short
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
愛とか恋とか
「コウ、掌貸して」
「は?なんで」
「いいからいいから」
隣に座っていた美奈子は琥一の返事を待つことなく、両手で彼の右手を取った。美奈子の真意が分からず、されるがままの琥一は困惑した。
「?なんだコレ」
「あと目瞑って?」
「メンドクセー……さっきからなんだよ」
「いいから、早く早く」
眉を顰めて訝しむ琥一に対して、美奈子は目を輝かせながら笑みを浮かべていた。何かを企んでいるような子どもっぽい笑い方で、琥一は幼い頃のことを思い出していた。あの頃は日が暮れるまで美奈子とルカと3人で過ごした。鬼ごっこで鬼に捕まらないように全速力で走り回ったり、かくれんぼで息を潜めて見つからないようにどきどきしながら隠れたりして、時間を忘れて遊んだ。
そして目の前にいる美奈子の表情が、子どもの頃に何か楽しいことを思いついたときの幼い美奈子と重なった。
「世話のかかるヤツ」
そもそも美奈子の頼み事とあらば、受け入れる以外の選択肢を琥一は持ち合わせてはいなかった。これがルカだったらスルーしてたに違いないが。
琥一は仕方なさそうに大きく息を吐いたあと、ほんの少し笑みを溢して、目を閉じた。
「じゃあ、私がこれから掌に字を書くから、コウはなんて書いてるか当ててね」
「なんだ、ガキの頃にやったやつか?」
「うん、懐かしいでしょ」
「またなんで急に……」
「やりたくなったからだよ。ふふ、コウ、意外と当てられなかったりして」
「訳分かんねェ字をオマエが書かなきゃ分かるだろ」
「さてどうでしょう?」
そう言ってくすくすと笑いながら、美奈子は細い人差し指で、ゆっくりと大きく琥一の掌をなぞる。普段とは違う触れられ方をして、琥一は変にどぎまぎした。
なぞり始めてすぐ何を書こうとしているか察することができたが、目を細めて愛おしそうに文字を書く美奈子が可愛かったので、最後まで黙って見つめていた。
「なんて書いてるかわかった?」
「……だいすき、だろ」
「正解!簡単だった?」
「なんでわざわざこんなまどろっこしいやり方にしたんだよ」
「たまには伝え方を変えてみようと思って」
「俺はオマエのほうがいい」
琥一は美奈子の右手に自分の指を絡め、柔らかい唇に軽くキスを落とした。美奈子は囁くように「コウ、だいすきだよ」と言ったので、今度は美奈子の後頭部をぐっと自分の方に引き寄せて、愛おしい気持ちが伝わるように深く口付けた。こんなに甘くて幸福な時間があることを、琥一は知らなかった。
「コウも言葉で言ってよ」
「大事なことだから簡単には言えねェよ」
「一回だけ!ね?」
「…………好きだ」
「声が小さい!」
「は!? 一回だけって言ったろ。また今度な」
「そんなこと言わずに!」
「ハァ………オマエが好きだ」
幸せで満たされたような顔で笑う美奈子に、自分より何倍も小さくてかわいいヤツに翻弄されっぱなしで、だけどそれがずっと続くのも悪くねェな、と琥一は思うのだった。
20240901
「コウ、掌貸して」
「は?なんで」
「いいからいいから」
隣に座っていた美奈子は琥一の返事を待つことなく、両手で彼の右手を取った。美奈子の真意が分からず、されるがままの琥一は困惑した。
「?なんだコレ」
「あと目瞑って?」
「メンドクセー……さっきからなんだよ」
「いいから、早く早く」
眉を顰めて訝しむ琥一に対して、美奈子は目を輝かせながら笑みを浮かべていた。何かを企んでいるような子どもっぽい笑い方で、琥一は幼い頃のことを思い出していた。あの頃は日が暮れるまで美奈子とルカと3人で過ごした。鬼ごっこで鬼に捕まらないように全速力で走り回ったり、かくれんぼで息を潜めて見つからないようにどきどきしながら隠れたりして、時間を忘れて遊んだ。
そして目の前にいる美奈子の表情が、子どもの頃に何か楽しいことを思いついたときの幼い美奈子と重なった。
「世話のかかるヤツ」
そもそも美奈子の頼み事とあらば、受け入れる以外の選択肢を琥一は持ち合わせてはいなかった。これがルカだったらスルーしてたに違いないが。
琥一は仕方なさそうに大きく息を吐いたあと、ほんの少し笑みを溢して、目を閉じた。
「じゃあ、私がこれから掌に字を書くから、コウはなんて書いてるか当ててね」
「なんだ、ガキの頃にやったやつか?」
「うん、懐かしいでしょ」
「またなんで急に……」
「やりたくなったからだよ。ふふ、コウ、意外と当てられなかったりして」
「訳分かんねェ字をオマエが書かなきゃ分かるだろ」
「さてどうでしょう?」
そう言ってくすくすと笑いながら、美奈子は細い人差し指で、ゆっくりと大きく琥一の掌をなぞる。普段とは違う触れられ方をして、琥一は変にどぎまぎした。
なぞり始めてすぐ何を書こうとしているか察することができたが、目を細めて愛おしそうに文字を書く美奈子が可愛かったので、最後まで黙って見つめていた。
「なんて書いてるかわかった?」
「……だいすき、だろ」
「正解!簡単だった?」
「なんでわざわざこんなまどろっこしいやり方にしたんだよ」
「たまには伝え方を変えてみようと思って」
「俺はオマエのほうがいい」
琥一は美奈子の右手に自分の指を絡め、柔らかい唇に軽くキスを落とした。美奈子は囁くように「コウ、だいすきだよ」と言ったので、今度は美奈子の後頭部をぐっと自分の方に引き寄せて、愛おしい気持ちが伝わるように深く口付けた。こんなに甘くて幸福な時間があることを、琥一は知らなかった。
「コウも言葉で言ってよ」
「大事なことだから簡単には言えねェよ」
「一回だけ!ね?」
「…………好きだ」
「声が小さい!」
「は!? 一回だけって言ったろ。また今度な」
「そんなこと言わずに!」
「ハァ………オマエが好きだ」
幸せで満たされたような顔で笑う美奈子に、自分より何倍も小さくてかわいいヤツに翻弄されっぱなしで、だけどそれがずっと続くのも悪くねェな、と琥一は思うのだった。
20240901