第1章 幼少期編
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「お前すげぇな!」
少し先にあまりにも見覚えのある、ただ記憶にあるその姿よりとても若い男たちが立っていた。
オルニスは距離が離れているのを良い事に小さく舌打ちをして忌々しそうに名前を呟いた。
「赤髪のシャンクス、ベン・ベックマン……」
腕の中にいる小蘭はその言葉に小さな目を大きく見開かせた。名前だけはオルニスから聞いていたが、この世界に来て日が浅い彼女は実物など見たことがない。
隠すように抱かれているのでその視界には入らないが、小蘭の存在はあちらに気づかれているだろう。
オルニスはギリッと歯を食いしばって1歩後ろに下がり、小蘭もマルコの腕の中で身体を服を強ばらせた。
「おいおい、何でそんなに警戒してるんだよ」
「……警戒するに決まってるだろ。赤髪海賊団は新世界を航海する海賊……なぜこんな偏狭な地、東の海にいる?」
「へぇ、おれたちの事知ってんだ」
すっとぼけた顔でシャンクスは言うが自身が有名な事は知っているので恐らくオルニスを試しているのかもしれない。
性格の悪い男だ、とオルニスは内心でまた舌打ちをした。
「……生憎手配書を見るのが趣味なんでね」
「だっはっはっ!そうか!……ただおれ達もあんたに聞きたい事がある」
素知らぬ顔で煙草を吸っているベックマンは止めるような素振りを見せない。
一歩下がったオルニスに数歩近づいたシャンクスは口角をあげた。
「なんでお前ともあろうものがここにいる?
『不死鳥マルコ』」
「!?」
まるでそうだと確信しているかのように赤髪は目を細めて笑い、ベックマンはタバコの煙を吐き出してその肩に乗せているライフルをオルニスに向けた。
逃がさない、と二人に宣告されたオルニスは仮に発砲された時に小蘭に当たらない様に腕に力を込めて抱え込む。
「……何言ってんだ?……確か不死鳥マルコっていったら白ひげ海賊団の隊長さんだろ?それに俺はオルニスという名前だ。そんな凄い人と一緒にしたらその不死鳥マルコに失礼だ」
「おいおい、何言ってるんだってのはこっちのセリフだろ?何で船から離れてこんなところで赤ん坊と一緒にいるんだよ、マルコ」
「……あんた耳ついてのか?だから俺はオルニスっていってるだろ?その不死鳥マルコとやらじゃねぇ」
人の話を全く聞かないシャンクスと無言でライフルを向ける素知らぬ顔のベックマンにオルニスは内心冷や汗を垂らしながら……けれど隙を見せずに冷静に答える。
だがどうしてそうだと思ったのか分からない。誰もオルニスをマルコだなんて呼んでいないし、その名前を唯一知っている小蘭はまだ言葉を話せない。声で気づかれたとも考えられるが、話しかけてきた時既に「気づかれていた」のだろう。
シャンクスは目を細めてとても楽しそうに顎を触りながら突きつけてきた。
「お前は不死鳥マルコだ。
その立ち方、
さっきのごろつきに対しての戦い方、
その纏う空気、
その気配。
どこを見てもマルコなんだよ。白ひげ海賊団1番隊隊長の、な」
「……っ…あんたストーカーかよ」
「まさか!おれァ海賊だぜ」
白髭と赤髪はシャンクスが昔いた船の時代からの付き合いだ。ゴール・D・ロジャーの船員だったシャンクと白髭の船員マルコは見習い時代の昔からの顔見知りだ。
シャンクスの言う事は正しく、それを指摘できるぐらい何度も戦っているので見抜かれるのは時間の問題だったのかもしれないが、まさか危惧したその日に見つかって指摘されるとは思いもしなかった。
オルニスが1歩後ろに下がると、それと同じくシャンクス達も前へと1歩進む。
「……ぁう」
「…心配するな、小蘭。お前は俺が守る」
腕の中で不安そうにしている幼子をギュッと抱きしめてフードの下から安心させるように微笑む。
それを見て意外そうにシャンクスは声を上げた。
「へぇ。ロリコンになったのかマルコ」
「アホか!だから俺はオルニスだって言ってんだろ!?」
「まぁどんな趣味があろうとお前はお前だ。マルコ」
「聞いてねェ……!」
かみ合っていない会話にベン・ベックマンは小さくため息を吐いてオルニスに向けていたライフルをおろし、肩に担ぎ直した。
シャンクスは何も言わないで恐らく銃口を向けていたのもベックマンの独断だったのだろう。
「……それで、まァ俺に何の用だ、赤髪海賊団、船長・副船長」
誤魔化しきれない、けれど否定も肯定もしないオルニスはその行動の真意を聞くために今度は自ら問いかけた。
逃げる事も出来ないので仕方が無い。
「いやな、俺の小さな友達が最近通っている家があって、そこにいつ見ても顔を隠す『ふしんしゃ』と女の子が2人で住んでいるって言ってたからどんな奴か見たくなったのさ」
「ッルフィか……!」
マルコ相手に『ふしんしゃ』と面と向かって言うのはルフィしかおらず、その他の村人は顔を隠したマルコを札付きと理解してあまり関わらないようにしている。だからそんな事を知っているということはルフィに直接聞いたとしか思えない。赤髪もその話を聞いてその『ふしんしゃ』が賞金首だと理解し、もしもを気にして害がないかを確認しに来たのだろう。
「あんのクソガキ……ッ!」
ルフィは特に悪い事をした気はないだろうし、実際していない。全てオルニス達側の問題だ。
ガープではなかった事に安堵はすれど、それでもよりにもよって赤髪に言うなんて、と忌々しそうに吐き捨てると何の前触れもなくオルニスは方向転換して全速力で走り出した。
「あっ、おい……!」
走り去っていくオルニスの後ろ姿を見て残された2人は呼び止めることもせずにぽかんと驚きで立ち尽くす。
数秒後、ベックマンは小さくため息を吐いて横にいる船長に顔を向けた。
「……逃げられたな。……どうする?お頭」
「そりゃあ決まってんだろ?」
答えは分かりきっていたがベックマンは一応と聞いてみると、シャンクスはまるでこれから悪戯をしでかす様な子供の様な笑みを浮かべていた。
逃げだしたフードの男を哀れに思いながらもシャンクスがそうだと決めたのならそれに従うつもりのベックマンは止めることはしない。
「……あいつらも哀れだな」
「何か言ったか?」
「……いや?」
お互いにすっとぼけながら、オルニスが消えていった進行方向を見る。
「よっし、みんなに知らせるぞ。
大がかりな鬼ごっこと行こうじゃねェか!」
シャンクスはこれから行われる狩りとも呼べる鬼ごっこを思い浮かべながら笑顔で懐から電伝虫を出した。