第4章:一喜一憂
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学祭の季節がやってきて、今年もまた、実行委員を決める学級会議が始まった。
「高杉、今年もお前がやれよ」
男子の茶化す様な声が飛ぶ。
「そうだそうだ、お前あんなに盛り上がってたんだから、またやれよ」
面倒な仕事を押し付けるかの様に、男子が次々と囃し立てる。
一方で奈々は、今年は実行委員になるつもりはなかった。
去年燃え尽きてしまった、というのが大きな理由だが、もう一つは・・・
別の子がやりたがっている噂を聞いたからだ。
「では、多数決で決めましょうか」
クラスが騒がしいのをいいことに、議長が適当な提案を始める。
全く男子ってヤツは笑いさえ取れればいいのか、いい加減なことしかしない。
「ちょっと待ってよ!私・・・」
「高杉さんが実行委員でいい人〜?」
「はーい」「はーい」「はーい」
「ちょっと!私は何も・・・」
クラスの男子が笑いながら手を挙げると、その雰囲気に呑まれた他のクラスメイトまでが次々に手を上げ始めた。
本人の意思とは無関係に、実行委員が決まりかけた時、クラスの中に思わぬ声が響いた。
「待てよ」
クラスが一斉にその声の主の方を振り返る。
そこには、腕を組んで明らかに不機嫌な宮田がいた。
「なんだよ宮田、なんか意見でもあるのか?」
「立候補」
「え?」
今度は皆、宮田が親指で指した方向に目を見やる。
隣の席で、恥ずかしそうに下を向いている女子がいた。
「お前、実行委員・・やりたいのか?」
議長が聞くと、女子は何度も小さく顔を縦に振った。
「じゃー・・・他に居なければ決定で」
まばらな拍手がクラスに響く。
奈々をイジメ損ねた男子たちは面白くなさそうだったが、相手が宮田とわかると何も言えないようだ。
「宮田くん・・・ありがとう」
隣の席の女子が呟くと、宮田は冷たく「別に」と答えた。
それを見て、奈々の胸がズキンと痛む。
宮田の隣でモジモジと、立候補したそうに俯いてた子。
さっきの変な雰囲気に飲まれて、挙げた手を引っ込めたのを、後ろから見てた。
彼女のシャイな性格も、知っていた。
でも私は後ろから見ていただけ。
まさか宮田が、助け舟を出すなんて。
知らなかった、いや・・・予期してなかっただけ。
そして知っていた。
私の知らないストーリーがゴロゴロ転がっていることくらい。
宮田は無意識に、あちこちに種を蒔くジゴロだって。
私だけじゃない。
私だけじゃない・・・・
実行委員を押し付けられずに済んだ安堵は全く吹き飛んで・・・
ただただ、終わりのない自己嫌悪に苛まれる。
こんなの嫌だ。
こんな感情要らない。
もっと普通でいたい。
前の私に、戻りたい。