彼女は立ち向かう。
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「…皆に手を出すなんて許さない」
ルカが皆を守ると言わんばかりに七班と十班、そしてロック・リーの前に立った。
眉間に皺をよせ、ピリピリと肌を刺すような殺気が彼女からあふれ出ている。
「…たった一人で戦おうと言うのか?」
音の忍が馬鹿にしたように笑いながらそう言うと彼女はゆっくりと首を横に振った。
「…一人じゃない」
「………なに?」
「…気に入らないな。…田舎者の音忍風情が…そんな二千級をいじめて勝利気取りか」
離れた所から声が聞こえてきた。皆が聞こえてきた方向を見ると木の上に立っている二人組。
リーと同じ班で、ルカが一時的にお世話になっていた日向ネジとテンテンだ。
二人はリーに声をかけると、直ぐにネジがキッと音忍を睨む。
「そこに倒れてるオカッパ君は俺達のチームメイトなんだが好き勝手やってくれたな」
ネジが動くとなるとルカは邪魔にならないようにシカマル達の側に移動する。
感動の再会はまた後でということで誰も彼女に声をかけないし、彼女も皆に声をかけない。
「これ以上やるようなら全力で行く……ん?」
「気に入らないのなら格好つけてないでここに降りてきたらいい」
ネジは何かを感じとったのか視線をある方向に向ける。
音忍は何も気がついていないのでネジを睨み返して挑発を続ける。
が、それを無視しネジは腕を組んだままフッと笑った。
「………その必要は無いようだ…」
ルカもビクッと体を揺らしてネジと同じ方向を見る。
そこにいたのは起き上がるサスケ。
サクラは嬉しそうに名を呼んだ。
「サスケ君!」
「サクラ……誰だ…お前らをそんなにした奴は…」
「…サスケ、君…?」
サクラは何かがおかしい、と震える声で名前を呼んだ。
その問題のサスケの身体は禍々しいオーラで包み込まれていき、体中に良く分からない模様のようなものが浮き出てきた。
「俺だよ!」
音忍がニヤニヤしながらそう叫び、サスケは写輪眼で音忍を見据えた。
ルカは眉を寄せ、難しい顔でサスケを見つめている。
サクラが心配して声をかけるが、サスケは禍々しい笑みを見せて口を開く。
「心配ない。…それどころか力がどんどん溢れてくる。今は…気分が良い。…あいつがくれたんだ」
「え?」
「……俺はようやく理解した。俺は復讐者…例え悪魔に身を委ねようとも、力を手に入れなきゃならない道にいる…」
「………」
ルカは人知れずため息を吐いた。
うちはの悲劇をしらないものはいないぐらいなのでルカも勿論知っている。
だから復讐心を持っているのもおかしくはない。
復讐をしたいなら誰も巻き込まずに勝手にすればいいと思う。
その人の人生だ、悔いのないように生きたらその人はもう成功者。
だけど今こやって力を手に入れて喜ぶその姿はルカにとってとても滑稽に見えた。
力を手に入れたいと思い、努力する姿はとても素晴らしい。
だが彼は言った。「あいつ」がくれた、と。
ルカには「あいつ」が誰か分からないが、よくない人だという事だけは分かる。
復讐を目標としているなら、その復讐する為に使う力を誰かにもらって成し遂げるのもそれは一つの方法なので何も思わない。
だが、相手がよくない人ならその限りではない。
古今東西、心が闇に覆われている時に美味い話を持ってくるのは悪人だけで、その後利用される。
復讐さえ成し遂げられればいいのかもしれないが、それでは破滅の道を進むだけ。
勿論人の考えは十人十色、ルカが口出しする事ではない。
ボーっと気を抜かない程度にルカが考え込んでいるうちにこの場の空気がサスケによって凍りついていった。
シカマルはハッと我に返り、叫んだ。
「いの、元に戻れ!チョウジもこっちにこい、巻き添えをくらうぞ!」
その指示通りいのは乗っ取っていた身体から自分の身体に戻り、チョウジもよたよたとシカマル達に近寄ってくる。
ルカは元からシカマルの側にいるので動く事はない。
十班は一か所に集まった。
それからサスケの攻撃は凄まじかった。
相手の攻撃を物ともせず、相手を攻撃し、両手の腕まで折っていく。
折られた瞬間にあげた相手の悲鳴に誰もが皆顔を歪め、流石にルカも皆と同じく顔を歪める。
流石にこれは見ていられない。
別にサスケがどうなっても構わない。
…これは多少誇張しているが、ルカにとったら同期とはいえ『他人』であるうちはサスケが何をしようと『どうでもいい』。
だが此処には大切な『仲間』であるいのやチョウジ、シカマルがいるのだから何をしようとどうでもいい訳ではない。
白状だと思うだろうが、彼女はこういう子なのだ。
元々他人と仲間、自分の境界線がはっきりしている。
だから同期とはいえこの場にいるうずまきナルトも、春野サクラも、うちはサスケも彼女にとったら仲間以外の『他人』だ。
先輩であるネジたちも他人ではあるが少々お世話になったので他人からは微かに離れている。
その仲間であるシカマル達が不快な思いをしているならその根源をなんとかしたい。
ルカは近くにいた彼女に話しかけた。
「春野さん」
「…な、に…?」
脅えているサクラはなんとか返事を返す。
ルカがサクラに話しかけるのは初めての事だったので、サクラも秘かに驚いた。
「うちは君を止めよう」
「…え?」
「…別にさ、アナタ達の為じゃないよ。…これを見てシカマル君達が傷つくのは…嫌だから」
何故そんな提案があんたの口からでるの?と言わんばかりにサクラの目が見開かれたのでルカは淡々とした声色で話す。
「……でも、どうやって…」
「…私が、足止めする…。その隙にどうにかして…!」
「…どうにかって…!」
どう動けばいいのか分からないサクラは涙目で叫び返す。
シカマル達は驚いてルカを見つめた。
まさか彼女が自分からそう言うなんて思わなかったからだ。
「危ないぞ」
「…うん、けど大丈夫。…私、三人が傷つくの嫌だから、さ」
「………」
シカマルが険しい顔で言うが、ルカは笑う。
三人はお互いに顔を見合わせた。
「……どうする?」
「決まってるじゃない」
「だね」
いのもチョウジも自身満々だったのでシカマルはめんどくさそうにため息を吐く。
三人はルカを見ながら腰をあげた。正直立ち上がるのも辛いが、そうは言ってられない。
ここが正念場なのだから。
「ルカ、草結びでオッケー?」
「……え?」
いのが覚悟を決めた目でサスケを見据えながら言う言葉にルカは小さく声を漏らしながら驚いた。
「…だからサスケのやつを止める術は草結びかって聞いてんだよ。…全員バラバラの術だしても逆効果だろ」
「そうそう」
「………!?」
ようやく言葉の意味を理解したのか目を見開いた。
目をぱちぱちさせているルカを見て全員が肩を竦める。
「分かったか?…俺らも手伝うって言ってんの」
「………」
ルカ一人で今のサスケを抑えられるか分からない。それほどまでにうちはサスケは凶暴化している。
だから四人で同じ術を使えばもしかしたら大丈夫なのかもしれないので提案をした。
「…いいの?チャクラは…?」
「構わない。…チャクラもまだ少し残ってるから心配すんな」
疲れ切った顔でニッと笑いながらシカマルはそう言い、残りの二人も同じく笑っている。
十班の強みはチームワーク、ルカの意思は自分達の意思だ、といのやチョウジの目が訴えている。
「…分かった。…お願い」
「うん!私達仲間なんだから頑張るに決まってるじゃない」
「…!…っうん…!」
いのがニッコリ笑うとルカの頭を撫でた。
四人の中で一番小柄なルカの頭は撫でやすい場所にある。
ルカは擽ったそうに珍しくも満面の笑みを見せた。
「さーて、やるわよー!ルカ、今の状況で四人で草結びしたら拘束できるのは何秒?」
「……五秒ぐらい、かな?」
「オッケー。…サクラ、五秒だけ隙を作るわ!だからその間に何とかしなさい!」
「……!」
いのの自信に満ちた声を聞いて我に返りながらもサクラは驚いていた。
あのアカデミーに通う女子の中で最も無愛想で同性から嫌われているルカが十班ではとても表情豊か。
いのが可愛がっているし、シカマル達も彼女の事を信頼している。
彼女自身が自分から助けると言いだし、尚且つその彼女の行動でシカマル達三人も動くことになった。
しかも聞く限りで術の指定も彼女がしている。
あり得なかった。サクラが知るルカはそんな子ではなかった。
いったい彼女は何のか、とても気になった。
勿論今はそういう状況ではないのでサクラは慌ててサスケを見据える。
「…いくよ、皆。…春野さんも」
「えぇ」
「おう」
「うん」
「……分かった」
四人が円になってお互いを見つめる。
そして出来る限り同時に手早く印を組む。
―秘技 四連草結び―
地面へと同時に手をついた。
手ごたえがあると直ぐに四人はサスケを見た。
そこには地面から細いが見るからに強度がある長い蔓が生えており、身体を拘束されているサスケの姿が。
彼女一人でする草結びと違い身体全体が拘束されているので、ルカにとっても圧巻といえる状況だった。
「…今です…ッ春野さん…!」
草結びに驚いて固まっていたサクラだがルカの声に慌ててサスケに走り寄る。
そして思いっきり後ろから抱きついた。
「お願い…!もう止めて…!」
泣きながらそう訴える彼女の声にサスケはどんどん正気に戻っていく。
模様のようなものが消えていったのでルカ達も術を解いた。
サクラに抱きしめられながら、サスケはズルズルと座り込んでいく。
流石に体にも限界が来ていた様だ。
「(…もう、大丈夫か…)」
安心したのかホッとため息をついて十班はお互いに顔を見合わせながら笑った。