無表情な編入生
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~~ さん side ~~
昨日、あんな大変なことがあったから学校行きにくい…
やっぱり休もうかな…
もう朝から何度同じことを思ったか知れないがなんとか踏みとどまり、玄関を出る
すると、赤羽くんが居た。
「今日はチャイム押さなくても
出てきたね。じゃ、行こっか。」
いつもと変わらず迎えに来た赤羽くんに申し訳ないと思いつつ
『今日からはちゃんと行くから
迎えはいいよ。』
と断りを入れるが、
ハン、と見下すように鼻で笑いながら「玄関でうんうん唸ってたのに?」と言われてしまった
外にまで聞こえてたのか…
『家は近所、なんだよね。…あの噂も知ってたってことは…』
「…うん。そーだよ。」
『この先?』
そう言って学校とは逆を指す。
「あー…そうそう。」
とかなりテキトーな返答が返ってくる。
いきなり人の家を聞くのは不躾だったか、とそれ以上聞かなかった
それにしても、赤羽くんがいなかったら私はどうなっていたのだろうか。
そう考えると少し怖くなった。
『いろいろ、ありがとう。
赤羽くんはもう、命の恩人だから…ほんと感謝してます。』
「でも昨日のことあんま覚えてないんデショ?wそんな大層に思わなくていいから。」
八重歯を見せつけながらフッと笑う彼。
そうなのだ。
昨日のことは殺センセーに聞いたことであって自分が覚えていることではない。
『はい、すみません…』と項垂れる私に
「でもこの恩はいつか返してもらわなくちゃね♩」
と変わらぬ表情で言われる。
少しその笑顔に嫌な予感はするものの彼には冗談抜きでなにかせねば。と考えていると、
「ひとまず、赤羽くん禁止で。
カルマでいーよ。さん。」
また考えておく、と言う彼に
そんなことでいいのだろうかと不安になるがとりあえず彼が望むのならばひとまずは聞いておこう。
昨日の出来事もあり気持ちの整理ができたのか、まだぎこちなくも少し目に光が宿ったさん。
そしてそれを優しい表情で見つめるカルマ。
そしてまた、その2人の様子をゲスい顔でメモメモするタコが一匹いることは2人とも知る由はなかった。
ーーーーーーーーー
番外編
~磯貝 side~
最近、E組に来た名無しさん。
実は俺は以前から彼女の存在を知っていた。
前原のナンパ相手が名無しさんみたいな人が理想だという理由で断られたらしく、どんな男だ!と無理矢理一緒に見に行かされたことがある。
そこに居たのは男子ではなかった。
確かに女子にしては高身長で中性的な顔立ち。クールで大人びた印象。
進学校である椚ヶ丘学園の男子はイケメンが少ない。
いつかどこかの女子が嘆いていた。
そんな女子たちからしたら彼女が
"かっこいい人"に入るのも納得だった。
それから、何回か、彼女を見つけることが多くなった。
周りの女子から憧れの目線を向けられながらもそれに見向きもせず背筋をピンと伸ばした彼女。
凛々しさを携えた彼女が美しいとさえ思った。
そんな名無しがE組に来たときは驚いた。
あの凛々しさはなく誰とも目を合わせようとしない。
前原ももうあいつは敵じゃねぇ!と高笑いしながらもどこか心配そうだった。
女子の委員長である片岡と相談し、俺と2人で名無しの家を訪ねよう、と先生に相談した。
すると意外にもカルマが行くことになった。
しばらくしてからカルマはクラスの全員を報告と称して集合させた。
「名無しのことだけど。
最近、父親を亡くしているらしい。
家に行ったらバカデカイ家に1人で、住んでた。
多分、あの態度もそれが関係していると思う。
次、また学校に来たら……まあ、普通に接してやってほしい……」
カルマの意外な態度に驚いたが彼女のここ最近の出来事の大変さを想像し少し皆の気持ちが沈んだようだった。
だが、E組一同思うところは全員同じだ。
「もちろんだよ!な、皆!」
そう俺が皆に声をかけると賛同してくれた。
カルマの方にもう一度目を向けると「サンキュ。」と短く一言放った。
それにしても意外だった。
あのカルマが歯切れが悪いながらも
他人のために周りに頭を下げるなんて。
なにか心境の変化があったのだろうか。
そう考えるとなんだか胸のあたりがザワ、と音を立てる。
この違和感の正体は何なのか。
答えが出る前に委員長としてしっかり名無しを支えようと決心した。
番外編 fin.
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