彼女は立ち向かう。
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「シカマル&ルカ、本選出場おめでとー!!」
予選が終わってから翌々日、第10班は馴染みの焼肉屋に来ていた。いのの提案により祝賀会を開催される事となり、五人は集まった。
全員が本戦に出られた訳では無いが、戦闘を得意とするメンバーが少ない中で半分もいるのだからそれなりに良い成績だろう。
肉を焼きながら皆は思い思いに口を開く。皆笑顔で誇らしげなのは信頼している仲間や部下が結果を出した事を我が事の様に喜んでいるに他ならない。
「ルカさ、修行するんだよね」
「うん。剣術と体術を主に頑張ろうかと思ってる」
剣術と言った瞬間にアスマを除く三人が彼女を見る。予選会場で見せたあの剣術はそれなりに他メンバーを驚かせた。
追い込まれた状況ではあったが、まるで舞うように相手に立ち向かった姿が三人の脳裏に焼き付いている。
「そうそう、剣術ってあんたいつから始めたの!?」
「え、あー……下忍になってすぐ、かな。……友達がね、剣の使い手でね。……色々あって弟子入りして、今に至るの」
そう言って苦笑いを見せるルカに、お茶を飲んだシカマルがめんどくさそうに投げかけた。
「……はー……よくやるよな、お前も」
めんどくさい、が口癖のシカマルにとってはそうもやる気を出して取り組むことが信じられないのだ。
「逆にシカマルはもっとルカの事見習いなさいよ!」
「めんどくせぇ……」
幼馴染みであるがゆえに彼の事をよく知るいのはしかめっ面を見せたシカマルに苦言を呈した。
口ではどうこう言おうともやれば出来る幼馴染みであることをいのは良く知っている。そう、やれば出来るのだが、如何せんやる気がない。低燃費で生きている、それがシカマルという男だ。だから知っていてもやきもきする事が多い。
「一本取られたな、シカマル」
「うっせーよ、アスマ」
子供達を見守っていたアスマがカラカラと笑いながら言うと、ムスッと顔を顰めるシカマルが口を尖らせながら投げやりに言葉を返す。
そんなシカマルがおかしくて、他の4人は笑った。
「ボク、ルカの傀儡……九官鳥、だっけ。すっごくびっくりしたなぁ」
「そうそう。傀儡ってくーちゃんだけじゃなかったの!?」
「まさか。くーちゃんはあくまで種類としたら『人形』だよ。……傀儡は九官鳥みたいなのを指すんだ」
あまり馴染みない傀儡に皆は興味津々で、ルカは少しだけタジタジになりながらも説明をする。興味を持ってくれる事は嬉しいことなので、その顔には笑みが浮かんでいた。
それを横目で見ていたシカマルがアスマに話しかけた。
「……アスマは知ってたのか?」
「いや、知らなかった。傀儡を操れるっていう事は知ってたからまさかとは思ってたけど、実際傀儡を操ってるのを見た時はびっくりしたさ」
いのやチョウジ、シカマルは初めて傀儡を見た。
アスマは初めてではないが、それでも傀儡師が多い砂の忍と戦わない限りそうそう見る事はないので純粋に驚いている。まさか身近に、それも下忍があんなにも巧みに操るとは思ってもいなかったから。
「……シカマル君はどうするの?修行」
「……あー、親父が少しだけ見てくれるらしい。……あとは、アスマだな」
同じ予選突破者として、班の仲間として気になるものは気になる。誰々かな、そう思っていた修行相手通りの名前をシカマルは出した。
「そうなんだ。……シカマル君の試合、楽しみだなぁ」
「……なんでだよ」
ふんわり、まるで花が咲いたかのような笑みを浮かべながらルカはシカマルを見つめる。表情がいつもより豊かだなぁ、そんな場違いなことをシカマルは思い、そして皆も少女を見つめた。
シカマルは何を言い出すのか、と訝しげでもある。
「シカマル君って頭脳戦が得意でしょ?その原理っていうか、相手を追い詰めているかっこいところが見たくて」
そう言ってニッコリ笑うルカを見て他の4人は動揺して食べる手を止めた。特に他意はないのだろう、純粋な笑みを浮かべながら楽しみだと呟いている。
「ルカ」
「なんですか、アスマ先生」
「お前それ天然か?」
「……え?」
アスマが難しそうな顔でそう聞くが彼女は意味が分からずに首を傾げる。そうして他の3人を見るといのとチョウジは飽きれており、シカマルは俯きながら少し顔を赤くしておりため息を吐いていた。
こういう所が良い意味で恐ろしいのだと皆は思っている。
「ルカってそういうところあるわよね」
「確かに。さらってシカマルのこと褒める事言って終わらせるからびっくりするよ」
「……え?どういう事?」
純粋に好意を向けてもらえるということがとてもむず痒くて居心地が悪く、シカマルは体を揺らしながら座り直す。いのやチョウジは幼なじみに同情の目を向け、同時に自分達より強くて博識な彼女の好意を向けられた彼に羨ましげだ。
ルカは訳が分からずにアスマを見るが、アスマも少し苦笑いを見せているだけで何も言ってくれない。
「ねぇねぇ、そんなにシカマルってかっこいい?」
いのが楽しそうに笑った。
「いの!」
「こんなにやる気ない姿をしてるのに?」
恋愛話が大好きないのが楽しそうに身を乗り出して向かい側に座るルカに言い、シカマルが少し慌てて咎めた。こういう時は碌なことにならないことをシカマルは知っているので止めても無駄であると分かっていても声をかけずにはいられない。――勿論効果はなかった。
「うん、かっこいいよ?やる気を胸に前を向いたシカマル君はとってもかっこいいし、普段の姿も。
勿論アスマ先生もかっこいいし、皆も会ったよね?あの時のゲンマさんもかっこいい」
「…え?」
やっぱりなぁ、そう皆は思いながら四人はルカを見て、シカマルにまた同情の目を向ける。
「だって皆、考え方が大人で尊敬するし、シカマル君も年齢以上に落ち着いて見習いたいって思ってる」
「……はぁ、やっぱそういう事よね」
いのは期待外れの返答をされ、肩を落として食べるのを再開した。チョウジはもう食べ始めているし、アスマも苦笑いだ。
恋や愛といったものの欠片はなく、告白してもいないのに振られた気持ちになるのは何故なのか。他意がないと分かってはいたものの、シカマルは何だかやるせなくなって今日何度目分からないため息を吐いて肩を落とした。
「でもさ……アスマ先生がシカマルとルカ、二人の修行に付き合うって大変じゃない?」
「確かに。シカマルは半分をおじさんに修行つけてもらえるとはいえ、それでも大変だよね」
班から二人も決勝に出場するのは誇らしいが、現実問題上忍師は一人なので忙しいだろう。いのはそうポツリと言うとチョウジは同意するかのように頷いた。勿論シカマルには身近にシカクという立派な忍がいるが、それでも基本的には担当上忍が修行を見るのがセオリーだ。
既にどうするかを決めているのでルカはその事を伝える為に口を開いた。
「……私、師匠いるから大丈夫だよ」
ルカがゲンマとハヤテを思いうかべながらそう言うとシカマルがすかさず言葉を返す。
「その師匠とやらはこの前の試験管か?」
「!?」
思わぬ返事に、どうして知っているのかとルカとアスマはシカマルを見る。
シカマルは面倒くさそうに、けれど楽しそうに口角を上げていた。
「……お前予選で『月光流』って言ってたじゃねぇか」
「……え、うん。そうだけど…」
「それで予選の試験官は月光ハヤテだって名乗ってただろ」
話についていけないいのとチョウジは「あぁ……!」とその顔を思い浮かべながら頷く。
驚いているルカと確信をつくシカマルを前に、アスマは感心したように顎髭を触りながら笑った。本当に鋭くて油断のならない子供だと。そして確かに「奈良シカク」の息子だとも。
「確かにあの試験官は月光ハヤテだが、あいつが剣を使うなんてお前知らないだろ」
アスマが最もなことを言う。
実際この中でハヤテが剣を持って戦っているところを見たことがあるのはアスマか弟子のルカだけだろう。父親のシカク情報かとも思ったがわざわざハヤテの話なんかしないだろうし、ハヤテは木の葉の中でも上位の剣の使い手でも最近下忍になったシカマルは知るわけがない。
「手のマメ」
「………え?」
「俺が予選で下の降りた時、あの試験官の手の平が見えたんだよ。……あのマメは剣を使う人間ができるような痕だな」
「……一瞬だったし、それが剣なんて何で分かったの?」
「あぁ。……あとは、剣を使うお前にもあるだろ」
シカマルは突然横にいたルカの手首を握る。驚いて反射的に手を振りほどこうとしたがシカマルはすかさずルカの中指の関節まである服の下ろした。マメがつぶれた痕が沢山ある手のひらが皆の前に晒された。
「少し前にこいつの手のひらがちらっと見えてたんだよ。剣を使ってるお前の手の平とあの試験管の手の平が似ていたから……そういうことだろ」
「…!……シカマル君凄いね」
その推理に思わずルカは思わず感嘆な声を上げる。他のメンバーもまた勿論驚いている。
前もってルカの手の平を見ていただけで、そこまで気がつく事ができるのはそう簡単な事ではない。ましてや訓練を積んだ忍ならまだしも、まだまだ幼くて経験も浅い下忍だ。それをやってのけたシカマルを見てアスマは笑う。
「流石、シカマルだな」
アスマは笑って言った。本当に「流石」だ、と。
「……でも、まぁ私は大丈夫だよ」
それから話を進める為に自らルカが本題に戻す。
「確かにハヤテさんももう一人も試験管だけど、ずっと忙しいわけでもないと思うよ。でももし忙しかったりしても自主練したり、まだ頼れる人いるし、それこそアスマ先生にお世話になりたいって思ってるんだけど…。……その、アスマ先生、修行つえてもらえませんか?」
「良いに決まってるだろ…その為の担当上忍だ。シカマルとルカ、両方世話するぐらい軽いもんさ」
アスマはニッと笑うとシカマルとルカの頭をガシガシと撫でた。いやそうに手を振り払おうとするシカマルと、照れくさそうに微笑むルカは対象的だが、どちらも「らしい」反応の仕方でアスマの笑みは深くなり、心底楽しいと言わんばかりに声をあげて笑った。
それを見ていたいのが元気よく手を上げる。
「はいはーい!私も出来る事あったら何でもするからね!」
「僕も!」
仲間外れは嫌だと言ういのに、チョウジもニコニコと笑いながら続いた。
二人にとって本選に出場するシカマルとルカは第10班の誇りのようなものだ。同期であり、ライバルであり、友人であり、仲間である二人は、予選敗退をしたいのやチョウジの「目標」だ。追いつきたい背中であり、守りたい背中でもある。だからこそ
少しでも出来る事があれば何でもしたいと、思っている。
その思いを受け取ったルカは胸が温かくなっていくことに照れくさくなり、視線を漂わせた後にそっといのを見つめた。
「じゃあ二人とも、お願いしてもいいかな…?」
「勿論よ、なんでも言ってよね!」
にっこり笑って胸を拳で軽く叩くいのの姿はなんて頼もしいのだろうか。シカマルは鼻を鳴らし、ルカはまた笑みを浮べた。
けれど先程から浮べている笑みではなく、どこか影を背負う笑みで、皆はその異変を敏感に嗅ぎ取った。
「じゃあさ、
近いうちに皆であつまれるかな?…話したいことがあるの。」
「話……?なんの話?」
「……真面目な話」
本戦や修行の話ではない事など明白だ。
アスマは心当たりがあるのかハッと我に返り、ルカを見た。
「お前、まさか……」
「はい。皆に聞いてほしいことがあるんです。……勇気がでました」
そう言って笑うルカを見てアスマは顔を歪め、3人も何かを感じ取ったのか黙り込んだ。