彼女は立ち向かう。
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「おい、早く走れ」
「こらこら、さっきまで戦ってたんだからそんな事言わないの」
「………」
早朝、ルカはある人物達と死の森を疾走していた。
もうチャクラは戻っているので傍には口寄せ動物たちはいない。
目の前を走る二人組は同じ木の葉の忍だが、彼らの事は知らないのでルカはあまり信用していない。恐らく二人もルカの事は信用していないだろう、特に男の方は。
「もう少し加速する。ついてこれるか?」
「……はい。
テンテンさん、日向ネジさん」
ルカの同意に鼻を鳴らして返事をした男――ネジは足を速めた。勿論ルカは変わらず着いて行っている。
何を隠そう、一緒に行動しているのは先輩のテンテンと日向ネジだった。
何の接点もない――木の葉の里出身という共通点はあれどほぼ初対面だった三人が出会ったのは一時間前のこと。
「はぁはぁ…もう…!!」
明け方のまだ日が昇り始めたころ、ルカは一人敵の忍達と交戦していた。
シロ達には自分が休んでいる際ずっと頑張ってくれていたのでもう帰ってもらった後の事だった。
誰にも背中を守ってもらえない。
周りを霧隠れの忍連合軍、三チーム計九人が取り囲んでいる。
ルカは殺気をまき散らしながら戦った。
水遁や彼女が「秘技」と呼ぶ忍術、体術、剣術…
そして傀儡。あらゆる方法を使い戦っていた。
ルカ自身これからの事を考えると本当は傀儡を使いたくなかったが、出し惜しみをして大けがを負ったり命を落としたら元も子もない。
だが彼女は幸運だった。なぜなら敵は皆中忍レベル、もしくは下忍レベルだったから。
もしこの中でそれ以上の実力者がいたら敗けていただろう。
「っきゅうちゃん!」
巧みに友達である傀儡を操り隙をみては水遁を繰り出す。
それから数十分後、気づいた時には敵は地面に倒れていた。
それほど必死になって戦っていたのだろう。
急に力が抜けて地面に座り込んでしまった。
「……うぅ…」
久しぶりに全力で命の奪いあいをした。
所々切り傷があり、地面に何度か転がったので砂埃も沢山まっている。
一度ため息を吐くとルカきゅうちゃんを巻物に戻して地面に転がった。
「…疲れた…」
一人で戦う事にはなれている。けれど、限界はある。
ルカはぼんやりと木々の隙間から見えている空を見つめてため息を吐くと、小さくぼやいた。
その瞬間、知らない声が響く。此処には自分しかいない。
「ほう、貴様中々やるな」
「…あなた何者?」
慌てて立ち上がってクナイを持ち、辺りを見渡す。
少し距離が離れている木の上に男女二人組が立っているのが見えた。
「…誰!?」
「そう殺気だたないで、同じ木の葉の忍だから」
威嚇のため殺気を放ったルカに向かって女の子が苦笑いを見せながら言う。
男の方は腕を組んでいるが、女の子の方は戦う意思はないとアピールするためか、両手の手の平を見せながら左右に振っている。
「…木の葉…」
「そう、私はテンテン。こっちが日向ネジ」
額当ては木の葉なので言っている事は間違っていないだろう。
だが敵の変化とも考えられたが、目をこらしてもブレはないので「本物」である事が分かる。
警戒するに越したことはないのでジッと黙って見つめると、ネジとテンテンはお互いに目を合わせて肩を竦めると、木から飛び降りた。
「…名は?」
「ルカ。…水橋ルカ」
「そう。宜しくね」
ネジの問いかけに小さな声で答えたが、テンテンは特に嫌がる事無く笑って頷いた。
ゆっくりとルカの近くまで近づいてくる頃には、ルカはクナイもホルスターに仕舞い、殺気もひっこめていた。
警戒していないわけではないが、敵ではない様だ。
「…あの、それで…私に何の用ですか?」
二人がまさか戦闘を見て興味を持ち近づいてきたのかと思った。……が、違うらしい。
テンテンは困ったと言わんばかりに苦笑いを浮かべる。
「あ、そうそう。私達ね、同じ班の子を探しているの」
「………」
「…容姿は、おかっぱ、緑の前身タイツ、特徴的な目と眉」
「知らない?ずっと探してるんだけど見つからなくて。同じ木の葉の人ならもしかしたら教えてくれるかなって思ったんだけど」
チームメイトが一人行方不明、腕を組みながら小さくため息を吐くネジは相当ご立腹の様で、苛立っているらしい。
それでもチームメイトなので心配しているのかもしれないが、初対面のルカには分からない。
勿論、この森で顔を合わせた記憶は無い。全身タイツとなると出会っていたり、遠目で見ていたら絶対に忘れない筈だ。
「…すみません…。知らないです。…あの、じゃあ私も聞いて良いですか?」
「…なんだ?」
「私も、同じ班の子を探しているんです。特徴は……頭の上で一つにくくってる男の子、ポニーテールの女の子、ぽっちゃり系の男の子。全員名家の子、なんですけど…」
ネジ達は行方不明になった一人を探しており、ルカはその逆で一人となってチームメイトを探している。
似たり寄ったりの境遇なので少し不安そうに顔を歪めながらテンテンとネジに聞くと、二人は顔を見合してあからさまにネジはため息を吐いた。
「…あぁ、見たぞ」
「!…っ本当ですか…!?」
「あの弱いやつらか」
「ネジ!」
その立ち振る舞いからネジは強者出ある事は分かるが、だからといって対象者の仲間の前でそう言い切るのは気分がいいものではない。
現にネジの仲間であるはずのテンテンも咎める様に声をあげた。
「本当の事だろう」
だが、ネジは鼻を鳴らすだけで謝罪する気はないらしい。
失礼な言い方の数々にルカは少しだけムッと顔を歪めるが、ここで言い争いしても仕方がないと心の中で深呼吸をすると真っ直ぐネジを見た。
「…あの、見たのはいつごろですか?」
「…さぁな。正確な日付は分からないが、少なくとも昨日の夕暮れ前だ」
「…そう、ですか」
これがもしついさっきなら近くにいるかもしれないし、あの三人が無事でいることも高い。
が、会ったのはずっと前の事。…それなら今どこにいるか。ましてやちゃんと生き残っているかも分からない。
ルカは途端に怖くなった。知らぬ前に取り返すのつかない事になっていたらと思うと……。
「…それじゃあ、私はもう行きますね……」
「え、あ、うん」
「…早くみんなを探さないと…」
恐怖で顔が引き攣っているのを、恐らくテンテンとネジは見ただろう。
ぽつりと呟く様に言った言葉にテンテンは顔を歪める。
「探すって…アナタずっと一人でいるの?」
「…はい。昨日試験が始まってから直ぐに迷子になっちゃって…。皆を探しながら塔に向かってるんです…」
「………」
ネジたちは少なくとも単独行動を行いながら時間になったら集まるという方法をとっているし、一人になるのもほんの数時間だし、あまり遠くへいかないようにしている。
だがルカは半日以上この死の森で一人で生き残っている。
それはネジに興味を持たせるには十分だった。
「おい」
「……はい?」
「…お前一時的に俺達と共にくるか?」
数歩歩き出したルカの背中に向かってネジがそう言った。
「……え?」
「ネジ!?」
ネジの提案にルカは勿論テンテンも驚いて目を見開く。
慌ててルカは振り返った。
「良い戦いを見せてもらった、その見物料だと思えば良い。だから敵に出会って戦闘となったらにお前が中心になって戦ってもらう。
勿論俺達も戦うが、お前の戦う姿をまた見たいから中心はお前だ。そして期間には限度があるが、お前が班の仲間に会うまで共にいてやる。…どうする?」
ルカは考え込んだ。交換条件も少し考えものであるから即答えは出せない。
ただこの先シカマル達に会うまでずっと一人でいる事は危ないが、だからといって自分の手のうちをずっと見られるのも嫌だ。
「………それなら、宜しくお願いします。ただ…」
手の内を周りに話す事をしないでほしいという条件をだしてネジの提案に乗る。
ルカの条件に素直にネジとテンテンは頷き、期間限定だがルカはネジの班に降る事となった。
************
シカマルは焦っていた。他里の連中に襲われていたナルト達の班に加勢したはいいが、もう押されて追い詰められている。
サスケもナルトも戦闘不能、リーも戦えない。サクラも精神的に追い詰められているだろうし、あとはシカマルといのとチョウジ。
チョウジも倍加の術も回転が止まり、シカマルの影も切れてしまい、いのも精神的な攻撃で動けない。
この中でまだ足掻けるのは…
「(俺だけ、か…!)」
片膝をついているシカマルを前に、敵はニヤニヤ笑っている。
いたぶる事を考えているのか。
「(どうする…!どうすれば良い…ルカ…!)」
こんな時に頼れる彼女はいない。だいぶ前にシカマル達とはぐれて以降、音沙汰はない。
そもそも彼女は無事なのか、それはずっとシカマル達の胸にあった。不安で不安でしかたがない。
大切な仲間の安否が分からないのはこんなにも恐い事だなんて三人達は初めて知った。
彼女の実力は知っているので大丈夫だと思うが一人でいる可能性が高い。
それが心配だが、シカマルは「今この時を何とかしないと彼女と合流することもできない。
あの子は1人で頑張っているだろう。
なら、
「めんどくせぇが、俺も諦めれねぇよなぁ…!」
「まだやる気ですか?」
シカマルは最後の力を振り絞って立ち上がり、印を組んだ。
音の忍達は無駄なあがきをするシカマルを馬鹿にするかのように笑う。
「あいつに教わった術、今使わないでいつ使う!」
―秘技 凍解(いてどけ)!―
地面がぐらぐら揺れだし、ヌルリと地面が溶ける様に柔らかくなり敵はバランスを崩す。
だがシカマル自身もチャクラを消耗した後だったのでその範囲は狭く、直ぐに敵は脱出した。
「くっそ…!」
―秘技 春一番!―
突風が吹き荒れ、敵は吹っ飛び地面や木の幹に叩きつけられたが、それも威力が弱かったのか直ぐに相手は立ち上がってくる。
そしてシカマルはとうとうチャクラ切れで座り込んでしまった。
「何で…!」
教えてもらった時に見せてもらった『凍解』や『春一番』の威力に足元にも及ばないぐらい弱い。
あまりチャクラがない状態で使ったのが原因かと思ったが、ルカに言われた言葉を思い出した。
『みんなよく聞いて。…秘技もとい秘術は他の忍術と一緒で術によって性質も違い、術と同じ性質を持つ人なら威力は強くなる。
例えば草結び…これは土のみ、もしくは水と土の両方、もしくは水のみ。
これは術者が水と土の性質をもっていたら威力はとても強い。…けれど土か水のどちらかしか持っていなかったら両方を持つ人の威力より弱くなる。
草結びは元々足止めを目的としているから両方の性質持ちの人なら恐らく身体全体を拘束できる。
…けれど土、もしくは水だけなら精々足元ぐらいしか拘束できない。…そしてその蔓の強度も違ってくる。
ただ私の秘術は忍術と違いその性質を持たない人でも特別に発動することができるように作っているの。
火や雷しかもたない人でも、水と土の術である草結びは使える。
けれど、威力は水もしくは土…片方しか持たない人よりも格段に威力は落ちる。
こめるチャクラの量とか、性質とか…それらは全部威力に関係してくるけど、秘術は特別。
私が作ったものだから、私専用。特別に皆に教えたけど…皆が発動しても私の発動する秘術には程遠い代物になる。
秘術は…私以外が使ったら、スズメの涙程度の威力しか発揮しない。
その性質を持っていても、その性質をもたない私のよりも威力は落ちる。
だからこれだけは覚えておいて。
これを切り札とおもっちゃだめ。
せいぜいほんの数秒の隙を作る事しかできないから』
シカマルはその言葉を忘れていたわけではない。
確かに頭の中には残っていたはずなのに追い詰められて、その言葉を無視し秘技を使う事しか思いつかなかった。
「…はぁ……ッはぁ…」
誰よりも前にいたシカマルの目の前にクナイが付きつけられる。
「シカマル!」
背後で誰かが叫んだがシカマルはその叫びに反応はできない。
もう逃げられない。きっと一歩でも動くと、首と身体が離れるだろう。
「……殺すのか、俺を」
「あぁ。無駄な足掻きをしやがって。一番に殺してやるよ」
「……」
シカマルが相手から目を離さずにそう聞くと、音の忍達は楽しそうに笑う。
覚悟を決めなければいけない様だ。
だが、シカマルは汗を垂らした瞬間何かに気が付いた。
「…………、
……!
っぉ、ら!ッ『秘技 炎天』!」
自身にクナイを突きつけていた敵に足払いを仕掛けて腹を蹴り飛ばし、物理的に距離を取ると印を組む。
カッとシカマルを中心に閃光玉を投げた時のように光が溢れた。
誰もが皆視界が奪われ目を瞑る。
その時、凛とした声が響き――。
「―秘技 春疾風(はるはやて)―」
激しい風がシカマルを中心に吹き荒れ、その突風で彼の体が浮く。
気が付いた時にはシカマルはいの達の横にいた。
シカマルがいのが…その場で意識ある者全員が目を見開いた。
「……皆に手をだすだなんて許さない」
「ルカ!!」
険しい顔で敵と対峙する水色の少女。
希望の光がその場に降り立った。