プロローグ
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真っ白い世界。
「こんにちは」
―お前…―
「マルコさんに会えてよかった」
―……わざわざ会いに来てくれたのかよい―
今度は自らマルコを探し、会いに来た。両親の力で『飛んだ』小蘭は魂のまま何もない空間に漂っている彼を探し辿り着いた。
前回別れ際に色々と言っていたが、子供の戯言として受け取っていたマルコは動きやすい服装でリュックを背負って現れた小蘭に驚いて小さく目を見開いている。
―ところでいったいお前は何者なんだ?―
「私はカードキャプター。……見習いだけど魔術師だと思ってくれて良いよ」
―……魔術師…?―
「そう。簡単に説明するとこのカード達に力を借りて魔法を放つの」
―魔法ねぇ…―
「そして私はその魔法で貴方の望みを叶えるお手伝いをしにきた」
―…………―
少女の言葉にぐしゃりとマルコの表情が歪む。マルコの性格上と立場故に会ってまもない人にこうも優しくして貰えるわけがなかった。
都合が良すぎるのだ。まさか、そんな、という言葉が頭をよぎる。
―……意味が分からないよい。―
「意味が分からないって……何が?」
―お前と俺は赤の他人。それなのに何で俺の望みとやらを手伝う事になるんだよい……―
「あのね、この世に偶然はないの、あるのは必然だけ」
―は?―
「貴方と夢の中で出会ったことには意味がある。そこで『縁』もできた。だから私は貴方に会いに来た」
―…余計に意味が分からなくなってきた…―
少女の言葉にマルコは顔を顰める。
マルコの手を取って小蘭は穏やかに笑った。
「私のお母さんの同級生の知り合いにある偉大な魔女がいるの。『この世に偶然なんてない、あるのは必然だけ』それが彼女の口癖らしいわ。だから貴方と出会えたのはただの偶然じゃない。決められたことであって、私はそのレールの上を歩いた。ただそれだけの話」
―……お嬢ちゃん、いったいいくつなんだよい…―
「え?私は10歳!」
―じゅっ……!?―
話の内容はどうであれあまりの口の達者ようにマルコは彼女の年齢を聞くが、その幼さに絶句した。十の子供は精神的にもう少し幼かった気がすると小蘭を見つめながらマルコは思う。
小蘭の両親は揃って頭は良いがどこか天然だった。いつか悪い人間達に騙されないかと周囲がドキドキしているのを娘だけが知っている。
彼女はその天然をあまり受け継がなかったが地頭の良さは受け継ぎ、さらに周りには桃夜、雪兎(ユエ)、友世、クロウ・リードの生まれ変わりであるエリオルという逸材達がいるので成長は早く、少し人懐っこいのはケロべロスがいたからだ。
―……で、俺の望みを叶えるだなんてどうするんだよい。俺はもう死んでるぞ―
「……それについても考えたんだけど、過去に飛ぶにはあまりにも魔力が足りないから、申し訳ないですけど……平行世界じゃダメですか?」
―は?……え?―
「本当は貴方と共に過去に飛んで貴方の望む未来に繋げたいんだけど、過去に飛ぶのと未来を叶えるっていう二つの壁を壊すには私の魔力では不可能なの……」
マルコはもう既に死人だ。死人であるマルコ自身の時を戻し、世界の時を戻し、世界を渡る。厳密に言えば二つではなく三つだが、その三つの壁を壊すには到底小蘭の力は足りないのだ。生まれ育った世界から出るのも両親の力を借りて漸く出来た事だった。両親の残りの魔力はタイムで使い果たしている。
「私が自分の力でせいぜい飛べるのは平行世界。貴方を連れて貴方のいた世界とほぼ一緒の世界に飛ぶ。そしてそこで未来を変える為に頑張る。……勿論平行世界だからその世界にもマルコさんという人は存在するから貴方の望む未来に繋がっても、……その未来に貴方はいない」
―………っ―
「平行世界で貴方の知る未来を変えて、喜ぶのはその世界のマルコさん。……貴方はいくら自分自身とはいえその輪に入ることは……難しいわ」
時が過ぎ去った未来とマルコ自身を過去に戻すより、平行世界ならば渡る時に世界とその命に干渉する必用がないので小蘭の力だけでも渡る事が出来る。
期待させてしまってごめんなさいと泣きそうな顔で小蘭は謝った。期待をさせておいて結果はぬか喜び。謝っても謝りきれないだろう。
マルコはギュッと両手を握りしめると呟いた。
―…良い、よい―
「…え?」
―どうせ俺は死者だ…本来ならこんな夢のような話すらできるはずもなかった。……その平行世界が臨む未来に繋がって俺がいなくても……もう一度、親父たちの笑顔がみれるなら俺はそれで良いよい―
その輪に自分が入れなくても、その世界の自身と敬愛する親父、大切な兄弟達が笑ってくれればそれでいい。マルコは目の前の夢の様な話を信じて手を伸ばした。
奇跡の様な話に手を。
「……貴方は優しい人ですね」
―海賊に、優しいだんてお前変わってるよい……―
「え、マルコさん海賊だったんですか?」
―……あ、え、怖い、かよい……?―
「全然!」
一般人に脅えられる事は生前よくあった。いくら口が達者でも相手はただの十の子供、脅えられると思って焦るマルコだが飛び出してきたのはそれを否定する言葉。
小蘭は満面の笑みで笑った。
「だってマルコさん、優しい目をしてるもん!!」
―……は!?―
かつては白ひげ海賊団1番隊隊長不死鳥マルコとして恐れられてきた自分がまさか優しい目をしてるだなんて言うので驚き、マルコは目を見開いた。
「いくら海賊でも優しい目をしてる人は全然怖くない!!これでも人を見る目はある方なんだから、私は。」
そう言って笑う小蘭にマルコはため息を吐く。叶わない、と心から思った。
そして少女は言った。
「それでは、平行世界に行きましょう」
ペンダントを握り彼女は呟く。
「『星の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ、契約の元小蘭が命じる、レリーズ』」
小蘭の足元に魔方陣が浮かび上がり、マルコは驚いて後ずさった。いつの間にか身の丈以上もある杖が現れ、彼女が握っていた。
―それ、なんだよい―
「私の魔法の杖です」
杖を頭上で一回転させるて床に杖の下部分をつけると二人の足元の魔法陣から光が溢れる。
マルコは慌てるように数歩下がりながら足元付近を見つめるが小蘭が安心させようと微笑む。
「改めまして、私はカードキャプター……見習い魔術師の小蘭です。
これからよろしくお願いします。」
そういってぺこりと頭を下げて、マルコの返答を聞かないまま彼女は言った。
「行きましょう、マルコさん。
貴方の知る、そして貴方の知らない世界へ」