一学期
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あの球技大会から自分のカルマへの気持ちを自覚したさん。
あれからというもの、
カルマとの登下校を2.3回に1回は断ってしまっていた。
ただ単純に恥ずかしいから。
なのだが、当の本人はそんな単純な話ではいないようだった。
さんからしたら、初恋。
好きだと自覚はしたものの、そこからはどうすれば良いのか全くわからず避けるような行動を取ってしまうのだ。
そして、7/1。
今日から夏服に移行する。
今日も迎えに来たカルマに寝坊した!と嘘をつき先に行ってもらった。
このままではだめだ、と嘘をついたことを反省しつつもあの満員電車に密着して乗るのは勘弁してほしい、と思っていた。
"好き"ってこんなに不自由になるのか、
前は平気だったのに……
少し遅れて教室に着くと……
クラスメイトの全員に入れ墨が入っていた。
戸惑いを隠せないさんに
「あ、おはよーさん!」
とカエデが笑顔で駆け寄ってくる。
「菅谷がみんなに描いたんだよ!」と自分の腕を見せた。
どうも"メヘンディアート"というものらしい。
ふ、とそばを見ると気絶したビッチ先生が落書き?まみれにされていた。
菅谷は名無しはこういうの興味ないだろうなと思いつつみんな描いてるし、と「名無しも描いてやろうか?」と提案する。
すると、予想に反して
『え、…いいの?』とポツリと呟いた。
もちろん、と菅谷が快諾する。
「名無しはタッパあるから脚がキレイに映えるかもな!」と言うと
さんもスパッツ履いてるから大丈夫、とお願いする。
そんなさんの様子を見て、わかりづらいのだが喜んでいるのが他のクラスメイトたちにもわかるようになってきた。
(ちょっとなんか可愛い…?)
普段は男っぽい、ポーカーフェイスな名無し。
その名無しがいつもの無表情なのだが、なんだかウキウキしている姿に男子たちは少し頬を赤らめていた
加えて以前のビッチ先生とのキス事件からかなりさんを意識してしまう男子が増えた
すかさず男子の気持ちを代弁、とばかりに陽菜乃が「可愛いいいい!」とハイテンションで目を輝かせる。
男子たち(特に岡島)はスパッツを履いていることに少し残念、とさえ思っていた
菅谷がもう熱中して足に描いている。
それがくすぐったくて身悶えるさん。
そんな様子をかなり苛々としながら見つめていたのはカルマだった。
それも仕方がない。
自分しか知らないはずだったさんの魅力に他の男子たちも気づいた、というだけで面白くなんかない。
しかも。
足を少し開いて片手をスカート、もう片方の手で口元を押さえふるふると震えるさんの姿は ちょっと、いや。
だいぶエロい。
菅谷は夢中でさんの生足掴んでるし…
すると、ペイントを塗られるのがこそばゆいのか、片目を瞑って涙目になりながら『……っ、ふ、ン』と小さく漏れるさんの吐息。
……ッ!!
オイオイ…!
さすがにコレ以上は、と止めようとした直後、
「できた!」と菅谷は満足気に声を上げた。
『ありがとう。すごくキレイ。』
くすぐったさに解放され安心したと同時にさんも満足そうに自分の足を見つめていた。
今日1日、E組の生徒達はボディペイントをしたまま授業を受けた。
そして、帰り。
カルマは今日は絶対にさんと帰ると心に決めていた。
最近なにかと断られていることに気づいていたのだが、今日は絶対。
一言いわないと気が済まなかったのだ
またもや買い物する、と帰りを断ろうとしたさんだったが、カルマに「ダメ。」と腕を掴まれ引っ張られるように教室を出た
帰りの電車でもなにも言ってこないカルマになんか怒ってる…?と内心焦るさん。
電車を降りてもなお離されない腕に力強さを感じ、密かに彼女の心臓はうるさく音を立てていた。
最寄りの駅に着き、2人で住宅街を歩く。
ここまで会話は全くない
気まずい…と掴まれた腕を見つめていると、やっとカルマが口を開いた
「今日の、無防備すぎでしょ。」
やはり少し怒っている様子だった。
だが心当たりがなく
『ん?』と彼の顔を覗き込む。
「コレのこと。」
そう指をさした先には自分の足。
帰る前にきちんと落としたのだが、ペイントのことか、と理解する。
しかし、さんは核心に迫ることができず押し黙る
「ベタベタと菅谷に触らせて。
みんなの前であんな………」
(あんな声出して、)言いかけて止まる。
周りの男子の反応を思い出しまたもやイラッとする
「周りに男だっているんだから自分が女であることを自覚しなよ」
イライラを隠すことができずさんに当たるような形で気持ちをぶつける
すると、少し申し訳なさそうに
『カルマがなにに怒ってるのか、正直ちゃんとわからない。ごめんなさい。』
と謝るさん。
『でも私、背も高くてどっちかというと男っぽいし、能面みたいだし、…だから周りの男子たちは私のことそんな女子として見てないと思うんだけどな…』
カルマは心配しすぎだよ、とでも言いたそうな彼女に、カルマはポリポリと頭を掻きながらハァ、と大きく息を吐いた
「少なくとも俺はあんたのこと女の子だって認識してるけど?
なにか間違ってる?」
真っ直ぐ偽りのない目で見つめられ
『ま、間違ってません…』とたじろぐさん。
「こーんなすぐ顔赤くなって
女っぽい表情するくせに男扱いされる?
どの口が言ってんの。」
ハン、と鼻で笑い見下ろしながら言われ
『女っぽい表情ってなに…!』とムッとする。
「ん?わかんない?」
そう言われた直後、顎をぐいっと乱暴に持ち上げられさんは一瞬怯むがすぐ優しい手つきで頬を撫でられドキリと心臓が跳ねる
「ま、自分では見れないもんねー☆」
今までとは一変。
カルマは声のトーンを上げ、ぱっと手を離した
『すぐそーゆうことする…!』
さんは悪態をつくが真っ赤な顔で迫力もなにもなかった
「とにかく。
自分が女で、少なくとも俺はちゃーんとあんたのこと女として見てるってこと忘れないようにね☆」
そうニッコリと言い、先を歩くカルマ。
なんなんだ……っ!!
ほんと心臓に悪い…!
カルマの手が大きくて、力強くて。
でも、優しくて。
カルマが触れた頬から熱が広がり、ドキドキと煩く鳴る心臓を静めようと長い息を吐くさん。
それをチラリと見たカルマは
あのままキスでもすればよかったのだろうか、と考える。
その考えに正常な思考じゃなくなってるな…、と内心苦笑いした。
岡島や磯貝、前原もオスの顔でさんを見ていたのを思い出す。
それとともにさんのあのときの声、姿、
触れた頬の熱さを思い出し、
「誰にも渡さねー…」
と小さく呟くカルマだった。
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