彼女は立ち向かう。
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ルカは死の森についての噂を聞いたことはあるが、あまり良い噂は聞かない。勿論の事ながら入った事も無い。
第二試験――死の森。皆は試験官に連れられて森の前に集まっていた。そこで一悶着が起こり、皆の視線を集める下忍がいる。――勿論元気いっぱいのうずまきナルトだ。
試験官のみたらしアンコと何か騒ぎを起こしている様だがルカ達は離れている為、何が起こっているのか分からない。
「あんたみたいな子が真っ先に死ぬのよねぇ。フフ…私の好きな赤い血ぶちまいてね」
あいにく声は聞こえないが、アンコがうずまきナルトの頬から流れる血を舐めとっている姿が見えた。
それなりに距離があったので詳細は分からないが、とりあえず見た通りの感想しか浮かばない。
「……何あの試験管さん…」
「気味、悪いよね…」
いのとチョウジが顔を歪めながら呟く。恐らく大多数の人間も二人と同意見だ。
酷評を受けているが、自らの意思でそう動いているのでアンコにとっては特に気ならない事なのかもしれない。
ルカは苦笑いを浮かべながらジッとアンコを見た。
「…でも、あまり甘く見たらいけないよ」
「え…?」
「あの人特別上忍で、その中でも戦闘を得意とするタイプの人だから…」
特別上忍は専門的な分野において一芸に長けている者達が多い。ルカ自身詳しくは知らないが、その特別上忍の中でもアンコは戦闘が得意分野だった。
「…何であんたそんな事知ってるのよ」
「知り合いに特別上忍がいるの。その人から聞いた」
勿論その知り合いとはゲンマとハヤテの事で、どちらもお喋りではないが、ぜんざいの件も含めこういう事を言うのはゲンマの方だ。
機密や対象の人物(今回はアンコ)が不利になるような事は絶対に口にはしないが、色々と面白おかしく話はしてもらっている。
ルカの忠告を聞いていの達がゴクリとツバを飲んだ時、アンコの後ろに一人の男が立った。
「(ッあの人…!)」
ルカが横目でシカマルを見ると、彼もルカを横目で見ていたので目があった。
雲隠れのソルイ達が言っていた要注意人物の一人だ。
―気を付けて―
耳の奧でザワリと声が聞こえて咄嗟にルカは耳を触った。シカマルにも聞こえたのだろう、秘かに耳を触っている。いのやチョウジは特に何の素振りも見せなかったのでその二人には聞こえていない様だ。
二人に気づかれない程度に周りを見渡すと案外近くに彼らは立っていた。
小さな声だったので誰かの特定はできなかったががあの三人のうちの誰かの術だろう。
微かにソルイ達が手を振っているが、今ここで手を振り返したらいの達に気が付かれるのでルカは手を振らずに微かに会釈をする。
反応が返ってきたからか、ソルイ達は嬉しそうに笑っていた。
その後、第二試験の説明と死を前提とした試験の為に同意所が配られて勿論記入し、巻物と交換した。
天もしくは地と書かれた巻物が片方一つだけ配られ、この死の森を舞台に巻物を奪い合い、二種類を揃えて中央の塔へと進む。
第二試験はそのルール通りチーム戦で、ルカやシカマルはさておき、いのやチョウジは胸をなで下ろす。
仲間が共にいるのなら恐いものはない。
皆が緊張に包まれる中、第二試験はスタートした。
************
入って直ぐに四人は移動し、周りに気配がなく、自分達より先に森へと入ったチームが設置した罠もない、安全そうな場所まで移動して木の側に腰を下ろした。
まだ違うチームと顔をあわせてはいない。
「さて、誰が巻物を持っとく?」
そう切り出したのはシカマルで、危険なので巻物は手に出していないが現在持っているのは彼だ。
代表して受け取ったのが彼だったので今まで持っていたが、取りあえず巻物を持つ人間は誰かをしっかりと決めてから次の行動に移りたいと思っている。
第十班はシカマルやルカがいるので慎重派だ。
「ルカが良いと思う」
「この中で一番強いし…」
いのの言葉にシカマルとチョウジがそういうと、慌ててルカは首を振った。
強いから持つ、それはあながち間違いではないが、だからといってそれだけの理由では持つ事は出来ない。
「…ダメ、巻物はシカマル君かいのちゃんが持ってて」
「何で?」
「え、僕は?」
名前を呼ばれた二人も、名前を呼ばれなかったチョウジもルカの言葉に首を傾げる。
「私とチョウジ君は敵と直接戦う…。一番敵と接触しやすい私達が持っていたら危険だよ」
「…たしかに…」
「その点…敵と距離が開いた所に立つ二人が持っておいた方が良いと、私は思う」
「……そう、だな」
直接戦うルカやチョウジが持ち、何かしらの理由で巻物を奪われてしまっては本末転倒だ。奪われるということは、それなりに持っていた人物が動く事が出来ない事を意味する。そして最初に渡された巻物を盗られた時点で十班に試験をクリアする力はなくなったという事だ。
あとから二本手に入れればいいが、巻物を持っていたルカかチョウジ、もしくはその両方が戦闘不能・行動不能になった時点で残されたシカマルといのにその様な力は残されていない。その事についていのもシカマルも自分の力量を十分に理解している。
ルカの正論に三人は納得し、シカマルといのの相談によって結局はシカマルがそのまま持っていることになった。
「あともう一つ」
「なに?」
「…もし逸れたら時の決まりごとを決めとくぞ」
巻物の件は解決したが、まだ大切な事を話終えていない。真剣な顔でシカマルは皆の顔を見渡す。
「まず、当たり前のことだけど絶対に逸れないようにするのが大前提だ」
「それはそうよね」
「それでも逸れた場合…どうする?」
不安そうなチョウジの言葉と沈黙が流れた後に、シカマル達三人は顔を見合わせて直ぐにルカを見た。
話に入っていた為真剣に相槌を打っていたが、視線が集まった事によってルカは驚いて肩を揺らした。
「…え、私?」
オドオドと顔色を伺う様に三人を見ると三人共頷いている。
ルカは困った様に三人を見渡し、そしてシカマルをそっと見つめた。
何を言いたいのかは分かるが、シカマルはそっと首を振った。
「お前が決めてくれ」
「…な、何で……。司令塔はシカマル君でしょ…?」
「けれど今ちゃんと正しい判断をできるのは俺よりお前だ。……もし何か納得できなかったらちゃんと発言はする」
「…分かった」
シカマルは冷静だが経験は足りない。勿論ルカだってそうだが、危機管理能力はルカの方が高かった。それ故に司令塔は最善として彼女を名指ししたのだ。
勿論ルカとてシカマルの「考え」が理解できないわけではないが、こういう事は苦手だった。
だが苦手だと言って逃げるわけにはいかない。一つ深呼吸をするとそっと考え込んだ。何が一番最善なのか、どういう行動は危険に繋がるのかを纏める。
皆の視線を感じてゆらりと揺れる心を引き締め、口を開いた。
「私の考えは…」
一、逸れた場合原則としてその場所周辺から動かない
一、30分以上立つか、もしくは敵が近くにいる場合すぐさまそこから離れる。
一、1人になってしまったらなるべく早く誰かと合流する。
一、複数人いる場合、逸れた人を探しながら巻物を手に入れ、塔を目指す。
一、1人でも希望をすてず、仲間がみつからなくても何とか塔を目指す。
「最終的に目指すのは塔…。例え巻物が見つからなくても最終手段、塔付近でどこかのチームを襲えばいい。だから逸れた場合、三十分立っても誰もこなかったら塔を目指すの。…一人だけ逸れても、二人でも、……三人でも」
「…一人でも、塔を目指すのか?」
それは危険では無いのか、とシカマルの目が言っている。ルカは頷いた。
この死の森で複数人で行動していても死ぬときは死ぬので、安全な場所など何処にもない事を全員が理解しないといけない。
「……なるべく気配を探って仲間と合流できればいいけど、そもそも敵に見つからないように気配は消して動くのが当たり前…。逸れたらこんな広い森で気配を消した仲間を探すのは不可能だと思うの。合流はほぼ諦めた方が良い。
だから一人になっても塔を目指すことにしておかないと、いざ一人になった時にどうしたら良いか分からなくなる…」
「……確かに、な。よし分かったお前の提案に俺は乗る」
ルカの考えに一理あるのでシカマルは頷き、いのとチョウジも続いて頷いた。
これで最低限の決まり事は決まった。あとは塔を目指しながら巻物を手に入れるのみ。
納得してもらえたので「ルカは秘かにホッと胸をなで下ろした。
「けれど、なるべく逸れないようにしないと、ね」
「当たり前だ」
ルカの言葉にシカマルは頷き、いのやチョウジも勢いよく頷いた。
四人はこの死の森でもお互いがいれば恐くない、と笑いあった。
まさかその三時間後、敵の襲撃を受けて逃げる際にルカが一人逸れるとは知らずに。
「……塔を目指すとはいえ、どうしよう」
森の中、ルカはまるで現実逃避の様に途方にくれながら空を見上げた。