彼女は立ち向かう。
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その後、音忍は逃げるように姿を消してしまったが誰も追う事はなかった。
シカマルはいのとルカにリーを頼むと指示をだし、自らはチョウジと共にナルトの方へ向かった。
ルカは馬鹿なナルトの叫び声と行動を無視し、黙々といのと共にリーの治療にあたった。
ネジとテンテンも木から降りてきてリーたちに近寄ってくる。
「ごめんね、ありがとう」
「手慣れているな」
「……はい、…こういうのは慣れて、ますので…」
ルカの手際の良さにネジは感心したように呟くが、手元を見つめてくるので少々緊張してしまう。
その時ナルトの驚く声が聞こえた。
「サクラちゃん、その髪!」
「あ!こ、これね……イメチェンよイメチェン!私は 長い方が好きなんだけどホラ…こんな森じゃ動き回るのに長いと邪魔なのよね!」
音忍に襲われて一人戦っていた時に切った髪の毛、サクラは心配をかけさせまいととっさに嘘をついた。
その気持ちは分からなくないのでルカは人知れず少しだけ微笑んだ。
その後はナルトのとんちんかんな発言、リーに対するテンテンの行動、サクラのリーに対する発言、色々あったがルカは自分は蚊帳の外だと言わんばかりに黙ってその光景を見ていた。
「ちょっと サクラー!こっち!髪、整えてあげるから!」
ネジの班が姿を消したあと、いのはニッコリ笑いながら手招きしてサクラを呼ぶ。
その間ルカはシカマル達と共に固まって話していた。
「お前が無事で良かったよ」
「…うん、心配かけてごめん」
こんな危険な森で単独行動は危険なのは周知の事実、本来なら一人はぐれた時点で覚悟を決めなければいけない。
心配をかけさせていた自覚はあるのでルカは誤魔化す事無く謝った。
いつも通りのルカの姿に大きな怪我もないと見て、ホッとシカマルは小さく息を吐いた。
「ルカ、迷子だったのか?だせぇってばよ!」
「…………」
「……めんどくせー」
だが、そんな二人の姿を壊したのは彼の一言だった。
ナルトの馬鹿にしたようなものの言いにルカは不愉快そうに顔を顰め、シカマルはその空気を感じ取り小さく口癖を呟いた。
確かに間違ってはいない。迷子であったのも、はぐれた時の決まり事を決めた張本人が一人はぐれたという事実も、否定出来ない事実だった。
ナルトにとったらこれが通常運転で深い意味をこめずに軽々しくいった言葉だが、ルカにとったらそうでもない。
ルカはナルトが苦手を通り越して嫌いだった。
その考えもなしにするその発言や、後先考えずに突っ走るその行動――それを微笑ましいと言う人もいるかもしれないが、ルカにとったら不快でしかなかった。
元々騒がしくて落ち着きもなく、思い立ったら即行動なナルトに対して人見知りが激しく、慎重で周りの状況を判断してから動くルカとはまったくの正反対だ。
その行動の末の結果がどうであれ、相成れないものはどう頑張っても相成れない。
正反対故に嫌いになるのも無理はなかった。
だからいくら冗談だったとしてもそう言われたらたまったもんじゃない。
けれどそれに対する文句を言わないのはルカが大人だからか、それとも溜めこむ性格だからなのか。それは誰にも分からない。
「お前今までどうしてたんだ?」
「先輩達と一緒に来たの?」
それからルカに対する起爆剤であるナルトには退場してもらい、シカマルとチョウジ、ルカだけの空間を作った――主にシカマルの手腕だが。
「あれから皆を探しまわったの。…その時同じ班の子を探すテンテンさん達に会って、一人でいる私を可哀そうに思ったのか一緒に行動することになってね。…それから色々あって、シカマル君達の気配を察知して慌ててここにきたの」
「……色々?」
「……うん。色々」
ルカは勿論嘘をついた。
ネジたちはルカが可哀そうだから一緒に行動したわけじゃなく、ルカの戦いぶりを見て気に入ったから行動していた。
けれどそんな事言ったら心配されるのでとっさに嘘をついた。
そもそもネジの性格からして戦場でいくら自里の仲間であろうとも哀れみで共に行動するわけがないのだが、ネジとほぼ初対面であったシカマル達にはそれを見抜く事はできない。
「ルカ、危ない事してないよね?」
「え?うん」
「本当に?」
「うん。大丈夫。何も起こってないよ」
口が裂けても言えない。
禁術ばりの秘技を使って半日程寝込んでいたなんて口が裂けても言えない。
だから話題を変えた。
「それより皆が無事で本当に良かったよ。…間に合ってよかった。」
ホッと息を吐いて微笑むルカにチョウジもニッコリ笑い、シカマルは気まずそうに頭を掻く。
「ごめんな、ルカ」
「…え、なにが…?」
「あんなに口酸っぱく『秘技』に関して注意うけてたのに使っちまった」
あれほど秘技に関して軽々しく使うなと言われていたのに咄嗟に使ってしまったのだ。
それが気まずくて眼も合わせられない。
自身の技である影を操る能力では叶わないと思ったのも理由の一つだ。
「…でもシカマル君が頑張ってくれたおかげで、私は間に合ったよ。」
「…………」
「それによく、合図に気が付いてくれたよね…」
「……草結び、だろ?」
「え、なになに、どういうこと?」
シカマルとルカはお互い目を合わせながら勝ち気に微笑む。お互いよくやった、と言わんばかりだ。
勿論状況としては茅の外にいたチョウジには一人状況が分からない。
ルカが少し微笑みながら話す。
「さっきシカマル君が『炎天』を使ったよね」
「うん」
「…あれね、私が合図を送ったんだ」
「え、そうなの?」
ぽかん、とチョウジは口を開く。
シカマルのピンチに動くことができなかったが、しっかりとその目で見ていた。
特に合図らしきものは見えていなかったとその時の事を思い出しながらチョウジは首を傾げる。
「うん。…ちょうど私がここについたとき、シカマル君が相手にクナイをつきつけられてた時だったの」
「…………」
「茂みから相手を攻撃しようとも思ったけど、…近くにシカマル君がいて、巻き込まないこともないし、それに…上手くこっちの攻撃が当たっても、シカマル君が倒されたら意味がない…。だから合図の為、相手の死角にあるシカマル君の足首に草結びをしたの」
「…草結びをできんのは、俺達四人だけ。そのうちその状況で草結びをできるのはルカただ一人。…相手の隙を作らねぇと、って思って咄嗟に思いついたのが炎天だったわけ」
咄嗟の判断を間違えれば身を滅ぼすかもしれないがが、間違わなければ良い方向へと駒を進ませる事が出来る。シカマルは後者だった。
そのコンビネーションにチョウジは感嘆の声をあげた。
「すごい…ボクなら、むりだなぁ……」
草結びが使えるメンバーが分かっていても、隠れるように草結びが足首に巻かれてシカマルの様に動く事が出来るのか。
その問いにチョウジは答えられない。きっと思いつかないだろうし、パニックを起こすか、諦めてしまうだろう。
その現実を受け止めながらチョウジが寂しそうに笑うと、少し怒ったようにルカは眉を寄せる。
「無理じゃないよ。…チョウジ君だっていざって時に頼りになるもん」
「…うん。それなら嬉しいなぁ」
ルカが真剣な顔でそう言うので少しだけ気を取り直したのか、チョウジは微笑み、成り行きを見守っていたシカマルも少しだけ笑みを溢した。
************
「じゃあ私達はいくね」
「うん。…ありがとう、皆」
それから直ぐにいの達十班とナルト達七班は分かれることとなった。
いくら同じ里で共同戦線を張っても、今は敵同士なのだ。
「はーあ。これから巻物手に入れるのかぁ……」
敵と一戦交えて体力チャクラ共に消費しているこの状況で敵チームから巻物を奪わないといけない。
その現実にいのはげんなりとぼやき、7班も同じ状況なのでため息を吐いた。
「…あの」
そんないのにルカは気まずそうに小さな声で話しかける。
何だろうと皆の注目を浴びたが思い切って声をあげた。
「私、巻物持ってる…!」
「…え!?」
いのたち十班メンバーは慌ててルカを中心に囲む。
ルカ#はポシェットから巻物を数個だしてきた。
「ほら」
「!…あんたこれどうしたの!?」
「…ここにくる途中、相打ちになった班があってね、その人たちからとってきたの」
「…まじかよ…」
驚きで開いた口が塞がらない。まさかの状況にシカマルは顔を引き攣らせている。
勿論ルカが言った事は嘘で、本当はネジ達に興味をもたれるきっかけとなった戦いで手に入れたのだ。
十班の持つ巻物は「地の巻物」、とってきた二本が「天の巻物」で一本が「地の巻物」だった。
「やったー!これであとは塔に向かうだけじゃない!」
いのは嬉しくなって両手を上げて喜んだ。
チョウジとシカマルも嬉しそうに笑い、ルカも心の中で頑張ったかいがあったと頬を緩める。
「ね、ねぇ…」
その時蚊帳の外状態だった七班メンバーのサクラがルカに話しかけてきた。
一瞬だけしまった、と思ったのはチョウジ以外の三人だ。
「そのさ、余ってる天の巻物、私達に譲ってくれないかな…。私達も地の巻物なの…」
「そうだってばよ、どうせ捨てるなら俺達にくれってばよ!」
少しだけ気まずそうに笑うサクラにナルトも頷く。
疲労困憊のこの状況で奪いに行くのは自殺行為に等しい、それは誰もが分かっている事だ。
唯一音忍とほぼ対峙しなかったルカですらその前に何戦も行っているので疲れている。
サスケは何も言わない。同意しているのか反意しているのかも分からない。
ルカが口を開く前にいのがルカの前に立って口を開いた。
「なんで?」
「…え?」
「これを手に入れてくれたのはルカで、私たちは何もしていない。…けれど言わせてもらうわ。人から貰った巻物で、合格したいの?」
ただ真っ直ぐにそう言ったいのの発言にサクラはムッと顔を歪める。
ルカが言いたかった言葉なので、きっといのはルカが言いたいのか分かったので庇ったのだろう。
言っている言葉は正論だが、些か挑発気味だ。
「っ私が聞いてるのは水橋さんによ!」
その挑発に乗ったのか、怒りを見せたサクラの言葉に皆の注目がルカにいく。
全員の注目を浴びて気まずい思いをするが、ルカは目を閉じてゆっくりと首を振った。
「ごめんなさい」
それは明らかに譲る気はないという意思の表れだった。
「なんで……!」
「いらねぇのに譲ってくれねぇなんてケチだってばよ!」
そもそも十班は既に揃っているのだ、残りの二本は必要ないし、捨てるだけなら譲って欲しい。
複数個をルカが持っている以上、試験を突破するチームはその分数が少なくなるし、後に巻物を探しに行くであろう七班が突破出来る確率も減る。
騒ぎだすサスケを除く第七班にルカを歪ませた。
「…ケチとかそんな問題じゃないと思う」
「どこがよ!」
「………そもそもこれは試験で、私達は敵同士だよ…?そりゃあ今回は音忍あいてにシカマル君達は貴方達に加勢したけど、だからといってこれを譲ってあげる程、私は貴方達と仲良くないし、味方になった覚えもない」
「そんな酷い言い方しなくても……!」
ルカの突き放すその言葉にサクラは顔を歪め、ナルトは「サクラちゃんを悲しませるな」なんて怒ってるが果たして本当にルカだけが酷いのか。
勿論こうなることは目に見えていたので他班から離れてから巻物の事を口にすべきだったという反省点は勿論ルカにはある。
ルカにそのつもりは無かったかもしれないが、この状況ではこれ見よがしに自慢したと言われても弁解は出来ないだろう。
だが、それでもルカだけが悪いのか?
「…それに中忍試験ってとっても過酷だって聞いた。…他人が手に入れた巻物を譲ってもらってこの試験通過してもさ、次の試験で、落ちるよ。…そんな他人の慈悲を受けて試験に合格した人間が、次も通過できるかな…?」
「っならあんたはどうなのよ!」
「…私?」
「そう!だってそれは相打ちした班から奪ってきたものじゃない、そんなのまぐれよ!?」
「まぐれ…。そう、まぐれ。…私はまぐれでも巻物を手入れることができた。…そのまぐれですら、貴方達は巻物を手に入れることができてない」
ナルトとルカの相性も悪いが、サクラとルカの相性も悪い様だ。
そもそもルカと相性の良い人間がいるのかと、目の前の光景を見ながら十班のメンバーは現実逃避の様に考えてしまう。
ルカは良い子だ。頭も良いし、仲間を思いやることがきる。だがあまりにも他人と仲間の線引きがはっきりしすぎているし、正論を言っていることの方が多いがそれも言葉足らずで言い方はキツく、そして不器用。
年齢問わずそれを分かってくれる、本質が大人のような人なら大丈夫かもしれないが…この場合、ナルトもサクラも精神年齢が歳相当もしくは幼いので完全にぶつかってしまっている。余談だがそう考えたら、他班の犬塚キバも彼女と合わないだろう。
「あー…めんどくせーなぁ…」
このどうしようもない状況にシカマルはぼやく。巻物がある事に喜び過ぎて、どうなるかを考えなかったのは失態だった、と心の中で舌打ちをした。
それにナルトは目を付ける。
「緊張感ないやつだってばよ、シカマルはどっちの味方なんだよ!」
「緊張感に関してはお前にだけは言われたくない。んで、んなもんルカに決まってんだろ」
一息いれる間もなくそう言い切るシカマル。
これにはナルト達だけではなくルカも驚いた。いのとチョウジは頷いているので十班の総意なのだろう。
「そもそもな、ルカが言ってることは正しいと思うんだよ俺たちは」
「どこが!?」
「全部。ルカは手に入れた巻物をお前らに譲ってやるほどお前らとは仲良くない」
「で、でも同期よ!?」
「同期だからって手助けしてくれるなんて甘っちょろい考え、今すぐ捨てるべきだと思うぞ俺は。…それにルカにとったらたまたま同じ時期に忍になったぐらいの認識だぞ、サクラやナルトに対するものは。サスケは……知らん」
シカマルの言い方は冷たいが、ルカは実際そう思っていたのかこくこく頷いている。
同期だから助ける、シカマル達はその思いで七班に加勢をした。故にサクラの言う事は間違ってはいない。
だが、此処に一人だけ「同期だから」という理由で助けにはいっていない人物がいる。――ルカだ。
少女だけは「仲間」を守る為に参戦した。直接戦ってはいないが、その後も全て「仲間」の為に動いた。
「そこまで冷たいなんて…!」
「…そもそもルカのお前らに対する感情ってのはどちらかというと嫌悪だぞ」
「…え?」
シカマルは欠伸をしながらそう言い切り、その後小さな声で「まぁ、俺達も同じ穴の狢だったんだけどな」と呟く。
まさかそこまで良くない方向に思われているなんて思っていなかったのか七班のメンバーは驚いており、シカマルの言いたい事が分かったのか…いの達もそれを肯定しているのかのように頷いた。
ルカの同期は皆、彼女を悪者にしたのだから。
「サクラ、お前アカデミー時代にルカにしたことを忘れたか?」
「…え?」
「……うちは君は私にテストの事で話しかけてきた。私もテストの事だったから普通に答えた。…そのあと春野さんは女子数名と共に私を呼び出したよね。
『サスケ君に色目つかわないでくれる?』とか『ブスのくせに近づかないで』とか。……そこまでは良いよ。暴言なんて気にしないし。
そのあと、たびたび私に嫌がらせしてきたよね。たまたま席が近くになった時とか、うちは君が授業に関することを聞きに来たときとかたまにあった。
そのたびに貴方達は暴言を吐いて、最後には私が抱いていたクマの人形を奪い取ってはさみで切った。……覚えてないの?」
「…え?…あ…!」
シカマルの問いに覚えが無かったので首を傾げていたが、ルカの言葉を聞いて思い出したのか顔を真っ青にした。本当に忘れていた様だ。
それは本当にあった事だった。勿論サクラは主犯ではない。その時気の強い少女が主犯で、サクラはその場で主犯達と共にいた。いのは違うグループのリーダー的存在で、その主犯とは気があわなかったので付き合いはなく、シカマルとチョウジは一連の騒動を知ってはいたが巻き込まれないように遠くにいた。
サスケはまさかそんな事になっていたとは知らずにただただ驚いている。
ちなみにを言うと、いののグループもルカの事を嫌っていたり遠巻きにしていたので結局は何処の女子グループもルカに対する扱いは一緒だ。
「人形を切った人達を突き飛ばして、「人形くらいで」なんて言ったあなたに平手打ちをしたとき、たまたま通りかかったうずまき君。うずまき君はその状況だけをみて『サクラちゃんを虐めるな』なんて言って私一人を悪者にしたよね」
「!」
「…そのあと大変だったよ。…先生は私一人を怒るし、あとから散々女子にも男子の一部にも陰口叩かれて、一部の先生には問題児扱い。……私は確かに春野さん達に手を出したけど、そもそもの原因はそっちなのに私だけ悪者。ねぇ分かる?…一人悪者扱いされた私の気持ち!」
涙を溜めてそう叫んだルカに誰も何も言えなかった。
ちなみにシカマルやいの、チョウジ、ついでにサスケはこの件を知っていたが無関係だったため陰口も何も言っていない。いのは確かにサスケの事が好きだったがルカから近づいていない事をちゃんと理解していたし、そもそもサクラへのイジメを止めたのはいのだったのでそういう事は元々嫌いだった。それでもルカへのイジメは止め切れていない。
手を出した方が負けという言葉があり、サクラ達に手を出したルカは一人悪者だった。例え同級生達に言いがかりの様な嫌がらせを受けていようが、陰口や私物を隠す等の陰湿な事をされていようが、大切にしていたクマの人形を切り裂かれようが……――何をされようが、複数人の女子を突き飛ばしサクラの頬を叩いたルカが一番の悪者だった。
教師達からすると人となれ合わないルカは扱いづらい生徒でどこかで問題児扱いをしていたのだろう、それが切欠となってルカナルトとは違うベクトルの問題児となった。
「だから貴方達は大嫌い!…うちは君以外の貴方達には何の良い思い出もないの。春野さんは昔虐められてたのよね確か、虐めの辛さを知ってるくせに何で貴方は私を虐めたの。
うずまき君も馬鹿みたいに春野さんの前でかっこつけて彼女を助けたみただけど、私からしたらその姿はとても滑稽だったよ。
…そんな貴方達に何で余ってるとはいえ巻物をあげなきゃいけないの?それに巻物を譲ってもらうっていう行為、恥ずかしくないの!?ちゃんと自分の力で手に入れてよ!」
サクラは直接ルカには手を出していない。……けれどルカからすると全て同じだった。主犯が別にいようが、直接虐めてきた人間が別にいようが、サクラはそこにいた。そこにいてサスケに近づいて貰えて自ら声を掛けて貰えるルカに嫉妬していた。少なくとも一回や二回ほど、無意識も含めて言っただろう。
同じなのだ、なにもかも。
ルカの叫びを聞いてシカマル達は居たたまれなかった。特にいのは。
それでも今は仲間として受け入れられたいの達はせめて、と思いルカを庇う様に声をあげた。例えサクラたちと同じ穴の狢であろうとも、今は仲間なのだから。
「確かにルカも相打ちの班から持ってきたかもしれない、けれど『運も実力のうち』なんて言葉があるのよねー」
「ルカにした事忘れて平気で近づいて、お願いして、それで断ったら逆切れって、小さい子供かよ」
ハァっとため息を吐く十班、声は震えている。
その時今まで黙っていたサスケが口を開いた。
「…なら正規の方法ならいいんだな?」
「…え?」
「…確かにお前の言う事は正しい。お願いして巻物貰っても何の喜びも達成感もない。…それならお前らから奪ったら何も言えないよな」
「……!ッうん」
ルカはその言葉に少しだけ微笑みながらうなずいた。サスケはいつもこうなのだ、ブレずにルカの前に立ちはだかる。
成績男子トップのサスケと女子トップのルカ、イジメの原因にはなっていたが、サスケ自身には悪い感情はない。
サスケはちゃんとサバイバル方式でルカ達十班から天の巻物を奪うと言うのだ。それならばルカは何の文句もない。
四人は眼で会話すると代表していのが答える。
「勿論良いわよ。…ただし、奪えたらね」
不敵に笑い四人は陣形を整えた。サスケもしっかりクナイを持って構えたが、ナルトもサクラも動揺して動けないでいる。
その二人の姿を見てルカは顔を顰めた。
「ばっかみたい。うちは君には悪いけど、こんなの相手するのも時間の無駄。
『秘技 木枯らし』」
周りの木々がざわざわと揺れ、青々とした葉が急速に枯れだし落ち葉となった。
それに気が取られた瞬間風が吹き、落ち葉が七班を襲う。
視界が落ち葉によってさえぎられ思わず腕で顔を守るが、気が付いた時には――。
「…っいない…!」
十班は姿を消していた。
恋は盲目だったのだ、何もかも。そして少女もまた人と関わろうとしなかった。それが全ての原因で――。
同期だから、そんな言葉は少女の辞書にはない。