ときメモGSワンドロ・ワンライ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
color
「お待たせ。買ってきたよ」
紺野と小波が持ってきた大きなカップには、色とりどりのアイスとスプーンが3本刺さっている。
俺は前に紺野に誘われてアイスを食べに来たことを思い出していた。その時はこんなに色鮮やかじゃなくて、まるで真っ白な雪の山のようで、食べても食べても終わりが見えてこなかった。
「紺野、今回は全部バニラにしなかったんだな」
「えっ、何の話ですか?」
小波が興味津々な様子で聞いてくるので、俺はそのまま話を続ける。紺野の表情が若干曇っていくが、見なかったことにする。
「去年か一昨年、紺野に誘われて一緒にここに来たんだ。それで『僕が誘ったから僕が注文するよ』って言うから任せたら10個全部バニラだった」
「こんなに種類のあるお店なのに!?」
「設楽、なんか変わった味とか食べなさそうだったから……」
ぎょっとした顔をする小波に紺野は苦笑いを浮かべていた。周りをよく見て他人を気遣えるのは紺野のいいところだが、必要以上に責任を負いすぎるところがある。あの時も好き嫌いがよくわからない俺に気を遣って、シンプルな味にしたと言っていた。
「そういうときは何がいいか本人に聞けばいいんだ」
「僕、設楽にコミュニケーションのこと言われたくないよ」
「まあまあ。今日は10種類全部違う味ですよ!設楽先輩がこの前お祭りで食べたがってたチョコバナナ味も選びました!」
「別にチョコバナナが好きなわけじゃない」
「ほら、設楽も素直じゃないクセに」
「うるさい」
「もう!設楽先輩も紺野先輩も喧嘩してたらアイス溶けますよ!早く食べましょう!」
小波にスプーンを渡されて、それぞれ山盛りのアイスを崩して食べ進めていく。冷房が効いているとはいえ、暑さのせいかもう既にアイスが柔らかい。ひとつひとつが少しずつ混ざり合って、今自分が何味を食べているかよく分からなくなる。ただただ口の中が甘くて冷たい。
「僕お水もらってくるよ」
「あっ私も行きます。先輩コップ3つ持つの大変だろうから」
「ありがとう。設楽はそこで食べてて」
「ああ」
ふたりが席を立って、水をもらいに行くのを頬杖をつきながら目で追う。
紺野は小波に出会って、良い方向に変わった気がしている。さっきみたいに、素直に人からの手助けを受け取るようになったこととか。
そうやって俺が手を止めている間にも、目の前のアイスは少しずつ溶けていく。前に紺野とアイスを食べた時、味がはっきり分かったのは、今みたいに色鮮やかじゃなくて、同じ味しかなかったからだ。
もう一口掬って食べてみたけれど、やっぱりいま何味を食べているのかは分からなかった。けれど、前みたいに飽きることはなさそうだし、なんとなくそっちのほうがいいと思った。
20240824
お題:アイス
「お待たせ。買ってきたよ」
紺野と小波が持ってきた大きなカップには、色とりどりのアイスとスプーンが3本刺さっている。
俺は前に紺野に誘われてアイスを食べに来たことを思い出していた。その時はこんなに色鮮やかじゃなくて、まるで真っ白な雪の山のようで、食べても食べても終わりが見えてこなかった。
「紺野、今回は全部バニラにしなかったんだな」
「えっ、何の話ですか?」
小波が興味津々な様子で聞いてくるので、俺はそのまま話を続ける。紺野の表情が若干曇っていくが、見なかったことにする。
「去年か一昨年、紺野に誘われて一緒にここに来たんだ。それで『僕が誘ったから僕が注文するよ』って言うから任せたら10個全部バニラだった」
「こんなに種類のあるお店なのに!?」
「設楽、なんか変わった味とか食べなさそうだったから……」
ぎょっとした顔をする小波に紺野は苦笑いを浮かべていた。周りをよく見て他人を気遣えるのは紺野のいいところだが、必要以上に責任を負いすぎるところがある。あの時も好き嫌いがよくわからない俺に気を遣って、シンプルな味にしたと言っていた。
「そういうときは何がいいか本人に聞けばいいんだ」
「僕、設楽にコミュニケーションのこと言われたくないよ」
「まあまあ。今日は10種類全部違う味ですよ!設楽先輩がこの前お祭りで食べたがってたチョコバナナ味も選びました!」
「別にチョコバナナが好きなわけじゃない」
「ほら、設楽も素直じゃないクセに」
「うるさい」
「もう!設楽先輩も紺野先輩も喧嘩してたらアイス溶けますよ!早く食べましょう!」
小波にスプーンを渡されて、それぞれ山盛りのアイスを崩して食べ進めていく。冷房が効いているとはいえ、暑さのせいかもう既にアイスが柔らかい。ひとつひとつが少しずつ混ざり合って、今自分が何味を食べているかよく分からなくなる。ただただ口の中が甘くて冷たい。
「僕お水もらってくるよ」
「あっ私も行きます。先輩コップ3つ持つの大変だろうから」
「ありがとう。設楽はそこで食べてて」
「ああ」
ふたりが席を立って、水をもらいに行くのを頬杖をつきながら目で追う。
紺野は小波に出会って、良い方向に変わった気がしている。さっきみたいに、素直に人からの手助けを受け取るようになったこととか。
そうやって俺が手を止めている間にも、目の前のアイスは少しずつ溶けていく。前に紺野とアイスを食べた時、味がはっきり分かったのは、今みたいに色鮮やかじゃなくて、同じ味しかなかったからだ。
もう一口掬って食べてみたけれど、やっぱりいま何味を食べているのかは分からなかった。けれど、前みたいに飽きることはなさそうだし、なんとなくそっちのほうがいいと思った。
20240824
お題:アイス