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15.宇宙のかけら(双眼鏡/おみやげ/ともだち)(設楽) このお話の続きです
ユニバース
「プレゼント?私にですか?」
「ああ。俺も連休に少し遠出したから」
渡したいものがあると言って、俺は昼休みに小波を呼び出した。人目につかないほうがいいと判断したので、校舎裏に来てもらった。
何も知らない彼女は紙袋を受け取ると、まるで宝物を手にしたように目をきらきらと輝かせていた。たっぷりの期待が込められた声で「開けていいですか?」と聞くので「いいよ」と言った。
彼女は紙袋の中に入っていた箱を出して、ラッピングのリボンを解き「何が入ってるんだろう」と声を弾ませながら、ひとつひとつ丁寧に開けていく。
「……イヤリング?」
小波は不思議そうな顔で、箱の中にあるイヤリングと俺の顔を交互に見ていた。深い青色に、ミラー加工のシルバーラインの入った、丸くて柔らかい空気を纏ったデザイン。
「私、イヤリングしたことないですよ」
「知ってる」
使ってるところなんて見たことないけど、それも知っててわざと選んだって言ったら、おまえはなんて言うんだろうな。
「どうして選んでくれたんですか?」
「……まあ、クリスマスパーティーとか、必要な時があるだろ」
本当のことは言えないので、適当な理由をつける。もちろんそんなことに小波は気づくこともなく、手元にあるイヤリングをじっと眺め「綺麗な青ですね……吸い込まれそう……」とうっとりしていた。
「それ、商品名に宇宙って名前がついてた。この前、星の砂をもらったから天体繋がりだし、ちょうどいいなって」
「わあ、このキラキラしたラメも星みたいです!綺麗……」
「……気に入った、か?」
「はい!ありがとうございます!大切にしますね」
にこやかな彼女の微笑みが、俺に安堵と仄暗い影をもたらす。喜んでくれたことは嬉しい。けれど、自分の想いを伝える勇気を持ち合わせていない割に、小波のことを諦める決断もできない自分を、ずるいやつだなと誰かに指差されているような気がして、後ろ暗い気分にもなった。
イヤリングを見つけた時、真っ先に小波の顔が思い浮かんだ。何か理由をつけて形になっているものを贈りたかったし、あわよくば彼女の喜ぶ顔が見たかった。
「今度設楽先輩と出かける時につけていきますね。あっ、せっかくだし、プラネタリウム行きませんか?」
「別にいいよ、暇だし。いつにする?」
それに、もし近い未来にこうして一緒に過ごせなくなる日々が来たとしても、プレゼントは「友達」からもらった物として小波の手元に残る。時々でいいから、俺のことを思い出してほしい、と柄にもなく、彼女の掌にある、小さな宇宙に祈りたくなった。
20240813
作中に出てくるイヤリングはFFさんが実際に設楽先輩をイメージして作られたものです。
ユニバース
「プレゼント?私にですか?」
「ああ。俺も連休に少し遠出したから」
渡したいものがあると言って、俺は昼休みに小波を呼び出した。人目につかないほうがいいと判断したので、校舎裏に来てもらった。
何も知らない彼女は紙袋を受け取ると、まるで宝物を手にしたように目をきらきらと輝かせていた。たっぷりの期待が込められた声で「開けていいですか?」と聞くので「いいよ」と言った。
彼女は紙袋の中に入っていた箱を出して、ラッピングのリボンを解き「何が入ってるんだろう」と声を弾ませながら、ひとつひとつ丁寧に開けていく。
「……イヤリング?」
小波は不思議そうな顔で、箱の中にあるイヤリングと俺の顔を交互に見ていた。深い青色に、ミラー加工のシルバーラインの入った、丸くて柔らかい空気を纏ったデザイン。
「私、イヤリングしたことないですよ」
「知ってる」
使ってるところなんて見たことないけど、それも知っててわざと選んだって言ったら、おまえはなんて言うんだろうな。
「どうして選んでくれたんですか?」
「……まあ、クリスマスパーティーとか、必要な時があるだろ」
本当のことは言えないので、適当な理由をつける。もちろんそんなことに小波は気づくこともなく、手元にあるイヤリングをじっと眺め「綺麗な青ですね……吸い込まれそう……」とうっとりしていた。
「それ、商品名に宇宙って名前がついてた。この前、星の砂をもらったから天体繋がりだし、ちょうどいいなって」
「わあ、このキラキラしたラメも星みたいです!綺麗……」
「……気に入った、か?」
「はい!ありがとうございます!大切にしますね」
にこやかな彼女の微笑みが、俺に安堵と仄暗い影をもたらす。喜んでくれたことは嬉しい。けれど、自分の想いを伝える勇気を持ち合わせていない割に、小波のことを諦める決断もできない自分を、ずるいやつだなと誰かに指差されているような気がして、後ろ暗い気分にもなった。
イヤリングを見つけた時、真っ先に小波の顔が思い浮かんだ。何か理由をつけて形になっているものを贈りたかったし、あわよくば彼女の喜ぶ顔が見たかった。
「今度設楽先輩と出かける時につけていきますね。あっ、せっかくだし、プラネタリウム行きませんか?」
「別にいいよ、暇だし。いつにする?」
それに、もし近い未来にこうして一緒に過ごせなくなる日々が来たとしても、プレゼントは「友達」からもらった物として小波の手元に残る。時々でいいから、俺のことを思い出してほしい、と柄にもなく、彼女の掌にある、小さな宇宙に祈りたくなった。
20240813
作中に出てくるイヤリングはFFさんが実際に設楽先輩をイメージして作られたものです。