第3章:夏の思い出
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あの気まずい別れ方をした日から一度も口を聞かずに、1学期の終業式を迎えた。
冷たく言い放されてこみ上げた怒りなどとっくにおさまっていて、むしろ激しい自己嫌悪に陥った。
人の家庭環境をあれやこれやと矢継ぎ早に聞いて、本当に無神経だった。
聞かれた方は確かに鬱陶しかっただろう。
本来なら謝るべきとはわかっていたが、何と声をかけていいものかわからない。
向こうも特段、何かを話しかけて来ることもない。
途切れた接点を、再びつなぎ合わせる術がなく、時間だけが無情にすぎていく。
終業式のHRが終わり、掃除もなくクラス全員が一斉に解散となった。
宮田は、ガタンと席を立ってすぐに教室を出ていく。
追いかけたい気持ちはあったが、周りの目が気になって、何も動けなかった。
人の波が切れるまで待って、少し落ち着いてから帰ろうと、クラスメイトと談笑しながらノロノロ支度する。
時間にして2~30分くらい経っただろうか。
今ならバスが混むこともないし、ミズキとゆっくりおしゃべりしながら帰れるはず、と教室を後にする。
歩きながらも喋り続け、校門まで差し掛かった時、一人の他校生が待ち伏せしているのが目に入った。
そしてミズキは彼を見るなり「たっくーん!来てくれたのぉ〜?」と叫びながら走り寄って行った。
なるほど、あれが例の彼氏。
「奈々ごめん〜」
「いいよいいよ、お幸せにぃ」
腕を組んで逆方向へ歩いていく二人の背中を見送って、踵を返す。
終業式後、少し時間の経った、人のまばらな通学路。
ところがバス停に着くと、そこに居たのは一目散に帰ったはずの宮田。
「何でいるの」
「いちゃ悪いかよ」
自分でも最高に可愛くない一言だとはわかっていたが、あれから口もきいておらず、どんな態度で接していいのか全くわからなかった。
バスは間も無くやって来て、二人は一緒に乗り込む。
人もまばらなバス内。
宮田は前方の、一人分の座席の空席に腰をかけた。
奈々はちょっと迷って、宮田のすぐ後ろに腰を下ろした。
これはチャンスだ。
なんで帰ったはずの宮田がいるのか知らないが、謝るには絶好のチャンス。
奈々はごくりと唾を飲み込んで、意を決して後ろから声をかけた。