一学期
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~さん side~
「エルとアールの発音を間違えたら公開ディープキスの刑よ♡」
そう呟くビッチ先生にブル、と悪寒が走る。
英語は嫌いじゃないが、発音には自信がないな…と冷や汗を流す。
ゴクリ、と喉を鳴らす私に気付いたのか、
「さんもいくら女性とは言え、初キスがアレはキツイよねぇ。」と声をかけてきたのはカルマだった。
『初キスではないよ。』
そう淡々と答えると「「えぇ!?」」とクラスのほぼ全員に顔を向けられる。
「初キスはお父さん、とかだろ!?」焦った様子で岡島くんに問われる。
『違うけど……』となぜか私が悪く思えてきて罰が悪そうな答え方になってしまう。
と、言っても保育園の頃の話。
父ではないが確かに身内とファーストキスをしていた。
「え!誰よ!誰がそんなこと!」と陽菜乃に怒った様子で詰め寄られる。
もはや遅いがすごい後悔に襲われた。
「へぇ♩じゃ、早速、さん。その場でいいから"Really"の発音してみなさい。」
後悔の念がより一層強くなるが当てられたものは仕方がない。
腹を括って唾を飲み込む。
『Really?』
「うん!いいじゃない!綺麗よ!」そう言われ盛大にホッとしたのも束の間、「ご褒美よ♡」と一瞬で間合いに入られキスをされる。
『んんっ!?』
ビッチ先生の柔らかい唇に頭がフワフワした。
いつもの勢いの先生とは全然違う、繊細なキスに頭が痺れたかと思うと ハァ、と息継ぎをした瞬間、
ヌル、と舌が絡められる
『ふ!ンゥ!』
もう、頭が真っ白だった。
『…んはぁ、…ふ…っ』
あ、やばい…
もう立ってられない、
自分でもフルフルと足が震えるのがわかる。
「はーい、そこまでぇ。」
ベリ、と効果音が付きそうな程勢い良くビッチ先生と引き剥がされる。
た、助かった。
後ろから肩を抱くようにカルマが私をビッチ先生から引き剥がしてくれた。
足に力が入らずカルマに寄り掛かる。
ご、ごめん…!と離れようとするが力か入らない。
カルマに痛いほど腕を掴まれる、なぜか怒っている様子だった。
顔を上げると、クラスのほとんどの視線が自分に集中しており途端にボンッ!と顔に熱が集まる。
「ビッチ先生、やりすぎだから。」
カルマが冷たく言い放つ。
クラスメイトのほとんどがその言葉を皮切りにバッと前を向いた
~カルマ side~
初キスではない、と聞いた瞬間俺は頭の中が真っ白になった。
しかも父親ではないと言う。
じゃあ、誰なのか。
誰ともわからない相手に嫉妬心が膨れ上がる。
少し、いや、大分ショックを受け思考停止しているといつの間にかビッチ先生に唇を奪われるさん。
クソッ。
いくらビッチ先生でも触られたくない、とすぐ引き剥がそうとした、のだが。
舌を絡め取られガクガクと足を震わせる彼女を見て ガツン、と後頭部を誰かに殴られたかのような衝撃に襲われる。
加えていつもとは想像のつかない、さんの甘い声。
他の男子たちも顔を赤らめビッチ先生とさんのキスを眺めていた。
はっ!と奪われていた思考を取り戻し、先生とさんを引き剥がす。
他の奴に、安易に触らせてんじゃねーよ、とさんに怒りが湧いてくる。
「ビッチ先生、やりすぎだから。」
お前らも見るなよ、と牽制を兼ねて目線をやると勢いよく全員前を向いた。
その日の帰り。
いつものようにさんと帰路につくが俺の胸中は穏やかではなかった。
さんのファーストキスの相手が気になって仕方がない。
いつものようにさんの家まで送り『また明日。』と家の中に入ろうとする彼女に「ねぇ、」と声をかける。
不思議そうに首を傾げるさんになんて言えば良いかわからず戸惑っていると、
『サクラの散歩、一緒に行く?』と彼女から提案があった。
近くの公園のベンチに腰掛け、
至って変わらぬ様子で『どうしたの?』と問われる。
さんなりに気を遣ってくれたのはわかる。
わかるが…
あまりにも普通なさんになぜかモヤモヤした気持ちが募る。
俺はこんなにめんどくさい奴なのか、と自分に驚く。
めんどくさいのはさん相手だからか。
好きかもしれない、と自覚してからさんのことばかりで乱されている。
それが悔しくて。
さっきのキスのことも、ぶつけようはない癖に悔しい。
「さんの初キスの相手、誰なの?」
ついに聞いた。
なんとなく彼女のほうを向けなかったが、返事が返ってこないので促すように彼女を見る。
しばらくの沈黙のあと、
『お兄ちゃんみたいな人、かな。』
と少し寂しそうに答えた。
さんに兄が居たのか、と考える。
みたいな人、ということは違うのだろう。
それよりも、このさんの寂しいような、遠くを見て思い描くだれかも分からない人物にモヤモヤと黒い感情が募る
『私からしたら父親と初キスしたのと同じ感覚だよ。それに、保育園とかの話だから。実質ノーカンみたいなモンだよ』と言われ少しホッとするも、黒い感情は払拭されないままだ
だが、これ以上は答えてくれないだろう、ということはわかった。
公園を出て、さんの家に向かっている途中意外な人物に遭遇した。
浅野学秀。
そういえば、さんと浅野は恋人、という噂もあった。
「やぁ、さん。サクラも元気そうだな。」
やたら親しげに、俺の存在はないかのようにさんに話しかける浅野。
チラリ、と俺の方を見て『あぁ、…うん…』と歯切れ悪く答えるさんにまた収まりかけた感情が湧いてくる
「彼女とは昔からの縁なんだ。」と俺に説明する浅野に苛立ちながら「ふぅん。」と興味なさげに答える。
ワン!とサクラがさんに飛びつくと、彼女は『サクラお腹空かせてるから、もう行くね!』と家の方に向かって行った。
俺も浅野と一緒に居るのは居心地が悪い。
早々に退散しようとすると、
浅野に「さんをよろしくな。赤羽カルマ。」と言われた。
お前によろしくされたくねぇよ…!
と心の中で毒を吐きながらニッコリと「もちろん。」と答えた。
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