第5章:受験生
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[祝・3年F組XX XXさん 書道全国大会 個人賞特選]
夏休み明け。
学校の壁には、夏の成果を発表するいくつもの垂れ幕がぶら下がっていた。
そこに、あんまり大きな文字で見たくない人物の名前を発見した。
図書館で、宮田に告白していた、あの子の名前だ。
そして・・・修学旅行で、宮田と抱き合ってた子。
書道。
自分の知らない世界で全くわからないけど、垂れ幕が下がるくらいだからすごいんだろうなぁと、奈々はぼんやり考える。
こういう風に、何か頑張っている人だったら、宮田のそばにいてもおかしくないのかな。
なんて、白旗を上げる言い訳を探したりしながら。
唇に残った感触が、完全なる降参を許さない。
_________________
9月の東日本新人王決定戦、予選。
宮田は見事KO勝利をおさめた。
「宮田くぅーん!今日もかっこよかったぁ!」
「宮田ぁ!お前は世界を狙えるぞ!次も勝てよ!」
大きな声援を受けて、花道を去っていく宮田の後ろ姿は、かつて横を歩いていた同級生とは思えないほど輝いて、華々しかった。
クラスが分かれ、チケットも学校での金銭受け渡しが問題になったためジム経由でしか買えなくなり、宮田との接点は今はほとんどない。
さらにボクシングでの大活躍と人気ぶり・・・
夏休みに急接近したかと思った宮田が、どんどん遠い人になっていく気がした。
________________
ある日のこと。
宮田は社会科準備室で、壁に地図を立てかけていた。
運悪く今日は日直で、授業で使った資料を準備室に戻す必要があったからだ。
そういえば1年の時、ここで奈々に担任から匿ってもらったことがあったな、とふと思い出す。
なんだか懐かしくて、口角の端が少し上がっていくのが自分でもわかった。
薄暗い部屋の中で、倒れてこないようにバランスを見ながら地図を置いて、ひと段落した時だった。
突然後ろから、誰かに抱きしめられた。
こんなイタズラをする奴は1人しかいない。
「なにしてんだよ、高杉」
だが、なんだかちょっと様子が違うらしい。
背中に当たる柔らかい感触…かなり密着しているようだ。
ハッと気づいて回された腕を掴むも、案外しっかりと抱きしめられていて、ちっとやそっとでは離れない。
「高杉さんと、いつも・・・こんなことしてるの?」
胸をグッと背中に押し付けながら呟いたのは、図書館で告白してきた例の彼女だ。
「・・・してねぇよ」
「宮田くん、二人きりだね」
「は?」
「好きにしていいよ?」
「お前、何言って・・・」
グッと力を入れて腕を掴み、無理やり体を引き剥がそうとする。
すると女は、低い声でボソリと呟いた。
「照れないでよ」
「・・いいからやめろって・・」
「好きなの、宮田くん。高杉さんよりずっと、私の方が好きなの!!」
「知るかよ!・・・離せって・・」
女は宮田の正面に回り込んで、またさらに体を密着させた。
力任せに抱きついてくる相手に宮田が思わず後ずさると、絶妙なバランスで立てかけてあった地図たちが一斉に、大きな音を立てて横倒しになってしまった。
ガラガラと大きな音が響き、廊下にいた人たちが何事かと準備室を覗く。
中には、抱き合う男女の姿。
「お、お前ら・・・何してんの?」
「まさかお前、襲ったりしてねーよな?」
男子が茶化すように話しかけたが、宮田はひどく面白くなさそうな顔で制服の襟を正し、
「なんでもねぇよ」
と言って、準備室を去っていった。
そして中には、泣きながら着衣の乱れを整える女が一人。
「・・恥ずかしい・・・みんなに見られちゃった・・・」
「ちょっと、大丈夫?何かされたの?」
「う、ううん。ケンカしちゃっただけなの」
てへへ、と恥ずかしそうに笑う女を見て、顔見知りだと思われる女生徒が問いただす。
「え?あんた宮田と付き合ってたの?」
「え、う、うん。まぁ・・・内緒ね?」
女は顔を赤らめて、目を逸らす。
にわかにギャラリーが増え、ざわつく準備室の前。
この1件が噂になるのも、時間の問題だった。
[祝・3年F組XX XXさん 書道全国大会 個人賞特選]
夏休み明け。
学校の壁には、夏の成果を発表するいくつもの垂れ幕がぶら下がっていた。
そこに、あんまり大きな文字で見たくない人物の名前を発見した。
図書館で、宮田に告白していた、あの子の名前だ。
そして・・・修学旅行で、宮田と抱き合ってた子。
書道。
自分の知らない世界で全くわからないけど、垂れ幕が下がるくらいだからすごいんだろうなぁと、奈々はぼんやり考える。
こういう風に、何か頑張っている人だったら、宮田のそばにいてもおかしくないのかな。
なんて、白旗を上げる言い訳を探したりしながら。
唇に残った感触が、完全なる降参を許さない。
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9月の東日本新人王決定戦、予選。
宮田は見事KO勝利をおさめた。
「宮田くぅーん!今日もかっこよかったぁ!」
「宮田ぁ!お前は世界を狙えるぞ!次も勝てよ!」
大きな声援を受けて、花道を去っていく宮田の後ろ姿は、かつて横を歩いていた同級生とは思えないほど輝いて、華々しかった。
クラスが分かれ、チケットも学校での金銭受け渡しが問題になったためジム経由でしか買えなくなり、宮田との接点は今はほとんどない。
さらにボクシングでの大活躍と人気ぶり・・・
夏休みに急接近したかと思った宮田が、どんどん遠い人になっていく気がした。
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ある日のこと。
宮田は社会科準備室で、壁に地図を立てかけていた。
運悪く今日は日直で、授業で使った資料を準備室に戻す必要があったからだ。
そういえば1年の時、ここで奈々に担任から匿ってもらったことがあったな、とふと思い出す。
なんだか懐かしくて、口角の端が少し上がっていくのが自分でもわかった。
薄暗い部屋の中で、倒れてこないようにバランスを見ながら地図を置いて、ひと段落した時だった。
突然後ろから、誰かに抱きしめられた。
こんなイタズラをする奴は1人しかいない。
「なにしてんだよ、高杉」
だが、なんだかちょっと様子が違うらしい。
背中に当たる柔らかい感触…かなり密着しているようだ。
ハッと気づいて回された腕を掴むも、案外しっかりと抱きしめられていて、ちっとやそっとでは離れない。
「高杉さんと、いつも・・・こんなことしてるの?」
胸をグッと背中に押し付けながら呟いたのは、図書館で告白してきた例の彼女だ。
「・・・してねぇよ」
「宮田くん、二人きりだね」
「は?」
「好きにしていいよ?」
「お前、何言って・・・」
グッと力を入れて腕を掴み、無理やり体を引き剥がそうとする。
すると女は、低い声でボソリと呟いた。
「照れないでよ」
「・・いいからやめろって・・」
「好きなの、宮田くん。高杉さんよりずっと、私の方が好きなの!!」
「知るかよ!・・・離せって・・」
女は宮田の正面に回り込んで、またさらに体を密着させた。
力任せに抱きついてくる相手に宮田が思わず後ずさると、絶妙なバランスで立てかけてあった地図たちが一斉に、大きな音を立てて横倒しになってしまった。
ガラガラと大きな音が響き、廊下にいた人たちが何事かと準備室を覗く。
中には、抱き合う男女の姿。
「お、お前ら・・・何してんの?」
「まさかお前、襲ったりしてねーよな?」
男子が茶化すように話しかけたが、宮田はひどく面白くなさそうな顔で制服の襟を正し、
「なんでもねぇよ」
と言って、準備室を去っていった。
そして中には、泣きながら着衣の乱れを整える女が一人。
「・・恥ずかしい・・・みんなに見られちゃった・・・」
「ちょっと、大丈夫?何かされたの?」
「う、ううん。ケンカしちゃっただけなの」
てへへ、と恥ずかしそうに笑う女を見て、顔見知りだと思われる女生徒が問いただす。
「え?あんた宮田と付き合ってたの?」
「え、う、うん。まぁ・・・内緒ね?」
女は顔を赤らめて、目を逸らす。
にわかにギャラリーが増え、ざわつく準備室の前。
この1件が噂になるのも、時間の問題だった。