第6章:失恋
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スーパーから帰ってきて、嫌なモヤモヤが頭から離れなくて、ベッドに突っ伏していたら、10分もしないうちに玄関のチャイムが鳴った。
「奈々、玄関にお友達が来てるわよ?」
階段下から、母親の呼ぶ声がした。
「・・・誰?」
のそのそと起き上がり、ドアを開けて少し声を張り上げて聞いてみると、
「宮田くんって子。上がってもらう?」
名前を聞いて思わず部屋を飛び出した。
宮田ってあの宮田?
さっき会ったばかりの宮田?
家まで追いかけてきたの?
予想外の展開に、頭は完全に混乱している。
階段を降りようか、それとも降りまいか、悩んで上下に行ったり来たりするばかりだ。
「え、ちょっと、み、宮田ぁ?な、なんで・・・」
「なんかね落し物を届けにきてくれたって!宮田くん、どうぞ上がって?」
「いえ。コレ・・・渡しておいてください」
宮田は母親にそう告げると、お守りを手渡して一礼し、家の外へ出てしまった。
「え・・もう、ちょっと待ってよ!」
慌てて靴を履き、宮田を追いかける。
宮田はまだ、数メートル先を歩いているところだった。
「宮田、待ってってば!」
走って追いかけグイッとコートの袖を掴むと、宮田は足を止めたが、振り返りもしない。
「なんで、わざわざ追いかけてまで・・・」
戸惑いを隠せない様子の奈々に対して、宮田はくるりと振り返って言った。
その様子は、明らかに怒っているようだった。
「“受け取れない”って、何だよ」
「え?」
「“受け取らない”のか?それとも“受け取れない”のか?」
「・・・」
宮田のまっすぐ見つめる目が痛い。
と同時に、一体どんなつもりでお守りを渡してくるのか、宮田の気持ちが全くわからない。
私がどんな気持ちでいるかも知らないくせに・・・と思うと、自然と奈々も宮田を睨み返していた。
「何怒ってんだよ」
「うるさい、このスケベ」
「っ…お前なぁ」
「コソコソ隠れてキスしたって、誰かに見られてんだからね!」
宮田を前にして、思い出したくないあの子の顔が浮かんできて、悔しい。
奈々が軽蔑めいた口調で言うと、宮田は面倒くさそうな顔をして、ため息をつきながら答えた。
「だからどうした」
宮田の一言にまた凍りつく。
そう、宮田が誰とどこで何をしたって、自分は関係ない。
私は宮田の……何者でもない。
「私、受験で・・・今、一番大切なときなの」
「・・・だから?」
「もう、惑わすようなこと・・・・やめて」
しばしの沈黙が流れる。
宮田がどんな顔をしているか、怖くて顔を上げることができない。
ふぅっと短いため息が聞こえて、宮田がくるりと体の向きを変える足音がした。
「わかったよ」
遠ざかる宮田の影を追うことはできなかった。
何も見ないように、自分もまたくるりと後ろを振り返る。
家のドアを開けて、玄関先で靴を脱ぐ。
部屋に入ると机の上に、先ほど宮田が母親に渡していった、合格守が置いてあった。
そっと手に取り、ぎゅっと握りしめる。
ごめんなさい。
でも、これだけは。
これだけは、持ってていいよね?