ときメモGSワンドロ・ワンライ
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きみのすきな花をおしえて
今日はボランティアサークルの活動の日だ。活動先は病院で、そこで直接サークルのメンバーと待ち合わせをしている。入院生活を送っている子どもたちとの活動なので、少しでも場が明るくなるように、何か花を買っていきたい。そう思った僕は、花屋アンネリーを訪ねた。花が欲しかったのはもちろん本当だけど、美奈子さんが働いてる日だったらいいな、なんて、心のどこかで淡い期待を抱いていた。基本的には火曜日と木曜日の出勤だけど、たまに土日もバイトの日があると言っていたことが、僕の気持ちを膨らませていた。
店に入り、どの花がいいかなと店内を眺めつつ、つい自然と美奈子さんのことを探してしまう。すると、奥で作業をしていた美奈子さんが僕を見つけて、手を振ってくれた。彼女は僕がここを訪れると、すぐに気がついてくれる。前にその話をしたら、彼女は、玉緒先輩は背が高いから見つけやすいんですと言っていた。背が高いことが、こんなに嬉しいと感じることもなかなかない。
そういう些細なやり取りもすごく嬉しくて、花を買うことがあればもちろんここに来るし、なくてもつい立ち寄ってしまっているときがある。何もないのに、元気かななんて顔が見たくて立ち寄ったとき、美奈子さんにそれを気づかれていないか、僕は少しヒヤヒヤしている。
「玉緒先輩!」
「美奈子さん、こんにちは」
美奈子さんは、僕の方まで駆け寄ってきてくれた。名前を呼ばれただけなのに嬉しい、なんて頬が緩みそうになるけれど、ぐっと堪える。彼女は緑のエプロンにパンツと動きやすい服装で、低い位置で髪をひとつに結んでいる。はば学内では見られない姿が新鮮だなといつも思う。
「こんにちは、どこかへお出かけですか?」
「今日はボランティアサークルの日なんだ」
「そうだったんですね。先輩、大荷物でどこに行くんだろうと思いました」
「この紙袋のこと?これは折り紙とか紙皿とか、製作に使うものが入ってるんだ」
「わあ、いっぱい入ってますね!……もしかして子どもたちと七夕の準備ですか?」
「さすが美奈子さん、よく気がついたね」
「へへ、明日ですもんね、七夕」
今日は病院で子どもたちと七夕飾りを作ることになっている。明日が七夕だから、今日の間にたくさん飾りを作ったり、短冊にお願い事を書いて笹に吊るしたりして、七夕の準備をする。そして明日1日、少しでも子どもたちに季節の行事を楽しんでもらおう、というのが今回のねらいだった。
「それでね、何か七夕に合う花を買いたくて……何かあるかな?」
「あっ、それならぴったりのお花がありますよ!これです!」
美奈子さんがじゃじゃーんと言わんばかりに僕に紹介してくれたのは、店内入り口にある一番目立つところに飾られていた、かすみ草だった。7月7日はかすみ草の日と書かれたポップがあって、そこにはオーソドックスな白のかすみ草以外にも、青やピンク、紫、黄色と色とりどりのかすみ草が並べられていた。それはとても綺麗だった。だけどかすみ草と七夕がいまいち結びつかなくて、僕はちょっと失礼かもと思いながらも、どういうことだろうと首を傾げてしまった。そんな僕の様子を見て、美奈子さんは少し誇ったような顔をして続けた。
「7月7日はかすみ草の日なんです」
「へえ!それは知らなかった」
「私もここで働き始めてから知ったんです。かすみ草って天の川に似てるから、7月7日がかすみ草の日になったそうですよ」
「確かに、かすみ草がたくさんあると川みたいだもんね」
「かすみ草って、他のお花と一緒に花束になってることが多いんですけど、こうやってかすみ草をメインにしてもすごく素敵なんですよ」
「うん、色とりどりで綺麗だね」
かすみ草にこんなに色の種類があるの知らなかったなあ、と言いながらそのコーナーを眺めた。なんとなく美奈子さんの視線を感じて、かすみ草から彼女のほうに目をやると、いつも以上ににこにこしながら、僕の方を見ていた。
「もしかして、このポップ美奈子さんが書いたの?」
「えっなんでわかったんですか?すごい!」
「ふふ、なんだか美奈子さん嬉しそうだったから」
「実は私がここのコーナーの企画をさせてもらったんです。玉緒先輩に見てもらえると思ってなかったので、嬉しくて」
さっきの少し誇らしそうな顔、今の彼女のにこにこした表情からもしかしてと思ったら、どうやら当たりだったらしい。じゃあ僕は今日ここに来てますますラッキーだったんだなと、もう一度かすみ草のコーナーをぐるりと、今度は先ほどよりもゆっくりと一周した。
「よかったら、私から玉緒先輩にかすみ草、プレゼントさせてもらえませんか?」
「僕に?」
「はい!かすみ草の花言葉は感謝なんです。いつも玉緒先輩にはお世話になってるし、今日来てもらえたのも嬉しいし、子どもたちにもこの綺麗なかすみ草、見てほしいです」
「ありがとう。そしたら、お言葉に甘えようかな。色は君に任せてもいい?」
「もちろんです!少々お待ち下さい!」
美奈子さんは手際よく色とりどりのかすみ草を選び、奥の作業台に持っていって、包んでくれた。彼女の慣れた手つきを遠目で見ながら、アンネリーで働き始めてもう3年になると言っていたことを思い出した。そうなると、僕も3年アンネリーに通ってることになるんだなと気づいて、少し気恥ずかしくなった。
「お待たせしました!玉緒先輩、いつもありがとうございます」
「こちらこそ、いつもありがとう」
「またいつでも来てくださいね」
美奈子さんに見送られて、かすみ草の花束を抱えて、病院へ向かった。もし誰にも見られていなかったらスキップしたいくらいだけど、昼間の大通りなのでやめておくことにする。彼女はいろんな色をみんなに楽しんでほしいからと、アンネリーにあった全ての色のかすみ草を、少しずつ贈ってくれた。同じ色でも一本一本ちょっとずつ違っていて、それがなんだか愛おしく思えた。
歩きながら、今度は美奈子さんの好きな花を贈りたいと思った。さっき聞けばよかったなあ、と思ったけれど、また美奈子さんに会う口実ができたから、これはこれで良しとしたい。
それから、病院で僕はサークルメンバーや子どもたちと一緒に七夕の飾りを作って、病棟の受付にかすみ草の花を飾ってもらった。七夕の雰囲気を少しでも感じてもらえたらいいと思う。子どもたちが一緒に短冊を書こうよと言ってくれたので、僕もお願いごとを書くことにしたけれど、ちっとも思いつかなかった。美奈子さんに会いたいという願い事は、もう叶ってしまったから。
20240706
お題:七夕
今日はボランティアサークルの活動の日だ。活動先は病院で、そこで直接サークルのメンバーと待ち合わせをしている。入院生活を送っている子どもたちとの活動なので、少しでも場が明るくなるように、何か花を買っていきたい。そう思った僕は、花屋アンネリーを訪ねた。花が欲しかったのはもちろん本当だけど、美奈子さんが働いてる日だったらいいな、なんて、心のどこかで淡い期待を抱いていた。基本的には火曜日と木曜日の出勤だけど、たまに土日もバイトの日があると言っていたことが、僕の気持ちを膨らませていた。
店に入り、どの花がいいかなと店内を眺めつつ、つい自然と美奈子さんのことを探してしまう。すると、奥で作業をしていた美奈子さんが僕を見つけて、手を振ってくれた。彼女は僕がここを訪れると、すぐに気がついてくれる。前にその話をしたら、彼女は、玉緒先輩は背が高いから見つけやすいんですと言っていた。背が高いことが、こんなに嬉しいと感じることもなかなかない。
そういう些細なやり取りもすごく嬉しくて、花を買うことがあればもちろんここに来るし、なくてもつい立ち寄ってしまっているときがある。何もないのに、元気かななんて顔が見たくて立ち寄ったとき、美奈子さんにそれを気づかれていないか、僕は少しヒヤヒヤしている。
「玉緒先輩!」
「美奈子さん、こんにちは」
美奈子さんは、僕の方まで駆け寄ってきてくれた。名前を呼ばれただけなのに嬉しい、なんて頬が緩みそうになるけれど、ぐっと堪える。彼女は緑のエプロンにパンツと動きやすい服装で、低い位置で髪をひとつに結んでいる。はば学内では見られない姿が新鮮だなといつも思う。
「こんにちは、どこかへお出かけですか?」
「今日はボランティアサークルの日なんだ」
「そうだったんですね。先輩、大荷物でどこに行くんだろうと思いました」
「この紙袋のこと?これは折り紙とか紙皿とか、製作に使うものが入ってるんだ」
「わあ、いっぱい入ってますね!……もしかして子どもたちと七夕の準備ですか?」
「さすが美奈子さん、よく気がついたね」
「へへ、明日ですもんね、七夕」
今日は病院で子どもたちと七夕飾りを作ることになっている。明日が七夕だから、今日の間にたくさん飾りを作ったり、短冊にお願い事を書いて笹に吊るしたりして、七夕の準備をする。そして明日1日、少しでも子どもたちに季節の行事を楽しんでもらおう、というのが今回のねらいだった。
「それでね、何か七夕に合う花を買いたくて……何かあるかな?」
「あっ、それならぴったりのお花がありますよ!これです!」
美奈子さんがじゃじゃーんと言わんばかりに僕に紹介してくれたのは、店内入り口にある一番目立つところに飾られていた、かすみ草だった。7月7日はかすみ草の日と書かれたポップがあって、そこにはオーソドックスな白のかすみ草以外にも、青やピンク、紫、黄色と色とりどりのかすみ草が並べられていた。それはとても綺麗だった。だけどかすみ草と七夕がいまいち結びつかなくて、僕はちょっと失礼かもと思いながらも、どういうことだろうと首を傾げてしまった。そんな僕の様子を見て、美奈子さんは少し誇ったような顔をして続けた。
「7月7日はかすみ草の日なんです」
「へえ!それは知らなかった」
「私もここで働き始めてから知ったんです。かすみ草って天の川に似てるから、7月7日がかすみ草の日になったそうですよ」
「確かに、かすみ草がたくさんあると川みたいだもんね」
「かすみ草って、他のお花と一緒に花束になってることが多いんですけど、こうやってかすみ草をメインにしてもすごく素敵なんですよ」
「うん、色とりどりで綺麗だね」
かすみ草にこんなに色の種類があるの知らなかったなあ、と言いながらそのコーナーを眺めた。なんとなく美奈子さんの視線を感じて、かすみ草から彼女のほうに目をやると、いつも以上ににこにこしながら、僕の方を見ていた。
「もしかして、このポップ美奈子さんが書いたの?」
「えっなんでわかったんですか?すごい!」
「ふふ、なんだか美奈子さん嬉しそうだったから」
「実は私がここのコーナーの企画をさせてもらったんです。玉緒先輩に見てもらえると思ってなかったので、嬉しくて」
さっきの少し誇らしそうな顔、今の彼女のにこにこした表情からもしかしてと思ったら、どうやら当たりだったらしい。じゃあ僕は今日ここに来てますますラッキーだったんだなと、もう一度かすみ草のコーナーをぐるりと、今度は先ほどよりもゆっくりと一周した。
「よかったら、私から玉緒先輩にかすみ草、プレゼントさせてもらえませんか?」
「僕に?」
「はい!かすみ草の花言葉は感謝なんです。いつも玉緒先輩にはお世話になってるし、今日来てもらえたのも嬉しいし、子どもたちにもこの綺麗なかすみ草、見てほしいです」
「ありがとう。そしたら、お言葉に甘えようかな。色は君に任せてもいい?」
「もちろんです!少々お待ち下さい!」
美奈子さんは手際よく色とりどりのかすみ草を選び、奥の作業台に持っていって、包んでくれた。彼女の慣れた手つきを遠目で見ながら、アンネリーで働き始めてもう3年になると言っていたことを思い出した。そうなると、僕も3年アンネリーに通ってることになるんだなと気づいて、少し気恥ずかしくなった。
「お待たせしました!玉緒先輩、いつもありがとうございます」
「こちらこそ、いつもありがとう」
「またいつでも来てくださいね」
美奈子さんに見送られて、かすみ草の花束を抱えて、病院へ向かった。もし誰にも見られていなかったらスキップしたいくらいだけど、昼間の大通りなのでやめておくことにする。彼女はいろんな色をみんなに楽しんでほしいからと、アンネリーにあった全ての色のかすみ草を、少しずつ贈ってくれた。同じ色でも一本一本ちょっとずつ違っていて、それがなんだか愛おしく思えた。
歩きながら、今度は美奈子さんの好きな花を贈りたいと思った。さっき聞けばよかったなあ、と思ったけれど、また美奈子さんに会う口実ができたから、これはこれで良しとしたい。
それから、病院で僕はサークルメンバーや子どもたちと一緒に七夕の飾りを作って、病棟の受付にかすみ草の花を飾ってもらった。七夕の雰囲気を少しでも感じてもらえたらいいと思う。子どもたちが一緒に短冊を書こうよと言ってくれたので、僕もお願いごとを書くことにしたけれど、ちっとも思いつかなかった。美奈子さんに会いたいという願い事は、もう叶ってしまったから。
20240706
お題:七夕