short(GS4)
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玲太くんとジェットコースターに乗った後、コーヒーカップに乗り、更にはバンジージャンプにもチャレンジした。
連続して乗り物に乗ってさすがに疲れたから休憩しようという話になり、近くの売店を探して園内を歩いていると、ソフトクリームの看板が並んでいるお店を見つけた。
「玲太くん、売店あったよ!」
「じゃあそこで買うか」
バニラ、チョコ、ミックス、抹茶、ストロベリーなど、他にもたくさんのメニューが書かれていて、色とりどりの写真とメニューの種類の多さに心が踊った。
中でも秋限定のモンブランが気になって、やっぱり期間限定って心惹かれるよね、とうきうきしながらお店に近づいていくと、玲太くんは「そこのベンチで待ってて」と売店のすぐ近くにあった二人掛けのベンチを指差して言った。
「えっいいよ、一緒に並ぶよ」
「いい、せっかくだし俺が買ってくる。おまえ、バニラでいいよな? 好きだったろ」
「う、うん」
玲太くんは人の良さそうな笑みを浮かべるので、頷くことしかできなかった。そしてそのまま売店に並んだので、ひとまず私はベンチに腰掛けて、彼の様子を眺めていた。
声までは聞こえないけれど、指で2の形を作っていたので、おそらく彼も同じものを頼んだようだった。
売店は混んでいなかったので、やっぱり一緒に並んでても良かったんじゃないかな、と思いつつ、すぐにバニラのソフトクリームを2つ手に持った玲太くんが帰ってきた。ありがとう、とソフトクリームを受け取ると、よくできました、と玲太くんは満足気に笑った。
ぱくりとソフトクリームを口にする。甘くて食べ馴染みのある、定番の味だった。美味しいには違いない。
メリーゴーランドの音楽や少し離れた場所にあるジェットコースターに乗っている人の叫び声を聞きながらこんなところでのんびりソフトクリームを食べているなんて、休日にしかできないことだなあと感じる。だけど、明るくて楽しい場所のはずなのに、なんとなく心が晴れなかった。
「子どもの頃もさ、こうやって一緒にバニラのソフトクリーム食べたよな」
「ええっ、そうだっけ?」
「そうだよ。幼稚園の親子遠足があっただろ」
「玲太くんはなんでも覚えてるんだね」
私とは打って変わって楽しそうな玲太くんはそのまま幼稚園の親子遠足の時に、動物園へ行って、親たちがソフトクリームを買ってくれて、一緒に食べたときの話を続けていた。玲太くんが楽しんでくれているのは素直に嬉しい。
けれど、右から左に玲太くんの声は抜けていき、代わりに私の脳裏にあるのは秋限定のモンブランのことだった。モンブラン味のソフトクリームって食べたことないから、どんな味か想像がつかなくて、そちらに興味深々だった。
「……ソフトクリーム、気分じゃなかったか?」
「え」
「全然減ってない」
玲太くんのいつの間にかソフトクリームはほとんどなくなっていたのに、私のソフトクリームは半分以上残っていた。玲太くんは眉を下げてしゅんとしながら私を見ていた。
「そのままじゃ溶けてどろどろになるぞ」
「ほんとだね、早く食べなきゃ」
「アイス、食べたくなかった、とか?」
「そんなことないよ。ごめん、考え事してただけ」
「ふーん……。俺と一緒にいるのに他のこと考える余裕あるんだ」
一瞬ぴりっとした空気が流れる。玲太くんは、玲太くんと過ごしている時に私が他の人や物のことを考えるのを極度に嫌がる。
「違うよ、親子遠足のこと、思い出そうとしてただけ」
「何か思い出したのか?」
「残念ながら何も」
「なんだよそれ」
「ごめんごめん」
私は笑いながら、さっきの空気は感じなかったことにして、もう一度ソフトクリームを口にした。甘くて、美味しい。けどやっぱり、バニラじゃなくて、モンブランが食べたかった。そもそも一緒に売店にだって並びたかった。一緒にメニューを選びたかった。
でも玲太くんの自信満々な顔とか、しゅんとした顔を見ると、罪悪感でいっぱいになったり、せっかくやろうとしてくれてるのに否定するのって良くないよね、という気持ちになったりして、何も言えなくなってしまう。
玲太くんは、時々昔の話をしてくれる。私が覚えていることもあれば、忘れていることもある。忘れちゃったという度に少し悲しそうな顔をする。彼は会えなかった十年を埋めたいとも言う。
でも私は新しい日々を玲太くんと作っていくほうがいいと思っている。忘れてしまったことは申し訳なく感じているけれど、その分また新しく始めればいいとも思うのに、伝え方が分からない。なんて言えば、彼を傷つけずに済むんだろう。
「食べ終わったら観覧車乗ろう」
「うん、分かった。ちょっと待ってて」
「食べるの、ゆっくりでいいから」
「ありがとう」
優しさに満ちているはずなのに、どこか影を感じる玲太くんの言葉の受け取り方が、私にはまだ分からなかった。
20241221〜20241223 非公式玲マリwebオンリー「あの坂道で待ってる」展示作品
連続して乗り物に乗ってさすがに疲れたから休憩しようという話になり、近くの売店を探して園内を歩いていると、ソフトクリームの看板が並んでいるお店を見つけた。
「玲太くん、売店あったよ!」
「じゃあそこで買うか」
バニラ、チョコ、ミックス、抹茶、ストロベリーなど、他にもたくさんのメニューが書かれていて、色とりどりの写真とメニューの種類の多さに心が踊った。
中でも秋限定のモンブランが気になって、やっぱり期間限定って心惹かれるよね、とうきうきしながらお店に近づいていくと、玲太くんは「そこのベンチで待ってて」と売店のすぐ近くにあった二人掛けのベンチを指差して言った。
「えっいいよ、一緒に並ぶよ」
「いい、せっかくだし俺が買ってくる。おまえ、バニラでいいよな? 好きだったろ」
「う、うん」
玲太くんは人の良さそうな笑みを浮かべるので、頷くことしかできなかった。そしてそのまま売店に並んだので、ひとまず私はベンチに腰掛けて、彼の様子を眺めていた。
声までは聞こえないけれど、指で2の形を作っていたので、おそらく彼も同じものを頼んだようだった。
売店は混んでいなかったので、やっぱり一緒に並んでても良かったんじゃないかな、と思いつつ、すぐにバニラのソフトクリームを2つ手に持った玲太くんが帰ってきた。ありがとう、とソフトクリームを受け取ると、よくできました、と玲太くんは満足気に笑った。
ぱくりとソフトクリームを口にする。甘くて食べ馴染みのある、定番の味だった。美味しいには違いない。
メリーゴーランドの音楽や少し離れた場所にあるジェットコースターに乗っている人の叫び声を聞きながらこんなところでのんびりソフトクリームを食べているなんて、休日にしかできないことだなあと感じる。だけど、明るくて楽しい場所のはずなのに、なんとなく心が晴れなかった。
「子どもの頃もさ、こうやって一緒にバニラのソフトクリーム食べたよな」
「ええっ、そうだっけ?」
「そうだよ。幼稚園の親子遠足があっただろ」
「玲太くんはなんでも覚えてるんだね」
私とは打って変わって楽しそうな玲太くんはそのまま幼稚園の親子遠足の時に、動物園へ行って、親たちがソフトクリームを買ってくれて、一緒に食べたときの話を続けていた。玲太くんが楽しんでくれているのは素直に嬉しい。
けれど、右から左に玲太くんの声は抜けていき、代わりに私の脳裏にあるのは秋限定のモンブランのことだった。モンブラン味のソフトクリームって食べたことないから、どんな味か想像がつかなくて、そちらに興味深々だった。
「……ソフトクリーム、気分じゃなかったか?」
「え」
「全然減ってない」
玲太くんのいつの間にかソフトクリームはほとんどなくなっていたのに、私のソフトクリームは半分以上残っていた。玲太くんは眉を下げてしゅんとしながら私を見ていた。
「そのままじゃ溶けてどろどろになるぞ」
「ほんとだね、早く食べなきゃ」
「アイス、食べたくなかった、とか?」
「そんなことないよ。ごめん、考え事してただけ」
「ふーん……。俺と一緒にいるのに他のこと考える余裕あるんだ」
一瞬ぴりっとした空気が流れる。玲太くんは、玲太くんと過ごしている時に私が他の人や物のことを考えるのを極度に嫌がる。
「違うよ、親子遠足のこと、思い出そうとしてただけ」
「何か思い出したのか?」
「残念ながら何も」
「なんだよそれ」
「ごめんごめん」
私は笑いながら、さっきの空気は感じなかったことにして、もう一度ソフトクリームを口にした。甘くて、美味しい。けどやっぱり、バニラじゃなくて、モンブランが食べたかった。そもそも一緒に売店にだって並びたかった。一緒にメニューを選びたかった。
でも玲太くんの自信満々な顔とか、しゅんとした顔を見ると、罪悪感でいっぱいになったり、せっかくやろうとしてくれてるのに否定するのって良くないよね、という気持ちになったりして、何も言えなくなってしまう。
玲太くんは、時々昔の話をしてくれる。私が覚えていることもあれば、忘れていることもある。忘れちゃったという度に少し悲しそうな顔をする。彼は会えなかった十年を埋めたいとも言う。
でも私は新しい日々を玲太くんと作っていくほうがいいと思っている。忘れてしまったことは申し訳なく感じているけれど、その分また新しく始めればいいとも思うのに、伝え方が分からない。なんて言えば、彼を傷つけずに済むんだろう。
「食べ終わったら観覧車乗ろう」
「うん、分かった。ちょっと待ってて」
「食べるの、ゆっくりでいいから」
「ありがとう」
優しさに満ちているはずなのに、どこか影を感じる玲太くんの言葉の受け取り方が、私にはまだ分からなかった。
20241221〜20241223 非公式玲マリwebオンリー「あの坂道で待ってる」展示作品