彼女は立ち向かう。
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子供に化けていた試験管達から離れ、ルカ達はやっと試験会場である301号室前に着いた。
その前で見知った彼――アスマがトレードマークと言っても過言ではないタバコをふかして立っており、ルカたちが近づいて行くと直ぐに気がついて目があった。
心なしか嬉しそうなのは見間違いではないだろう。
「よし、四人共来たな」
「当たり前じゃない!」
「何でここにアスマがいんの?」
「……シカマルひでぇな。じゃなくて、最終確認だよ最終確認」
胸を張りながら頷いたいのの横でシカマルは小さく首を傾げながら疑問を口にする。
その問いに特に裏はなく、彼は本当に聞きたかっただけなのだが、言葉に若干トゲがありアスマは軽く肩を落とした。
疑問をもった時のシカマルはこういう子供である事と本来の目的を思い出し、アスマは咳払いをして本題に入った。
「最終確認だ。…これから先に進んだら、いくら試験管がいるとはいえ最悪死ぬことになるかもしれない」
アスマの真剣な顔に四人はジッと真面目に耳を傾ける。
年長者の、そもそもこの班の隊長であるアスマの言葉は聞かなければいけない。
「お前達は今年下忍になったばかりだ。……もう少し経験を積んで来年受けるという手もある。
…どうする?」
ルカ達は知らないが、推薦をする際にアカデミーの教師である海野イルカが止めに入った。問題は無いという反面、確かに無謀だと思う気持ちも分かる。そのため、本人達の意思を確認してから参加させる事に決めた。
強い敵や危険が目前に現れた場合「待った」などは通用しないので甘い考えであるという事は理解しているが、それでもアスマにとっては可愛い教え子だ。今年下忍になったばかりの子供相手ならこれぐらいなら許されるだろう、と思っている。
目は希望に満ち溢れているので聞かずとも答えは一目瞭然。
「今年受ける!」
「ははっ、そうか」
アスマの問いかけに四人は目で会話をすると声を合わせて高らかに宣言をする。
その言葉を聞いてアスマは嬉しそうに笑うと一人ずつ頭を撫でて教室の入り口へと背中を押した。
「行って来い、お前ら!ちゃんと四人で笑顔で帰ってこい!」
先生からの激励にチョウジといのはにっこり笑い、シカマルとルカは照れくさそうに微笑むと、アスマに背を向けて部屋へと足を踏み入れた。
*************
受験会場に入るともう数十人の幅広い年齢の各国の忍達がそこにいた。
四人はその雰囲気に少し圧倒されたが飲み込まれるわけにはいかず、それぞれ思い思いに気合いを入れながら歩みを進める。
奥の方へ行くと隅の方にスペースがあったので四人はそこに腰を下ろした。
いのとルカが壁に背を預けて座り、その前にシカマルとチョウジが二人を守るかのように立っている。
さり気なくそう持っていったシカマルにルカはお礼を言うと、シカマルは照れくさそうに笑ってかいつもの口癖を呟いた。
「…あーサスケ君だ!ねぇねぇ行ってきていい!?」
「……いいんじゃねーの?一応単独行動はあぶねぇからチョウジも一緒に行って来い」
「うん、わかった」
辺りを見渡していたいのが一点を見つめて顔を赤らめた。嬉しそうに笑ういのに、シカマルも仕方が無いとため息を吐く。
単独行動をしないと決めているので消去法でチョウジに声をかけると、快く付き添いに頷いた。
「行くわよ、チョウジ!」
「待ってよ~」
お目当ての少年を見つけたのでテンションが上がっているいのはチョウジを連れて離れていく。
二人になったのでシカマルはルカの横に腰を下ろした。
「ルカ、お前大丈夫か?」
「…うん。でも、人多い……」
「そうだよなぁ…、……めんどくせぇ」
人見知りで人が多い所が苦手なルカをシカマルは気に掛けている。苦手と言えど慣れていかなければいけない事なのと、これ以上どうしようもないので頑張ってもらうしかない。
見て分かるぐらい顔を顰めるシカマルにルカは苦笑いを見せながらも、ジッといの達がいる場所を眺めている。試験会場で何かが起こるわけないが、もしもの時は救出に向かわなければいけない。
「……ねぇ、シカマル君」
「なんだ?」
「…あの人…」
シカマルの服の袖を引っ張り、目で人を指すとシカマルも視界に入れる。
メガネをかけた白髪の青年で、いの達やそこに集まる木の葉の下忍の集団に近づいていき何か話しかけている。
正反対の場所にいるということもあり話の内容は聞こえないが雰囲気をくみ取ると何か注意をしているのかもしれない
「あの人がどうした?」
「…嫌な、予感がする……」
「あ?」
ルカの勘はよく当たる。青年を見るその目が恐れを秘めているのでシカマルは顔を顰めた。
「あの人は、いったい誰……?」
「…どういう意味だ?」
「…分からない。……けれど、あの人、自分がない」
「自分がない?」
「…だから、何者でも…ない」
何かを感じ取ったのだろう。周りに敏感なルカは青白く、その警戒している相手に気づかれない様に顔をそらした。
シカマルは俯く少女の横で悟られないようにさり気なく周りを確認する。
「他には?」
「……え?」
「他には誰を警戒していればいい?」
黙り込んだルカへと続きを促すようにシカマルはそっと小声で問いかける。
こういう時、ルカの感じる事に関心を示しておいた方が後に良い方向へと進む事はシカマルだけではなく第十班は全員知っていた。
「…なんで…」
「…俺たちはお前のその勘の良さを信頼しているからな」
「…!……ありがとう」
少しだけ微笑んだルカは顔を上げて辺りを見ると直ぐに顔を下ろす。
「……私は、うーん…。…音が危ないと思う」
「音?…音って比較的最近できたあの音隠れ?」
「…うん。…なんだか、とても嫌な予感がするの」
あやふやで何の信憑性もないルカの言葉を聞いて、シカマルは何かを考え込むようにガシガシと頭を掻いてため息を吐く。
見てみるが、特に悪い方の目立ち方はしていない。むしろいの達がいる木の葉の集団の方が悪目立ちしているだろう。
「…はーっ……めんどくせぇ」
それとなく嫌な予感がしてきたシカマルも項垂れるように顔を俯かせると、その瞬間目の間に足が見えた。
見えるというより自分たちの目の前に何処かの誰かが三人立っているのだろう。
ズボンなど見える範囲で該当する誰かを導き出そうとするが分からない。勿論知らない人物といえば他国の忍でしかない。
ルカもシカマルも慌てて顔を上げると目の前にはやはり知らない三人組が立っていた。年は同じぐらいだろう。
「はじめまして」
真ん中に立っている男の子はニッと笑いながらそう気さくに声をかけてきた。
両脇には女の子と男の子。声をかけてきたのは活発そうな子で後ろにいるのはのんびりしてそうな男の子と、物事をはっきり言いそうな顔立ちの女の子。
額当てをみると雲隠れの忍だということが分かる。
「……誰だあんたら」
シカマルが警戒しながら立ち上がると正面の男が慌てて小声で話す。
「俺達は雲隠出身で、俺はソルイ、後ろにいるのがファイ、紅一点がリノーラ。以後よろしく」
「……よろしくって…」
人の良さそうな笑みを浮かべているが、敵国の忍だ。
だがあまりのフレンドリーな態度でシカマルは拍子抜けし肩を落とす。
紅一点のリノーラがにっこり笑いながら同じ女の子のルカに話しかけた。
「こんにちは。改めまして私はリノーラ。貴方の名前は?」
「…私はルカ、水橋ルカ。こっちが奈良シカマル」
おどおどと、目線を合わせたり逸らしたりを繰り返しながら自己紹介をするルカに嫌な顔を一つせずにリノーラは笑う。
「そっか。ルカ、シカマル、よろしくね」
「……おぉ」
状況が分からない、と複雑そうに返事したシカマルにファイがくすっと笑った。
ルカは立ち上がり、リーダーであろうソルイに話しかける。
「……それで、なんで、貴方達は私達に話しかけてきたの…?」
「まぁまぁ詳しいことは座ってから、な?」
他国の忍同士、仲良しこよしの場ではない。そのため、もっともな質問をしたつもりだったが、ソルイは二人の腕を掴みしゃがむよう言った。
二人は警戒しながら座り、ソルイ達三人も座った。五人は円となったが、壁に背中を預けていた二人はそのままで、ソルイ達は他の受験生達がいる方へ背中を向けている。
それでいいのかと思うが、三人はニコニコ笑っているので必要以上に気に掛ける必要はないだろう。
「じゃあ本題に入るぞ」
「…うん」
「…俺たちはあんたら木の葉と砂、そして音に違和感を持っている」
「!?」
それまでの笑顔とは一転、ソルイから表情が消えた。
そしてその口から出てくる言葉に二人は顔を顰める。
「ここにいるリノーラはとても耳が良い。異常にな。…だからあんたらの会話も聞こえた」
「…会話って」
「あの木の葉の忍と音に警戒するとかどうたらこうたら…って話」
「!」
シカマルとルカは驚いてお互いの顔を見ると直ぐにソルイ達を見る。
「そこで、だ。…あんたらなら俺たちの話を聞いてくれると確信してな…思い切って話しかける事にしたんだ」
「……話って何?」
「それはこの中忍試験に感じる危険性と違和感、そして嫌な予感…ってとこかな」
話をするソルイ、聞き手に回っているリノーラとファイは真剣な顔でシカマルとルカを見つめている。
そのあまりの真剣さに二人も顔を引き締めた。勿論雰囲気に飲まれたわけではない、その話題が気になるからだ。
「俺は異常な程勘が良い。…この里に入ってからとても嫌な予感がしたんだ。特に警戒すべきは砂と音。…あとはあそこにいるあんたらの仲間に近づいている白髪の男、そして草隠れのやつら。……草隠れは警戒すべきはあの真ん中にいるやつな」
「……」
「…あんたらは頭が良さそうだし大人より柔軟性があるから言うけど…この中忍試験、何か起こるぜ」
「……!」
その確信には何の信憑性もない。先程のルカが言っていた音隠れに対する評価と同じようなものだ。現にソルイ自身も「勘」と言っている。
「…それを俺達に言って何になる」
シカマルは静かに警戒する様にソルイを睨みながら言った。どういう意図をもって木の葉で開催されている試験について、下忍ではあるが木の葉の忍に伝えにきたのだろう。
それとも試験前の敵国の忍に対する揺さぶりか。
だがソルイはそっと首を振る。
「…で、これから言うのが本当の本題。……俺達は今回中忍試験を受けたのをとても後悔している。この違和感…あまりにも危なすぎるからな」
「……それで?」
リノーラは片手ずつ、シカマルとルカの肩に手を置いた。
逃がさないと言わんばかりだが、その手に悪意は感じられなかったので掴まれた二人とも困惑する。
何をしたいのか分からない。
「あんたらと共同戦線を張りたい」
「は?」
「!?」
ソルイの誘いは二人の肩に手を置くリノーラと、微笑むファイとの総意なのだろう。
まさか他国の忍にそんな事言われるとは思っていなかったので二人は驚いた。
「俺たちは俺のこの勘に従い、適当な場所で中忍試験を落ちようと思っている。だが試験の決まりで全て終わるまでこの里からは出れない。…だからもし何か大変な事が起きたら共に戦ってほしいんだ」
「…その大変な事っていうのは木の葉で何かが起こる。…私たちは自分の命を守るけれど、より一層生存率を上げたい。だからもし何か起こった時に、共に行動するの。…その時の指揮は貴方達に任せる。……どうかな?」
突然現れてそんな事を言われても直ぐには決められるわけがない。ましてや下忍は上官である者達の命令で動くものだ、仮に手を取るとしても思う通りに行かないことぐらい分かっている筈だ。
これは罠だろう。そう心の中で思った二人の顔にその思いが出ていたのもかもしれない。その困惑を理解すると言わんばかりにファイは苦笑いを浮かべた。
「勿論断っても良いし、ソルイが言うにはその違和感…まだまだ先なんだ。…だからもっと考えてくれて構わないから、ね?」
「……いつでも良いがこれだけは言っておく。断っても良い。だがこの話は誰にも言うな。俺達はあんたら二人に話をしたんだ。あんたらの仲間にも、担当上忍にも、そうだな…火影にも言ってはいけない。…勿論今さっき言った警戒すべきやつらにも感づかれてはいけない。どこで誰が誰と繋がっているか分かったもんじゃねーからな」
「………」
「ま、ゆっくり考えてくれや」
ファイに補足するようにソルイが続く。
後でアスマ先生に相談しようという考えなど、直ぐに見破られた。勿論ファイが言っている事など無視をしてもいい。
困惑しながらもソルイ達を「観察」するルカとシカマルの目など全く気にすること無く、真剣な顔から一転、ニッと爽やかにソルイは笑った。
笑みで全てを誤魔化すつもりだろうか。
「……ねぇ、シカマル君。君たちの仲間…騒動に巻き込まれてるよ」
辺りを軽く見渡していたファイがシカマルに言った。シカマルは勿論ルカも慌てていの達がいる方向を見るとナルト達一向が音隠れと騒動を起こしていた。
先ほどうずまきナルトが大声で挑発していたのが原因だろう。
他国の忍であるソルイ達と会話をしていた二人には状況判断が出来ないが厄介な事になっている。
一度舌打ちをしたシカマルが腰を上げてルカの方へと振り向いた。
「いの達呼んでくる。ルカは…こいつらと一緒にいとけ」
「お?…他国の忍の中に女の子を一人置いていくのか?」
にやにやとまるで挑発をしているかのような物言いでシカマルに笑いかけるソルイは実に厄介で面倒くさい奴だとシカマルは思った。
勿論ソルイの言う事は正しいし、単独行動をしないと決めている第十班としてはお互いに離れるのは得策ではない。
「……馬鹿か。…あんたらさっきから色々言ってきたくせに今更そんな事言うのかよ」
「ははっ」
「…ま、あんたらは敵じゃないだろうしな」
その挑発をもろともしていないと言わんばかりのシカマルの言葉にソルイは片眉を上げた。
ソルイだけではない、リノーラもファイも反応した。
先程まではルカとシカマルが困惑し続けていたが、今度はソルイ達の番だとシカマルの目は物語っている。
「…おいおい…俺が言った事が全てただの嘘だったとか思わないのか?」
「そうだな。嘘だとは思ったが…俺はあんたらの言葉が本当に嘘だとは思わない」
突然話しかけてきた他国の忍の戯言など信用に値しないだろう。きっと誰でもそう思うし、話など聞かぬふりをするか、切り捨てる。
けれどシカマルはソルイ達の行動に困惑はすれど悪い気はしなかった。何より行動するにはリスクが高すぎたからだ。
木の葉の忍に雲隠れが接触している姿を少なくとも近くにいる受験生は見ており、ましてや二人と違ってソルイ達は他国の忍に背中を見せている。二人は壁に背を預けて部屋全体を見渡す事が出来るというのに、ソルイ達はそうしなかった。そう動かなかったのだ。
「何で?」
「…………勘、だ」
勘だと言って近づいてきた奴ら相手には勘で充分だ、シカマルは思っている言葉を全て飲み込んでそう呟いた。
だがソルイ達にはウケたのか、楽しそうに笑みを浮かべる。
「!…それは傑作だ!…あんたがいない間、ルカちゃんは俺達に任せな」
「…ったく…めんどくせー…」
この雲隠れの三人にか、それとも言い負かされた自分に対してか…お決まりの口癖を口にすると騒がしい一団へと足を向けた。
一人残されたルカにファイが話しかける。
「ルカ#ちゃん」
「な、に…?」
「僕は預言者じゃないし、占いが得意なわけでもない」
「……?」
今度は何を言われるんだ、とルカは座ったまま肩を大きく揺らして身構える。先程まではシカマルがいたが今はいないので自分だけで対処しなければいけない。
その身構える姿をみながらも、ファイはそっと「言葉」を口にした。
「ただこれだけは言っておく。ルカちゃん、君に嫌な相がでてるよ」
ファイは真剣な顔でそう言った。
「…嫌な、相?」
ルカは訝しめにファイを見る。
嫌な相と言われてもルカには何か分からない。
「まぁ君がこれを信じるか信じないのかは別として…。これだけは覚えておいて。
『君は近いうちに身近な人を失うだろう。それは誰にも止めることできず、そしていつ、だれが、どこでこの世から去るのかはわかない』」
「!」
ルカは聞き終わる前にサッと顔を青くした。直ぐに怒りを込めて顔を歪める。
ファイはただ冷静にルカを見つめた。透き通ったビー玉の様なガラスの瞳がルカを貫く。
「な、なんてことを…ッ勝手な事、言わないで…!」
「怒らないで、だから僕は占い師でも預言者でもない。だからもしかしたらこれはただの思い違いかもしれない」
身勝手な事を突然口にしておきながらファイの言葉は曖昧だ。
これは予言なのか、冗談による揺さぶりか。判断はつけにくいが、突然訳が分からない事を言い出したので悪戯心という可能性もある。
身近な人を失うと言われても気分が悪い。それが冗談であろうとも悪戯心であろうとも。
「…けど、もしかしたら…ってあるんでしょ…?不謹慎、だよ……!」
「そうだね。…でもあくまでも俺たちは忍。いつ死ぬか分からないんだからあんまり重く考えなくていいと思うよ」
「…………」
咎める言葉にファイはそれでも動じなかった。
いつ死ぬか分からない忍なのだから、と。明日死んでいるかもしれないし、そもそも試験一発目で死ぬ可能性もある。
不愉快だと顔を歪め続けるルカを前に、ファイは苦笑いを見せてルカの両手を掴む。
そして朗報だと言わんばかりに今度はにっこり笑った。
「あともう一つ。今度は君にとってプラスになること。
『身近な人を失う代わりに、君は近いうちにこれから一生を連れ添う大切な人に出会うだろう。似た者同士の二人だから、その人は君自身を理解し、そして君もその人を理解できるだろう』ってね」
「…………」
身近な人を失うの次は一生を連れ添う人と出会うだなんてあまりにも事が大きすぎる。
本当に何故今日会ったばかりの他国の忍にこんな事を言われなければいけないのか。
ルカは今日何度目かの困惑を顔に浮かべ、そんな彼女を見て楽しそうに見守っていたソルイが笑い飛ばした。
「ファイの「コレ」は当たるが、別に旦那とかそんなんじゃねぇだろうし、まぁ気楽にいけばいいぜ」
他人事だから笑い飛ばせるのだろうし、そもそも仲間同士だ。本人からしたらたまったもんじゃない。
もぞもぞと居心地悪そうにクマの人形を抱えながらルカはため息を吐いた。
「…でも、どうして…こんなこと教えてくれるの…?」
「あ?」
「こんな知り合ってばっかの私に…」
予言ではなく占いでもない「コレ」。いったい何が何だか分からないが、そもそも会ったばかりの人間に言うような事ではない。
その言葉があっているのか間違っているのかはこの際置いておくとしても、余計な火種を作る様な事をわざわざ――。
ソルイとファイとリノーラは顔を見合わせて笑いあうとソルイが代表して言った。
「共同戦線の事もあるけど、俺達試験管とあんたらの攻防を影からこっそり見てたんだよ。それで気に入ったんだ、特にあんたをね」
「………もう」
試験官による簡単な幻術を使っての妨害、つい先程の事なので記憶に新しく、はしゃぎすぎたという自覚はあるので少々恥ずかしい。
ルカは少しいじけた様にクマのくーちゃんを握りしめるとハァとため息を吐いて立ち上がった。
「…そろそろ、シカマル君達のとこに行くね」
ちらりと見た感じでは騒動は比較的鎮火している。そろそろ合流をした方が良いだろ。
着いて行こうか、というソルイの言葉にルカは首を振って断った。
「おう、分かった。じゃあお互いに試験頑張ろうじゃねーの」
「うん」
「…あの返事、楽しみにしてるから」
「……………うん」
小さく鳴った返事にソルイが苦笑いを浮かべながらも、三人には和やかに送り出されて早足でシカマル達の方へと向かう。
所々から聞こえるクマの人形を笑う忍達の声を無視して前を向いて歩く。
ソルイ達はクマの人形を笑わなかった。
「みんな…!」
近付いて皆を視界に入れた時、煙幕と共に試験管達が姿を現し、怒号が部屋の中で響き渡る。
音の忍と試験管のリーダー格のような男が言いあっている間にルカは漸くシカマル達と合流できた。