無表情な編入生
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~カルマ side~
名無しがこのクラスに来てから一週間。あの日以降一度も学校に来ていない名無しを心配してか、磯貝と片岡が家に行くことを殺せんせーに提案、立候補するが、
あのタコが放った言葉は意外なものだった。
「それは是非、そうしてあげてください。ただ、行くのはカルマくん。あなたです。」
方向も一緒ですしね、と。
触手の指を一本立てていつものように笑う殺せんせーに俺は全力で拒否した。
「はぁー?なんで俺が?
それに俺なにも謝ることはしてないよ」
「えぇ、誰も謝りに行きなさいとは言っていませんよ。ですがカルマくん。
気にしているのはカルマくんの方でしょう?」
そう言われ驚いた。
あの日。名無しが来た日。
俺の放った一言は皆が名無しを歓迎しようと歩み寄ったにも関わらず、それに反応もしない彼女に正直腹が立ち、少し逆撫でするようなことだと自覚して言った。
顔を歪ませこちらを見やるかと思われたが無反応な彼女にいつもは感じるはずのない罪悪感を覚える
なんとも違和感の残る罪悪感だった。
それもお見通しなタコに はぁ。と大きく息を吐き俺は大人しくその日の放課後、名無しの家に向かった。
タコに渡された住所を頼りに向かう。
驚いたのは、自分の家からまあまあ近かったこと。それと大豪邸だったこと。
そして近所だからこそわかるこの家の噂…。
呼び鈴を押して出てきたのは
お手伝いさんらしき人だった。
中に通され、待っていると一匹のラブラドールが「遊んで!」といった様子で寄ってくる。
少し緊張していた俺はその無邪気な様子にふと口元を緩ませた。
しばらくすると名無しが俺にのし掛かる犬を見て焦った様子で駆け寄ってきた
『サクラ、ステイ。』
"サクラ"と呼ばれているこの犬。
飼い主の言葉にピシリと反応しつつも尻尾はブンブンと喜んだ様子だ
サクラと目線を合わせるように屈んだ名無しは心なしか表情は柔らかい。
『サクラがごめんなさい。』
今日来たことについてまず「なにしに来たの?」とか冷たく言われることを想像していた俺は少し驚いた。
やはりサクラの前では、笑顔こそないが、表情は教室で見たものより穏やかなように見えた。
「あぁ、大丈夫。」と短く答え「コイツ、ほんと人懐っこいね。」と声をかける。
『……。』無言で首だけで返事をする名無しに
「名無しとは真逆だな、」と出そうになるがなんとか吞み込む。
「ご両親は?」と聞くとピクリと揺れる体。
やはりあの噂は本当なのか…
そこからは教室で見たあの表情だった。
短く『いない。』と答えた名無しにあの時感じた罪悪感が蘇る。
「じゃあ一人暮らし?」
『今日はなにしに?』
遮るように俺の問いも無視して当初の予想通り要件を問われる。
「なんで学校に来ないの」
『なぜ行かないといけないの?』
淡々と真っ直ぐにこちらを見る彼女は本当に行く必要がないとでもいうような表情だった。
「さぁ?」
学校に行く意味なんて自分が教えてほしい。
ただ、俺は自分が感じたあのときの違和感のある罪悪感をはっきりさせたかった。
「俺にあんなこと言われたから学校に来なくなったんじゃないの?」
『…違う。
ただ、あなたの言う通り私は周りが見えていない。し、見る気もない。
それが周りの人を傷つけるなら物理的に距離を取るのが得策と思っただけ。』
目を伏せ淡々と言葉を紡ぐ名無し
あぁ、コイツはアレだ。
"見る気はない"、と言いながらも
"周りを傷つけない"ためになんて…矛盾だ。
やり方はどうあれ名無しなりのE組のための気遣いなのではないか。
本人にその自覚があるのかは別だが…
俺は真っ直ぐ彼女を見つめつつ考えを巡らせているといつの間にか彼女は俺の目を真っ直ぐ見つめ返していた
『赤羽くん。』
急に名前を呼ばれなぜか心臓が跳ねる。
出てきた言葉も意外なものだった。
『言いにくいことを言ってくれてありがとう。』
「………!」
その言葉を聞いたとき、俺の頭は真っ白になったと同時に笑いがこみ上げてきた
「プッ、ハハハ!
名無しさん、そこでお礼言えるんなら大丈夫でしょ。
……来週からは学校来なよ」
そう声をかけるもなにも返事をしない名無し。
とりあえずここまでにしておこう、と帰る旨を伝えると無言のままサクラと一緒に玄関まで出てくる。
あ、ちゃんと見送ってくれるんだ、とまた笑いそうになる
「俺も、ごめん。
噂のこととか、アレは関係なかった。」
『………』
「わかった?噂なんか関係ないんだよ。」
わかったのかそうでないのか、コクリと頷く名無しにまた吹き出しそうになるが我慢しておいた
兎にも角にも、俺は名無しさんという存在を勘違いしていたらしい
帰路についているとどこからともなく殺せんせーが現れる
「カルマくん、お疲れ様でした!
なにか収穫はありましたか?」
こいつ…どこかで待ち伏せしてた?と思いながらも普通に答える
「うーん。とりあえず、大豪邸、お手伝いさんもいて、大型犬も飼ってて、お金持ち。一人暮らし、てことと……」
「と?」
「近所の噂ってやつだけど、この家の人自殺して娘がひとりになった、って聞いたことがあって、多分名無しの家のことで間違いないと思う」
「なるほど…。実は先生、名無しさんのことを少し調べましたが、調べるまでもなかったですね」
「父親がついこの間借金を苦に自殺したこと。
今は一人暮らしをしていること。
先生が調べてわかっているのはこの2つです。」
そこにも違和感を覚える。
このタコが調べてそこまでのものしか出て来ないのか…
まだつつけばなにかありそうだ
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