ときメモGSワンドロ・ワンライ
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ひみつの恋心
放課後、3年生の下駄箱の前で設楽先輩を見かけた。一緒に帰りませんか、と話しかけようとしたら、先輩は靴箱の前でがちゃがちゃと音を立てながら、何やら手間取っている様子だった。
「先輩、どうしたんですか?」
「ああ、おまえか。下駄箱が開かないんだ」
「ええ?」
「さっきから何回も開けようとしてるのに、全然開かないんだ」
設楽先輩は靴箱を開けようと引き手を手前に引くも、一向に開く気配がなかった。
「ロッカーの調子、悪いんですかね」
「今朝はなんともなかったんだ」
「先輩、このままだったら上靴で帰ることに……?」
「そんなの絶対にいやだ」
設楽先輩が不機嫌そうな顔をしながら何度も繰り返し手前に引いていると、突然ロッカーが開いたと思えば、封筒が何枚かひらひらと飛び出すように落ちてきた。これがあったからロッカーの中がぎゅうぎゅう詰めになって、開かなかったようだった。
私はしゃがんで落ちた封筒たちを拾い集めた。ピンク色のものや無印のもの、花柄のものなど、柄やサイズも様々で、もしかしなくてもこれは設楽先輩宛のラブレターだろう。
「先輩、落ちましたよ」
「ああ」
私がラブレターたちを拾ってる間に設楽先輩は下履に履き替えていて、封筒を手渡すと、差出人を確認することもなく上靴と一緒にぽいぽいと無造作に元の場所に戻して、またロッカーを閉めてしまった。
「いやいや先輩、そしたらまたロッカーが開かなくなります」
「俺は別にいらないからいい」
「手紙、読まないんですか?」
「誰からか分からないし、読んだってしょうがないだろ」
「じゃあこれ、どうするんですか」
「どうもしない。いや、ひとまず生徒会で下駄箱に何かを入れるのを禁止してもらう」
「紺野先輩の仕事を増やそうとしないでください」
「それより一緒に帰るんだろ。行くぞ」
私の言葉を無視して設楽先輩は先に歩き始めたので、その背中を追いかけた。でも私はロッカーに残っている恋心たちのことが、気になってしょうがなかった。
「先輩、ああやって手紙が入ってること、よくあるんですか?」
「まだその話をしてたのか」
歩きながらいくつか他愛もない話をした後、タイミングを見計らってさっきのラブレターの話を持ち出した。
「だってラブレターってすごく心が込められてるじゃないですか。なのにあんな風に扱われたら送った側もショックですよ」
「なんでおまえはそこまで他人の手紙に拘るんだ」
「自分がラブレター送って、ああやって扱われたらショックだから……」
手紙って書くの時間かかるし、便箋と封筒どれにしようかなとか色々悩むし、修正テープとか使いたくないから間違えないようにってすごく神経使って書くと思うんですよね、とペラペラ話を続け、横に立っている設楽先輩の方を見たら、いつの間にか先輩がいなくなっていた。私は歩きながら1人で喋っていたらしい。
「あれっ、先輩?」
振り返ると設楽先輩は立ち止まったまま、真剣な表情でこちらを見ていた。先輩からぴりっとした空気を感じて、どきりとする。何かいけないことを言ってしまったんだろうか。
「……おまえ、誰か好きな相手がいるのか?」
「どうしたんですか、急に」
「ラブレターがどうとか言うからだ。まるで渡す相手がいるみたいじゃないか」
先輩はなぜだか面白くなさそうな顔をしている。好きな人がいると誤解されてもややこしいので、私は慌てて弁解した。
「もし書くとしたら、の話ですよ。別に今はいないです」
「嘘じゃないな?」
「はい」
私は先輩の目を見てしっかり返事すると、納得した様子を見せた先輩は私の方まで歩いてきたので、私もまた帰り道を歩き始めた。
「あの手紙が真剣に書いてあることくらい、そんなの分かってる」
変なぴりっとした空気にしたくなかったから、もうこの話はやめようと思っていたのに、今度は設楽先輩の方からその話題を持ち出してきた。
「だったらどうして読まないんですか?」
「相手も真剣だとしたら、余計に受け取れないんだ」
「どういうことですか」
「俺はその気持ちには応えられないから、読まない。俺には、」
「……えっ、もしかして好きな人がいるって、ことですか……!?」
「……なんでそんなに嬉しそうに聞くんだよ」
私が自分でも分かるくらい目を見開いて言うと、先輩は苦虫を噛み潰したような顔をした。今日の先輩はなんだか不機嫌だったり、ぴりっとしたりしている。
「だって設楽先輩の恋愛話、珍しいなって……」
「…………もしそうだとしても、おまえには絶対話さないからな」
「なんでですか!教えてくださいよ」
「いやだ」
「なんで!」
「い!や!だ!」
設楽先輩の恋愛話が始まるのかと期待したのに、最後までこの繰り返しで、結局私の家に着いても何も教えてくれなかった。
20241013
お題:ラブレター(1時間)
放課後、3年生の下駄箱の前で設楽先輩を見かけた。一緒に帰りませんか、と話しかけようとしたら、先輩は靴箱の前でがちゃがちゃと音を立てながら、何やら手間取っている様子だった。
「先輩、どうしたんですか?」
「ああ、おまえか。下駄箱が開かないんだ」
「ええ?」
「さっきから何回も開けようとしてるのに、全然開かないんだ」
設楽先輩は靴箱を開けようと引き手を手前に引くも、一向に開く気配がなかった。
「ロッカーの調子、悪いんですかね」
「今朝はなんともなかったんだ」
「先輩、このままだったら上靴で帰ることに……?」
「そんなの絶対にいやだ」
設楽先輩が不機嫌そうな顔をしながら何度も繰り返し手前に引いていると、突然ロッカーが開いたと思えば、封筒が何枚かひらひらと飛び出すように落ちてきた。これがあったからロッカーの中がぎゅうぎゅう詰めになって、開かなかったようだった。
私はしゃがんで落ちた封筒たちを拾い集めた。ピンク色のものや無印のもの、花柄のものなど、柄やサイズも様々で、もしかしなくてもこれは設楽先輩宛のラブレターだろう。
「先輩、落ちましたよ」
「ああ」
私がラブレターたちを拾ってる間に設楽先輩は下履に履き替えていて、封筒を手渡すと、差出人を確認することもなく上靴と一緒にぽいぽいと無造作に元の場所に戻して、またロッカーを閉めてしまった。
「いやいや先輩、そしたらまたロッカーが開かなくなります」
「俺は別にいらないからいい」
「手紙、読まないんですか?」
「誰からか分からないし、読んだってしょうがないだろ」
「じゃあこれ、どうするんですか」
「どうもしない。いや、ひとまず生徒会で下駄箱に何かを入れるのを禁止してもらう」
「紺野先輩の仕事を増やそうとしないでください」
「それより一緒に帰るんだろ。行くぞ」
私の言葉を無視して設楽先輩は先に歩き始めたので、その背中を追いかけた。でも私はロッカーに残っている恋心たちのことが、気になってしょうがなかった。
「先輩、ああやって手紙が入ってること、よくあるんですか?」
「まだその話をしてたのか」
歩きながらいくつか他愛もない話をした後、タイミングを見計らってさっきのラブレターの話を持ち出した。
「だってラブレターってすごく心が込められてるじゃないですか。なのにあんな風に扱われたら送った側もショックですよ」
「なんでおまえはそこまで他人の手紙に拘るんだ」
「自分がラブレター送って、ああやって扱われたらショックだから……」
手紙って書くの時間かかるし、便箋と封筒どれにしようかなとか色々悩むし、修正テープとか使いたくないから間違えないようにってすごく神経使って書くと思うんですよね、とペラペラ話を続け、横に立っている設楽先輩の方を見たら、いつの間にか先輩がいなくなっていた。私は歩きながら1人で喋っていたらしい。
「あれっ、先輩?」
振り返ると設楽先輩は立ち止まったまま、真剣な表情でこちらを見ていた。先輩からぴりっとした空気を感じて、どきりとする。何かいけないことを言ってしまったんだろうか。
「……おまえ、誰か好きな相手がいるのか?」
「どうしたんですか、急に」
「ラブレターがどうとか言うからだ。まるで渡す相手がいるみたいじゃないか」
先輩はなぜだか面白くなさそうな顔をしている。好きな人がいると誤解されてもややこしいので、私は慌てて弁解した。
「もし書くとしたら、の話ですよ。別に今はいないです」
「嘘じゃないな?」
「はい」
私は先輩の目を見てしっかり返事すると、納得した様子を見せた先輩は私の方まで歩いてきたので、私もまた帰り道を歩き始めた。
「あの手紙が真剣に書いてあることくらい、そんなの分かってる」
変なぴりっとした空気にしたくなかったから、もうこの話はやめようと思っていたのに、今度は設楽先輩の方からその話題を持ち出してきた。
「だったらどうして読まないんですか?」
「相手も真剣だとしたら、余計に受け取れないんだ」
「どういうことですか」
「俺はその気持ちには応えられないから、読まない。俺には、」
「……えっ、もしかして好きな人がいるって、ことですか……!?」
「……なんでそんなに嬉しそうに聞くんだよ」
私が自分でも分かるくらい目を見開いて言うと、先輩は苦虫を噛み潰したような顔をした。今日の先輩はなんだか不機嫌だったり、ぴりっとしたりしている。
「だって設楽先輩の恋愛話、珍しいなって……」
「…………もしそうだとしても、おまえには絶対話さないからな」
「なんでですか!教えてくださいよ」
「いやだ」
「なんで!」
「い!や!だ!」
設楽先輩の恋愛話が始まるのかと期待したのに、最後までこの繰り返しで、結局私の家に着いても何も教えてくれなかった。
20241013
お題:ラブレター(1時間)
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