彼女は歩きだした。
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【アカデミー卒業試験―合格】
その通知表を片手にルカは家へと飛び込んだ。
「花さん、ただいま」
「お帰り、ルカちゃん」
ルカがアカデミーから帰ってくると笑顔を浮かべる同居人の花がわざわざ玄関にきて迎えた。時刻としては家事をしていてもおかしくはないのでそういった心配りが嬉しくて、ルカは笑顔を見せると靴を脱いで先に歩き出した花の背中を追った。
そのままリビングを通って縁側へと行き、並んで座る。
「ちゃんと卒業できたんだね」
「うん。分身の術だから簡単だったよ」
小さな身体の首元にある額当てを見て花はルカの頭を撫でた。花はルカのたった一人の家族で、元はルカの生家であるとある一族のお手伝いだった人。今はルカを引き取って育てている。高齢であまり家から出ることはなくなったけれど、とても明るくて優しい人。
ルカはそんな花が大好きだ。彼女が忍になったのも花に恩返しするためで、沢山お金を貯めて不自由のない暮らしをする。それがルカの些細な夢だった。
「明日からルカちゃんも立派な忍ね」
「……うまくやってけるかなぁ?」
「勿論よ。ルカちゃんは人見知りで誤解を生んじゃうかもしれないけれど、とってもいい子で明るいし、きっと良い仲間に巡り合えるはずよ」
「……本当に?」
「ええ」
不安そうにルカが見上げると花はとても朗らかに微笑んでいた。その笑顔を見るとどんな不安だって吹っ飛んでしまいそうな安心感ああるけれど、あまり友達がいないという事実には変わりない。
その事に関して花はとても心配していた。それなりに年をとった花はどうしても先にあの世に旅立ってしまうので一人残されるルカの行く末が……。
そんなルカはルカで前世が前世、今世でも生まれが生まれだったので人と関わるのが苦手になってしまっている。その事が原因でいつも一人で行動していた。
「そんなルカちゃんに卒業祝いのプレゼント」
「本当に!?」
「ええ」
心配をしていても結局はルカの行動次第だ、取りあえず今日は目出度い日なので笑顔で用意していたモノを渡さなければいけない。しんみりとしながらも花は立ち上がると家の奥へと消え、次に現れた時に小さな箱を片手に持っていた。差し出された箱を受け取って開けると綺麗なブレスレットが入っていた。
「……綺麗……」
「そうでしょ?これはね、ルカちゃんを思って作ってもらった特別なブレスレットなの。職人さんが言うには魔除けと幸福の思いが込められていてね、きっとルカちゃんを守ってくれるわ」
「……っありがとう、花さん!」
丁寧に箱から取り出してさっそくブレスレットを腕に付け、ルカは花に抱きついた。花はルカの喜びようを見て嬉しかったのかギュッと抱きしめながら頭を撫でる。贈り物をしてここまで喜んでくれたのなら渡しがいもあるというものだ。
それから花はルカ本人と彼女が連れている熊の人形であるくーちゃんや猫や鷹達などの口寄せ動物に手作りミサンガをプレゼントした。
ルカは皆を呼び出して首輪の代わりにリボン結び、自身はその長い髪の毛をミサンガでポニーテールにした。皆と笑いあうルカを見て花は綺麗に笑う。
不安だけど明日から頑張ろう、その決心を胸にルカは笑顔を浮かべながらまた花へと抱きつきにいった。