第2章:惹かれ行く心
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1年からのクラスがそのまま持ち上がり、何の代わり映えもしない2年生が始まり・・・
そしてあっという間に、何のイベントもない平凡な1学期が終わろうとしていた。
宮田は今年プロデビューをするらしい。
以前より休んだり、傷を作って登校してくることが増えた。
きっと前よりもっと厳しいトレーニングをしているのだろう。
放課後の帰り際、あの嫌味な担任に呼び止められ、職員室へ来るように言われた。
「失礼します」
「おお、高杉。悪いな。ちょっと頼みがあって」
担任はそう言うと、机の引き出しから封筒を取り出して、奈々に手渡した。
「悪いけど、その封筒、宮田の家まで届けてくれないか?」
「・・・は?宮田くんの家なんて知りませんけど」
「いや、あいつ最近引っ越したんだよ。お前の家の近くに」
思いもよらない情報を突然聞かされると、人は何のリアクションも取れないらしい。
固まる奈々に、担任は続けて、
「あいつここ3日くらい休んでるだろ?この書類、割と急ぎでな。本来なら俺が届けるべきなんだろうけど、忙しくてさぁ。お前が一番家近いし、宮田と仲も良さそうだから、まぁ頼むよ」
無理やり押し付けられた封筒と、住所の書いてある紙切れ。
確かに、自分の家から徒歩10分もない距離だ。
宮田が引っ越したなんて全然聞いてないし、通学路でも会ったことがない。
「“仲よさそう”なら、知っててもおかしくないのにね」
と自嘲気味につぶやいてみる。
バスを降りてしばし歩き、家に帰るルートの何本目かの分岐点で、初めての道を選ぶ。
ここから先が、宮田の家へ続くルートだ。
さほど込み入った路地でもない、普通の住宅街。
住所と合致する場所には、どうみても一人暮らし用の規模の小さなアパートが建っていた。
宮田が何人家族かしらないが、ここで3人以上が暮らすのは狭そうだなと思いながら、階段を上がる。
表札に書かれた「宮田」の文字を確認して呼び鈴を押す。
お母さんが出てくるのかな。
宮田のお母さんて、どんな人なのかな。
私はどんな顔して挨拶すればいいのかな・・・
緊張を隠しきれない、かすかに震える両手を抑えるように、封筒を胸の前で抱きしめる。
中からどすどす、と足音がして、ドアが開く。
出てきたのは、宮田本人だった。