彼女は歩きだした。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
木の幹に背を預け、俯き動かなくなる少女。彼女が戦闘不能になったのは明らかだった。
そのままズルズルと地面に横たわる。
シカマル達はルカの名前を呼ぶがピクリとも動かない。
アスマもこの状況に顔を青くし、そして叫んだ。
「ルカ!ルカ!!……ッルカ!」
自分の受け持った生徒を死なせてしまう。申し訳なさとやるせなさ、そして自身の無力さを呪いながら少女の名前を呼ぶが返事はない。
敵はやっと邪魔者がいなくなったと言わんばかりに泣きそうになって固まっている三人にむかてゆっくりと近づいていく。
チョウジが二人の前に立ってクナイを投げるが、相手は簡単にクナイをはじき防ぐ。
「逃げろお前ら!!」
アスマが叫ぶが逃げられるわけがない。アスマやルカを見捨てるという事ではなく、足が動かないからだ。目の前で仲間がそういう状況に陥るのを見て、正常に動ける程、三人は忍として成長していない。
だが男たちがちょうどルカの投げ捨てた人形の横に差し掛かった時、か細い声が聞こえた。
「……『くー、ちゃん』…」
ルカの声だ。髪の毛で顔は見えないが、薄らと目を開けて口から血を溢しながら声を出している。
敵もその声に気が付き歩みを止めた瞬間、突然クマの人形が巨大化し男を一人殴り飛ばした。
「……うそ、だろ…?」
向かってくるのを見てチョウジの腕を引いていの共々守ろうと二人の前に立っていたシカマルが驚いて目を見開く。
勿論彼だけじゃなく、殴り飛ばされた男と共にいた忍も、アスマも、アスマを拘束している忍も誰もが驚いた。
クマの人形は大人の男性よりも大きな体で守ると言わんばかりにシカマル達の前に立ち、拳と拳で合わせてドスドスと音を立て相手を威嚇する。
「ルカの、人形が……動いた…?」
アスマはクマの人形の違和感がやっと分かった。少女のチャクラが流れていると分かっていたが、クマの人形の実態は分からなかった。
「(これは傀儡人形の一種…!)」
そして彼女のチャクラが流れているということは、それはすなわち『分身の術』の一種でもある。
彼女が大事に抱えていたのは人形と分身の術を合わせた、彼女だけのオリジナル傀儡の術。これに気がついたのはアスマだけだった。
アスマは少女を見ると少女は力尽きたのかもうピクリとも動いていない。
先ほどの人形を呼ぶ声を最後に本当に力尽きてしまったらしい。
けれど少女が力尽きたがクマは動く。
本来なら傀儡人形も分身の術も術者が力尽きたら動かなくなったり分身も消える。
けれど傀儡人形という媒体があり、分身の術という術者の意思が重なり合ったのでクマはオート式で動けるのだ。
クマに恐れた敵は何とかクマにに飛びかかるが、中身は少し特殊であるが普通の綿。
フットワークが軽い為軽々と避わし、相手に攻撃を食らわした。
もう一人を離れた方に飛ばすと瞬時に地面に人がる水に向かって走り出す。
その水はルカが先ほど作り出した水分身の残った水。
クマは地面に片膝をつけると手を水にあてる。
「っおい!何をする気だ!」
尋常ではないことだけは分かった敵は叫ぶ。
だがクマはしゅるしゅると縮んであっけなくただの人形に戻ってしまった。クマは地面に転がり動かない。
この場は静まり返るが一瞬にして敵は大いに笑い出した。突然のクマの暴挙に驚いて慌てたが、その熊の人形は普通の小さな子供が持つ人形に戻ってしまったから。
抵抗は「無駄な抵抗」だったのだ。
「なんだ、ただの不発かよ!」
「くっ…!」
ルカの傀儡人形が一筋の希望だったアスマはまた絶望する。
勿論自分がどうにかしなければいけないのだが、捕まっている以上どうする事も出来ない。
これじゃあ誰があの子達を守るんだ。
……だが、まだ終わってはいなかった。
少女とクマの人形、そしてシカマル達やアスマ、この場にいる全員を馬鹿にした様に笑う敵達は傲っていた。
実体が傀儡人形とは気がついていない故に、それが不発ではない事にも気がついていない。
クマは動かなくなったが水がうねりをあげて宙に浮かぶ。
それは人型になり、
彼女の姿になった。
「……ッルカ!」
いのは嬉しそうに叫ぶが、水でできたルカは表情もなければ目に輝きもない。ゾッとするような表情をしている。
水のルカは瞬時に印を組み口から大量の水を吐きだした。
『水遁―水龍弾の術』
吐き出した水は龍の形になり、相手に襲いかかる。襲いかかったのは勿論アスマを拘束する火遁の使い手。
油断をしていた自由に動く事が出来る忍達は愚かにも、術者を守る事が出来なかった。
敵が吹っ飛び、術も消え去る。
アスマが自由になった瞬間だった。