第2章:惹かれ行く心
お名前設定はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
赤、緑、金、銀、そして白。
こういうのをクリスマスムード一色、というらしい。
色とりどりだというのに、一色だなんて可笑しな話。
子供の頃は、クリスマスというものは、家族でパーティーしてケーキやお肉を食べて、サンタのおじいさんを夢見て、翌朝プレゼントを開けて、みんなでワイワイ遊ぶという、1年で一番待ち遠しいイベントだった。
いつからか・・・
恋人のいない男女にとっては、最高につまらないイベントとなってしまった。
「ねえ、ミズキ。今年のクリスマスさ・・・」
「あ、あたしごめん」
「え?・・まさか・・・」
二人で見つめあって息を吸い、タイミングを見計らって同時に発声する。
「「で・え・と」」
しばしの沈黙。
「えー!!…って、こないだの彼?」
「そうなの〜」
嬉しそうにいうミズキを前にして、思わず本音が漏れて流れる。
「抜け駆けズルい」
「あら、奈々も相手探せばいいじゃん?」
「いないの知ってていうんだから」
「え〜?宮田でいいじゃん」
「!!」
意外な人物の名前が飛び出して、思わず咳き込む。
拳で胸を叩きながら、呼吸を整えて、
「なんでアイツなのよ」
「え?なんとなく」
「やめてよ、あんな意地悪なヤツ」
目を伏せながら、頰を膨らませて奈々が言う。
すると、頭にバサっと教科書か何かで叩かれたような、軽い衝撃が走った。
「悪かったな、意地悪で」
振り返ってみると、面白くなさそうな顔をした宮田がすぐそばに立っていた。
「み、宮田!?聞いてたの!?」
「聞こえてきたんだよ」
「嘘!?盗み聞きしてたでしょ!?」
「お前の声がデカいんだよ」
慌てふためく自分の顔がどんどん赤くなっているのがわかるが、それを弁解する余地はまるで無い。
面白そうにニヤニヤしているミズキの顔も横目で視界に入るが、それを嗜める余裕もない。
「そうだ宮田。クリスマス一人なら、奈々とデートでもしなよ」
「ちょ、ちょっとやめてよミズキ」
ミズキは昔から悪ノリが過ぎるところがある。
度胸があって物怖じしないところは見習いたいが、こういう時は本当に困ってしまう。
「一人じゃねぇよ」
宮田の呟いた言葉に、心臓が一瞬で凍ったように収縮したのがわかった。
その一瞬は現実では秒にも満たないはずなのに、血の流れが止まって体の先端から冷えていく感覚がゆっくりとわかるほどに長かった。
「あ・・そ、そうだよね。宮田様とあろうものが」
ミズキも予想外だったのか、いつものような強気のテンションがあっという間に消え失せていった。
「なんだよ、その”様”って」
「いや、おモテになるのかと」
「・・・バカじゃねぇの」
宮田は呆れたようにため息をついて、肩をすくめて去っていった。
『一人じゃねぇよ』
何気ない一言が、これ以上ないくらい重い。
どうして?
何がこんなに重たい?
・・・別に、どうでもいい、もう考えたくない。
「奈々、なんか・・・ごめん」
ミズキが申し訳なさそうに呟く。
猪突猛進のミズキに、悪気がないのはよく知っている。
そしてそういう熱血漢なところが、彼女の持ち味なのだ。
「なにこれ、私フラれたみたいになってるんだけど」
奈々が面白くなさそうにいうと、ミズキがクールに言い返してきた。
「フラれたんでしょ」
「・・・別に、好きじゃないし」
そう、別に、好きじゃない。
あんな、宮田ファンの一員みたいな感じ・・・
あんな感じになんか、絶対なりたくない。
絶対、好きになんか、ならない。