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⭐︎アナスタシアでバイトをする先輩社員視点の設バンです
「美奈子」
「設楽先輩!いらっしゃいませ!」
小波さんにレジをお願いして、私は焼き菓子の棚の在庫の補充をしていたら、開店直後に早速お客さんがやってきた。
声のする方に目をやると、そこには男性のお客さんが立っていた。あれは、小波さんの学校の先輩だ。
お客さんがたくさん来る店なので、一人一人のことはあまり覚えてないけれど、彼は以前、予約無しで贈答用の焼き菓子を30個買っていったから慌てて用意したので覚えがあった。若い子にしては買っていく量が多いし、部活か何かで配るにしてはそこそこ値の張る商品だったので、思わず「彼、何者なの……?」と彼女に尋ねたけど「うーん……顔が広いのかも……」というよく分からない返事しか返ってこなかった。もしかして今日も大量に買っていくかも、と在庫の少ない商品がなかったかをあれこれ考え始める。
「なんだよ、そんな珍妙な格好して」
「えっこのかぼちゃの帽子ですか?可愛いと思ったのに……」
「なっ、可愛くないとは言ってないだろ」
ちょっとしょんぼりして話す小波さんに、彼は顔を赤らめて慌ててフォローを入れていた。小波さんは今日イベントにちなんでかぼちゃの形の帽子を被って接客をしてくれている。ちなみにその帽子を選んだのも彼女だ。えっ、なに、高校生たちのやり取りってこんなに可愛いの?
「今週の半ばにハロウィンがあるので、今日と明日はハロウィンイベント中なんです」
「知ってる。入り口にポスターが貼ってあった」
「ケーキも焼き菓子もハロウィン仕様のものがいくつかあるので、良かったらご賞味くださいね」
すかさず宣伝もする小波さんえらい、あとで伝えなくっちゃと心の中で彼女を褒め称える。
ところで彼は一体何を買いに来たんだろう。彼の発言一つで今後の店側の動きも変わってくるので、私はそればかりが気になって、在庫の補充をする手はすっかり止まってしまっていた。
「……Trick or Treat?」
お客さんもほとんどいない静かな店内で、妙に発音の良い英語が店内に流れた。彼、英語も喋れるのか。一体何者なんだ。そして彼女はなんて答えるの、とちらりと彼女の方を見ると、小波さんの目線が微妙に泳いでいる。もしかして、返事に迷っているのか。
「先輩、ごめんなさい!お菓子のプレゼント、小学生までなんです……」
「……は?」
「ハロウィン限定のクッキー、欲しかったんですよね!?ごめんなさい……」
小波さんは申し訳なさそうに彼に謝っていた。彼が美しい英語に乗せて小波さんに伝えたいことは恐らくそれではないし、確かに入り口に貼ってあるハロウィンの合言葉を伝えて素敵なプレゼントをもらおう!のイベントに参加できるのは小学生までだよと開店前に教えたけど、彼女の生真面目さが出まくっている返答があまりにも面白くて、笑いを堪えるのに必死だった。彼、どう見たって小学生には見えないもんね。
青春だねえ、とほんの少し羨ましさも抱えながら、私はふたりにクッキーが入ったカゴを差し出すべく、レジに戻るのだった。
「美奈子」
「設楽先輩!いらっしゃいませ!」
小波さんにレジをお願いして、私は焼き菓子の棚の在庫の補充をしていたら、開店直後に早速お客さんがやってきた。
声のする方に目をやると、そこには男性のお客さんが立っていた。あれは、小波さんの学校の先輩だ。
お客さんがたくさん来る店なので、一人一人のことはあまり覚えてないけれど、彼は以前、予約無しで贈答用の焼き菓子を30個買っていったから慌てて用意したので覚えがあった。若い子にしては買っていく量が多いし、部活か何かで配るにしてはそこそこ値の張る商品だったので、思わず「彼、何者なの……?」と彼女に尋ねたけど「うーん……顔が広いのかも……」というよく分からない返事しか返ってこなかった。もしかして今日も大量に買っていくかも、と在庫の少ない商品がなかったかをあれこれ考え始める。
「なんだよ、そんな珍妙な格好して」
「えっこのかぼちゃの帽子ですか?可愛いと思ったのに……」
「なっ、可愛くないとは言ってないだろ」
ちょっとしょんぼりして話す小波さんに、彼は顔を赤らめて慌ててフォローを入れていた。小波さんは今日イベントにちなんでかぼちゃの形の帽子を被って接客をしてくれている。ちなみにその帽子を選んだのも彼女だ。えっ、なに、高校生たちのやり取りってこんなに可愛いの?
「今週の半ばにハロウィンがあるので、今日と明日はハロウィンイベント中なんです」
「知ってる。入り口にポスターが貼ってあった」
「ケーキも焼き菓子もハロウィン仕様のものがいくつかあるので、良かったらご賞味くださいね」
すかさず宣伝もする小波さんえらい、あとで伝えなくっちゃと心の中で彼女を褒め称える。
ところで彼は一体何を買いに来たんだろう。彼の発言一つで今後の店側の動きも変わってくるので、私はそればかりが気になって、在庫の補充をする手はすっかり止まってしまっていた。
「……Trick or Treat?」
お客さんもほとんどいない静かな店内で、妙に発音の良い英語が店内に流れた。彼、英語も喋れるのか。一体何者なんだ。そして彼女はなんて答えるの、とちらりと彼女の方を見ると、小波さんの目線が微妙に泳いでいる。もしかして、返事に迷っているのか。
「先輩、ごめんなさい!お菓子のプレゼント、小学生までなんです……」
「……は?」
「ハロウィン限定のクッキー、欲しかったんですよね!?ごめんなさい……」
小波さんは申し訳なさそうに彼に謝っていた。彼が美しい英語に乗せて小波さんに伝えたいことは恐らくそれではないし、確かに入り口に貼ってあるハロウィンの合言葉を伝えて素敵なプレゼントをもらおう!のイベントに参加できるのは小学生までだよと開店前に教えたけど、彼女の生真面目さが出まくっている返答があまりにも面白くて、笑いを堪えるのに必死だった。彼、どう見たって小学生には見えないもんね。
青春だねえ、とほんの少し羨ましさも抱えながら、私はふたりにクッキーが入ったカゴを差し出すべく、レジに戻るのだった。