彼女は歩きだした。
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一時間早くルカとアスマが集合場所に到着してから半時間が過ぎた頃、シカマルやいの、チョウジが早めに集合したので少し早めにテストが開始された。
テストの内容は「鈴を三つ持っている上忍であるアスマから時間内に一人一つずつ鈴を奪う事」。但し「時間内にとれなかったらアカデミーに逆戻り」となる。上忍相手から鈴を取る事も難しいが、それと同時に三人しか忍になれない事が決定されている。
そう説明を受けた四人は顔を歪め、特にいのは「数があわない」と激怒していた。
そしてテスト開始後、ルカの目の前にアスマが立った。
「…………」
「…………」
「…………ルカ」
「…な、なんですか?」
「向かってこねぇと鈴とれねぇぞ?」
四者共にアスマの号令で動いたが、一番近くに移動して足を止めたルカをアスマは追った様だ。
ルカはアスマを動かずに観察してアスマを困惑させた。警戒はしているものの、持っているクナイは握りしめたままだ。
アスマは困った様に後頭部をかきながらため息を吐いてルカに助言をする。
「ほら、お前も頑張れ。早くしねぇと時間もねぇし、他の三人にとられたらお前1人落ちるぞ」
時間は有限だとアスマは言うが、ルカはそっと首を振った。
おかしい。説明を受けてから直ぐに違和感を覚えたのでルカは近くで足を止め、ジッと観察をしていた。
「先生、それは……挑発……ですか?」
「あ?」
「……上忍相手に、個人プレーで鈴をとれるわけがない」
「!」
ルカのまるで確信したかのような言葉にアスマは驚いた顔を見せながらも内心笑った。
「鈴を取れば良い」とは言ったが「鈴を取った物は合格」とは言っていない。
だてにイエスとノーがはっきりしない国で生きて死んではいない。
「という事なので、逃げさせていただきます……!」
「逃がすかよ……っ!?」
「答え」に気がついたルカを野放しにしておくわけにはいかない、とアスマは捕まえようと一歩踏み出したが、突然向かってきた「ものたち」に視界を遮られ足止めをくらうことになった。
その出来た隙にルカは持てる速さを全て使ってその場から逃げ出した。
「はは、……なんて子だ」
ルカの逃走を手助けした「子達」を捲いたアスマが驚きながら、けれど楽しそうに呟いたのをルカは知らない。
水橋ルカはアスマが思っていた以上の実力者だった。
「助かったよ2人とも」
アスマから遠く離れた場所まで走ったルカは木の枝に座りながら横にいる「友達」に話しかけた。
人間の友達は今だハヤテとゲンマしかいないが「人外」なら昔からいる。
『いや、友達が困ってたなら助けるのが筋ってもんだ!』
『その通りよ~』
「ありがとう。秋、小春」
感謝の言葉を述べたルカの横で鷹たちはニヒルな笑みを見せた。
先程ルカの逃走を手助けしたのは秋と小春と名前をつけた人語を話す事が出来る大きな鷹たちだ。テストが始まって直ぐにまだアスマに捕捉されていなかった時に口寄せで呼んで近くに待機をしてもらっていた。アスマを襲ったのはこの二匹の子供達で、小さな鷹の集団だった。
ちなみに秋が雄で小春が雌の立派な夫婦で、頼もしい父親とのんびりしている母親はルカにとって最高の友人たちだ。
ルカの口寄せ動物たちの中出唯一の空を飛べる者達なので命名は全て空関係で、秋は「秋日和」から、小春は「小春日和」からとっている。
『それでどうするの~?』
『なんなら今度は俺達があの熊を襲ってくるぞ?』
「それはダメ。これはチームプレーを問われるテストだから私達だけで鈴をとっても何の意味もない」
『なら子供達に残りの坊や達を探してくるよう頼もうかしら~?』
小春がにっこり笑いながらルカの腕に頭をスリ寄せ、秋もやる気満々で翼で自分の胸を叩いた。二匹は鷹だが人間に近いほど表情はしっかりとある。
その言葉にルカは嬉しくなって微笑んだが、直ぐにそっと首を振った。
「気持ちは嬉しいけど、やっぱり私の力で挑みたいの」
『そうね~。頑張ってね~』
『なら困った事があればいつでも呼べよ、じゃあな!』
二匹はルカの気持ちを察してくれたのか、応援していると声にだしながら煙と共に帰っていった。
木の上で一人になったルカは、先程までの騒がしさから一瞬で静かになったこの空間にほんの少しの寂しさを覚えながらも神経を研ぎ澄ませた。
この森にいるはずの同じ班の気配を探す為に。
「見つけた」
ゲンマとハヤテが頑張れと言ってくれた。
ルカはまだ班には馴染めておらず他のメンバーに恐怖心を持っているけれど、応援してくれる人がいる限り頑張らないといけない。
ざわつく胸のうちを静かにおさめ、捕捉した一つの気配をそっと見つめた。