌寒い日。
公立大学入試の合格発表を待たずに、高校の卒業式が行われた。
胸に花をつけた同級生らが、式典までのHRの最中に、今朝配られた卒業アルバムを眺めたり、記念写真をとったりしながら、高校生活最後の日を過ごしている。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
「ん、行ってらっしゃい」
奈々がミズキたちに告げて廊下に出ると、廊下も写真を取り合う生徒たちでひしめき合っていた。
その中をすり抜けるようにしてトイレへ。
ちょうど入り口のところで、これまた数ヶ月ぶりに会う人物に遭遇した。
「奈々さん、久しぶりね」
宮田の彼女だ。
「どうも」
「あれから一郎くんとは距離を取ってくれてるみたいで、ありがとうね」
「・・・いいえ、じゃあ」
わざわざ下の名前で呼んでみせる、妙な上から目線。
彼女という身分と、ただの同級生という身分の差が、この態度を生むのだろうか。
「一郎くん、あと数日で海外に行っちゃうから、あたし、寂しくて」
「・・・海外?」
「あら、知らなかったの?」
海外なんて、全く聞いていない。
一体何をしに?って、ボクシング?
明らかに顔色を変えた奈々を見て、宮田の彼女は勝ち誇ったように微笑んで続けた。
「まぁ、あなたにいう必要なんて無いものね」
そうして彼女は、宮田のいる教室の方へ歩いて行った。
教室のドアの中に入って行った背中をずっと眺めていたが、追いかけてその中を覗く勇気はなかった。
くるりと踵を返し、逆方向の自分のクラスの方へ歩いて行く。
頭の中にできた大きな疑問符を、顔に出さないようにして、大きく深呼吸をしながらクラスの扉を開けた。
「あ、奈々!写真とろー!?」
「うん!撮ろう撮ろう!」
無邪気に話しかけてくるクラスメイトに、笑顔で答える。
実際に、何も知らないクラスメイトたちの明るさは、今しがた大打撃を受けた奈々の心の傷の痛みを、紛らわせてくれる。
人一倍声を上げて笑って、体全体に麻酔を打っている。