第6章:失恋
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「宮田とxxって、付き合ってるらしいよ?」
「え、まじで?」
どこからともなく聞こえてきた言葉は毒矢のように鋭く胸に突き刺さり、体の全ての動きを止めた。
言葉の音を認識して、その意味を把握する段階で、脳がフリーズしてしまったようだ。
「あ、あたし、前に見ちゃったんだぁ」
「え?何を?」
「宮田とxxが社準でキスしてるとこ」
「え?うそっ!まじで?」
ふと、修学旅行の新幹線の中で見た光景がフラッシュバックする。
車両と車両の間みたいな、人気のない場所で抱き合っていた2人。
相手の背中に回していた腕と、その後に振り返って自分を見つけた時のバツの悪そうな目線は、今も目に焼き付いている。
「あの子ずーっと宮田のこと好きだったみたいじゃん」
「両思いになって良かったよね」
指先の感覚がどんどん失われてくる。
カバンに教科書をしまう動作がいつのまにかただカバンの中をまさぐるだけに変わっているのを自覚しているけど、それ以外の行動に移れない。
「あの子、胸デカいからなぁ」
「宮田ムッツリそうだもんねーギャハハ」
半分は、嘘なんじゃないかと思ってた。
でも、本当だったんだ。
宮田は、あの子と付き合ってるのか。
「ボクシングの邪魔したくないから内緒にしたいらしいよ?」
「へー、健気ー。だったら学校でエロいことすんなよって」
「ほんとにねー」
そんなに仲良くない女子グループの会話が聞こえてきて、いちいち胸を刺す。
仲良しの子たちは、この話題に触れない。
自分の宮田に対する気持ちはもう、みんなにバレバレなのかもしれない。
気を遣って全然違う話をしてくれてるのが分かる。
宮田のいる教室は、校舎の一番端で、教室に用がない限りは通ることがない場所。
xxさんとやらも、宮田と同じクラスらしい。
2人でいるところを見なくて済むのは有難い。
帰宅して、自室に戻りカバンを置いて着替えている間…今までの盛大な勘違いがおかしくて、笑いで腹筋が小刻みに揺れ始めた。
「…バカみたい」
あははは、と狂人のように笑っていたら、急にガクリと膝の力が抜けた。
思わずベッドに倒れこむ。
『宮田が選んだのなら仕方ないじゃん』
なんて言ってた昔を思い出す。
きっとあの時、私は、あんなことを言いながら実は、自分が選ばれるんじゃないかと、思ったりしてた。
恥ずかしい。
恥ずかしくて、涙も出ない。
全然…仕方なくなんか、なかった。