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彼女は立ち向かう。

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「まずは『第二の試験』通過おめでとう!」


担当上忍や試験管、火影の前にずらりと並んだ第二試験を突破したもの達に対して、アンコが高らかに言った。

木の葉の中で突破したのはルーキーではカカシ班、アスマ班、紅班、先輩達ではガイ班、そしてルーキー達が誰とも関わっていない知らない班、そしてカブトの班。

あとは他国の忍達、そこにはあの雲隠れのソルイ達もいるのでしっかりと突破した様だ。


アンコから火影へと代わり、そして語られたのは中忍試験の真の目的。

他の合格者たちはしっかりと聞いている様だが、ルカはどちらかというとアンコや上忍たちに意識が向いていた。


「(…よかった…。みたらし特上、無事だったんだ)」


あの時危頑張ったかいがあったとルカは心から思った。例えあの術が活躍していなかったとしても、余計なお世話だったとしても、それでも襲われていたであろうアンコの無事を確認できたのは少女にとっては大きな収穫だった。

それからちらりと並んでいる、恐らくは担当上忍たち…に目を向けた。何気なく顔ぶれをみてどこの班の担当上忍かを確認する。

アスマやいのに知られたら真面目にしろ、と怒られそうだ。

それから直ぐに見覚えのある彼が火影達と受験者の間に姿を見せた。


「皆さん初めまして、ハヤテです。えー…皆さんには『第三の試験』の前にやってもらいたいことがあるんですね…」
「(ハヤテさん!)」


先ほど奇跡的にゲンマとも顔を合わせたルカは嬉しくてテンションが上がった。

周りをちらり見るとハヤテの顔色の悪さや癖のような咳に動揺しているのが分かり、それを見て彼の実力を知るルカは内心胸を張った。

ハヤテはルカにとって師匠であり、人を見かけで判断してはいけないのを体現しているかのような人なのだから。


「それは本選の出場を懸けた『第三の試験』の予選です」


それに受験者達が口々と文句の念を込めた疑問を彼に投げかける。

ハヤテは勿論のことながら説明を始めた。


何でも、第一・第二の試験で人数が残りすぎてしまったらしく、中忍試験規制にのっとて予選を行い『第三の試験』の進出者を減らす必要があるとのこと。

死の森へと入る前にいた忍達の数と比べて今は凄く少ないが、それでも人数が残りすぎているとなると、予定としてはどれだけ減る計算だったのだろうか。


「というわけで…体調の優れない方…これまでの説明で止めたくなった方は今すぐ申し出て下さい。これからすぐに予選が始まりますので…」


一応は辞退の選択が出来る様だが、そこで手を上げたのは五人。


「あのー…僕はやめときます。」


一人はルカ達が警戒している薬師カブト。


「私も、ちょっと…」


一人は木の葉の忍、ルカよりも年上らしき少女―風壱なぎさ。

そして残りの三人は……――。


「すみません、手を挫いたので辞退します」
「私は足を挫きました」
「僕はお腹が痛いです」


ソルイ、リノーラ、ファイだった。

彼らの言う辞退理由が子供のようなので(特にファイ)、その場にどよめきが起きた。

前に並んでいた担当上忍が慌てて声を上げる。


「おい!?」
「いやぁ、先生。俺達無理ですー」
「ソルイ!」

「もう先生、私たちのこと理解してるでしょー?」
「リノーラ!」

「先生、諦めが肝心だって。ほらよく言うでしょ?目には目を、歯には歯を。…僕たちには諦めを…ってね。」
「ファイ!!」


「あぁぁぁぁ…」と喚きながら崩れ落ちる担当上忍を周りにいる上忍達は憐みの目で見る。

里と里の威厳をかけた試験で、そうも自由に辞退をされてしまうのはあまりにも不憫だ。

そして部下をしっかりと導く事が出来ていないという冷たい目線を浴びせる者達までいる始末だ。


「先生、俺達、パフェ食べたいです」
「…!…そうか…ったく、分かった。もういいよ…」


諦めたのか肩を落とし、ソルイ達に近づく担当上忍。

一応だがハヤテは顔を引き攣らせながら確認した。


「…えっと、彼らは、辞退で…いいですか?」
「…あ、はい、もういいです…」
「わ、分かりました」


それに頷き、辞退した人間に指示をだし、退出するように言う。

去っていく彼らだが、手を挫いたはずのソルイは身ぶり手ぶりで横にいるファイに話しかけているし、足を挫いたはずのリノーラは軽やかに歩いているし、ソルイと話しているファイもお腹が痛いはずなのに顔色も良く、話に花を咲かせている。誰がどう見ても辞退理由が嘘だと分かった。

その光景を見てやはり何ともいえない表情をしているのが彼らと知り合いなルカとシカマル。


「…あー…あいつらって、馬鹿…なのか…?」
「………な、なんとも言えない…」


二人して彼らを信じていいものなのか、と再確認してしまう出来事だった。



それから予選――個人での実戦形式での対戦であることが明かされ、受験者達は皆緊張しながらも詳しいルールを聞く。

あんこの合図で電光掲示板が現れてそこに対戦者二名が発表されるらしい。


第一回戦は赤胴ヨロイとうちはサスケ。

皆は予選の邪魔にならないように二階席に上がり、各自チームで固まって散らばった。

広場で戦う二人を見てルカはジッとサスケを見つめる。


「…………いやな気配…」
「…どうした?」


静かに呟いたルカだが、横にいたシカマルには聞こえていたらしく声をかけてきた。


「…なんか、いやな臭いがする」
「…におい?」
「…うん。…あの時と一緒」
「……………」


口にはだしていないが、死の森でのサスケの豹変に関係している。

あの時みたいに黒い臭いがする。

まるで、そう――死臭だ。


「…気を付けていた方がいいよ」
「…何に?」
「うちはくん。…いつか、何かが起きる」
「…………そうか」


この時の二人はまだ知らない。

間もなくして、うちはサスケが力を求めて里を抜ける事を。

これはある意味絶対的なる予言だったということに後で気が付くことになる。



第一回戦はうちはサスケの勝利だった。



それから続く予選。


ザク・アブミと油女シノはシノの勝利。

剣ミスミとカンクロウはカンクロウの勝利。

春野サクラと山中いのは引き分け。

テンテンとテマリはテマリの勝利。

奈良シカマルとキン・ツチはシカマルの勝利。

夏目ウミと太刀風カイトは引き分け。

うずまきナルトと犬塚キバはナルトの勝利。

山守すばると玉盛コマリは山守すばるの勝利。

日向ヒナタと日向ネジはネジの勝利。

我愛羅とロック・リーは我愛羅の勝利。

秋道チョウジとドス・キヌタはドス・キヌタの勝利。






そうやって進む試合。

そしてこの時がやってきた。




最終試合、水橋ルカVS楠木スザク――彼女の出番がやってきた。


「…わたし…」


戦闘経験が豊富な彼女だが、こんなにも多い人の中で戦うのは初めてだ。

戦う時はいつも一人だったから。

それにあまり力を人に見せたくない。だから少しだけ……憂鬱だ。


ルカ、大丈夫?」


ルカの顔色が悪いのでチョウジは心配そうにしている。勿論いのもシカマルも同じ思いだ。

臆病な子である事を十班のメンバーは誰よりも理解しているので、仲間として嫌がっている事を強要したくはない。


「いけるか?」


アスマがルカの両肩に手を置いて安心させるかのように優しく声をかける。

そっと見上げたルカとアスマは目があう。


「………なんとか、頑張ります」


深呼吸をして気を落ち着かせ、そう呟いたルカに広場から声が掛かった。

勿論予選の対戦相手だ。


「おい!はやく降りてこい!」
「……はい」


少し苛立っているのか言葉に棘がありルカは身体をビクつかせたが、持っていたくーちゃんを握りしめて心を鎮める。

そしていのに大切な友達を渡した。


「いのちゃん、くーちゃんお願い。」
「…え?…いいの?」


大切な友を預かる事が出来る。その事に関して誇らしい反面、心配だ。


「うん。『この子には力を借りないから』」
「…そう。分かった。ちゃんと預かっておく」
「お願いします」


これを置いていくということは、すなわち彼女がクマの人形を巨大化させて戦わないということ。

この人形が友達とはいえ、彼女の戦力であることにかわりがないので少しだけ心配になる。



そして広場へと行き、ハヤテの前に二人が向かい合って立った。


「お前、弱そうじゃん」
「…………あなたは、強いの?」
「さぁな。…ただ少なくともお前より強いと思うぜ」


スザクは鼻で笑う。

気の弱そうなルカを見てそう言うのも無理がないが、彼は少々自意識過剰なところがあるらしい。


「…そう」


ルカは同年代よりも小柄で身長も低く童顔、スザクには恐らく実年齢より下に見られているだろう。

彼自身も実際彼女より数歳年上だ。

だが彼女もまた「見た目で判断してはいけない」分類に入る。


「それでは、試合開始!」


ハヤテの声で両者がほぼ同時に動いた。

スザクは先手必勝と言わんばかりにルカへクナイを投げ、ルカは相手へ攻撃することもなく後ろへと下がった。



それから数分、ルカは相手に攻撃することなく防御を続けることになる。

避けることに精一杯なのかと思うが、この中で彼女の実力を知る第十班とハヤテにはこの行動が不思議でしかたがなかった。

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