彼女は立ち向かう。
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「楠木スザクが戦闘不能につき、勝者―水橋ルカ!」
最終戦はルカの勝利で終わり、そしてたった今彼女が本選への出場が決定した。
場内は一瞬だけ沈黙に包まれたが、一部から感嘆の声があがった。
「っすっげぇー!!」
「なんだよ今の技!!」
キバとナルトが一番に歓声をあげたが、その声にかきけされたとはいえ、所々で話し声があがった。
ルカは勝利した事にホッと胸をなで下ろすと剣を鞘に戻し、腕で抱え込む。
「…ありがとうございました」
一歩下がると地面に転がるスザクに一礼し、スザクはそのまま医療班に医務室へと連れて行かれた。
「ルカ、やったじゃない!凄かった!」
「うん…!ありがとう……ッ」
観覧席からいのが手を振ってきたのでルカも微笑みながら手を振り返す。
巻物に剣を戻しポーチに入れた。
「お前いつの間に剣とか使えるようになったんだよ」
「…な、…内緒…!」
仲間に褒められ嬉しそうに笑っているルカを見てハヤテも微笑む。
愛弟子が剣で勝ったのも嬉しいし、自らが教えた技で最後を決めたのも嬉しい。
これはゲンマに自慢しなければいけない、と少々の弟子馬鹿っぷりを発揮した。
「てかルカってそんなに強かったのかよ!?」
ルカの実力を知らなかった犬塚キバが叫ぶ。
知っているのは十班だけなのだから疑問に思うのは仕方が無い事だろう。
皆がキバとルカを見た。
「そりゃアカデミーでは成績トップだったけど、水遁とか傀儡とか剣術とか、いつの間に出来るようになったんだよ」
犬塚キバにとったらルカはいつもクマの人形を抱える気弱な女の子としか印象にない。
成績優秀で女子からの妬みはすごく、その空気から男子からも敬遠されていた子。
ちなみにルカ#がクマを友達と言いクラス中に笑われた事件で、彼は笑わなかったメンバーに入る。
忍犬である赤丸を家族と思っている彼は、その気持ちが痛い程に分かったからだ。
「…え、あ…その…」
ルカはギュッと服を掴んで俯く。
相手は同期とはいえ、あまり話したことがないので人見知りがでた。
と言っても一番答えにくい質問だからでもあるが。
「…べつにいいじゃない、そんな事」
そこに助け舟を出したのはやはりいの達十班だ。
「そうそう。ルカはルカだしね~」
「ま、そういうこった。…ルカが嫌がってるんだ。……あまり聞くなよ」
十班はルカの事情を知らない。過去は勿論、家の事も、何も知らない。
けれど四人が仲間であるということに変わりがないので仲間(ルカ)が嫌がることは許さない。
だがそこ蚊帳の外で口を開いた者がいた。
「…どこでいつ術を覚えたなどどうでもいい」
鼻を鳴らしてそう言ったネジに皆の注目がいく。
観覧席へと戻ろうと階段を上っていたルカはピタリと足を止めた。
「要はその女がどこまで強いか、だろう?」
「…っ先輩…!」
嫌な予感がしたため咎めるように声を張り上げるが、ネジは気にせず口を開く。
横にいたテンテンが咎めるようにネジの肩を掴むが本人は全く気にせずに言葉を続けた。
「楠木スザクも運が良かったんじゃないじゃないのか?」
「…それどういう意味だよ」
スザクと同じ班の男子が不機嫌をあらわにした。
横にいた残りの一人がその男子を落ち着かせようと慌てる。
これがもしネジたちに近い場所にいたら一触即発だっただろう。
「少しは休息できたとはいえ、水橋ルカが第二試験でチャクラを大量に消費した後でよかった、と言ってるんだ」
「は?」
「日向先輩…!」
先ほどの戦いを見てルカに少し興味を持っていた人たちはネジを見て、慌てているルカを見る。明らかにルカが何かを隠しているのが分かった。
しかも彼女はチラチラと十班を見ているので、それに関係しているのだろう。
いのは青筋をたてて腕を組み、その姿を見てルカは顔面蒼白になった。
「どういう事?」
「第二試験でチャクラを消費していない人間なんていないだろ」
スザクと同じ班のメンバーが声をあげ、周りもそれに同意した。
皆、第二試験でそれなりに疲れての予選だった。条件は同じだ。
「あぁ、そうだな。…だがな、そいつはおそらくこの中の誰よりも危ない状況を「たった一人」で抜けだしたんだ」
「…ッ先輩、約束が違います!」
「ふん、俺が約束をしたのは『お前の手の内を明かさない』だけだ。それは守っているだろう?」
ルカを嘲笑う様にネジはそう吐き捨てる。
確かに約束は守っているので間違ってはいないが、だからといって此処で全てを話されるのは本当にマズい。
主に仲間から怒られる、という意味で。
「屁理屈…!」
「事実を言ったまでだ」
「………っ……」
ルカは歯を食いしばり、ネジを睨む。
ネジは気にせず続けた。
「そいつはな、死の森で自分の班のメンバーと逸れた後、たった一人で手を組んだ三チーム…計九名と戦い、勝利したんだ」
下忍も上忍も試験官も火影も、これには流石に驚いた。
下忍が(しかも彼女に至ってはルーキーで)、三対一どころかその三倍の九対一で戦い、勝利したことが信じられなかった。
隠していた事が露見され、ルカは両手を握りしめる。
「その女の傀儡がボロボロだったのだってそいつがその戦いで使用したからであり、しかも忍術だってその時全力で出していた。それであの戦いだ…楠木スザクが弱いのか、水橋ルカが強いのか…はたしてどっちなんだろうな」
「……っ」
視線が痛くなり少女は俯いた。別に疾しいことなど何もしていないが、気まずいことこの上ない。
「っていうか、別にルカが強いとかどうでもいいのよ。…それよりも…」
いのが俯きながらポツリと呟いた。
本当に彼女達十班にとってはどうでもいいのだ、気になることはただ一つなのだから。
直ぐに顔を上げてルカを指さした。
「あんた嘘ついてたわね!」
「…っ…ご、ごめんいのちゃん…!心配かけさせたくなかったから…!」
「馬鹿ッ本当に馬鹿!嘘つかれる方がよっぽど辛い!」
「うぅ…ごめんなさい、みんな…」
とうとう黙っていたことがバレてしまった。
いのの怒鳴り声とシカマル達の冷たい視線が思っていた以上に辛いが、辛いのは嘘をつかれていた側のいの達もそうだ。
ネジに対する怨みより、皆に怒られたことのほうが辛くてしゅんとなり縮こまる。
「…だからあいつ何本も巻物持ってたのかよ…」
「どういうことだ?」
飽きれかえったように小声でため息を吐いたシカマルだが、その声は横にいたアスマには聞こえていた。
不思議そうにアスマはシカマルを見下ろし、横にいた紅達もシカマルを見る。紅班はそもそも十班達とは鉢合わせしていないので、状況は全く分かっていない。
「…第二試験が始まって直ぐに俺達三人とルカが逸れちまって。始まって直ぐに逸れたけど各自塔に向かう事に決めていたから、まぁ途中合流できたんだけど…。あいつ三本巻物持ってたんだ。俺達の巻物は『地の巻物』で、あいつが持ってたのは『天の巻物』二本に『地の巻物』一本」
「…その戦いで手に入れたってわけか。」
「みたいだね。…本人は相打ちした班からとってきたって言ってたけど」
「…………」
呆れた素振りを見せるシカマルとチョウジの説明にアスマもため息を吐いた。
そのため息にルカはまた肩をビクつかせて縮こまった。
七班は自分達が少しでも欲しいと口にした巻物が、彼女自身の実力によって手に入った物だと知って若干だが顔を青くする。まぐれだと言ったけど、本当はまぐれじゃなかったから。
「…ご、ごめんなさい」
「あとで説教ね」
「えぇ!?」
いのの厳しい声にルカは情けない声をあげたが、誰も助け船を出さない。
ルカが悪いのは明白だから誰も止める気にもならない。
「お前が悪い」
「ルカが悪いから何も言えないね」
「しかもお前チョウジが「危ないことしてないか」って聞いて「何も起こってない」って言ったよな」
「…うっ…」
「はい、説教決定!」
「……………」
班のメンバーから指摘されぐうの音もでない。
階段という中途半端な所にいたため、もう観念したのか歩き出した。
歩いている最中も視線を感じるがこの際もどうにもならないので視線を合わせずとぼとぼとと歩く。
「ってかお前らルカの強さとか…そういう事はスルーかよ!!」
キバがシカマル達にそう突っ込み、ネジも同じくそう思っていたのかただでさえ眉間に寄せていた皺がより深くなる。
シカマル達十班は皆で顔を見合わせると笑った。
「だって今更だし」
何よりも少女の側にいる三人はそれが当たりまえだと言わんばかりにそう声を合わせたので皆はぽかんと口を開いて少女を見た。
アスマはただただ楽しそうに皆を眺めていた。