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最近放課後が楽しみだ
理由は家の近くにおしゃれなケーキ屋さんができたからとか、図書館に新しい本がたくさん入ったからとか色々あるけど、一番はやっぱり幸村くんの存在だ。
幸村くんはぎっくり腰で入院したおじいちゃんのお見舞いのときに出会った同い年の男の子で、迷子になった私を案内してくれてから交流が始まった。
おじいちゃんはもう退院したけど、幸村くんのお見舞いのために私は今日も病院へ向かう。
少ないお小遣いで綺麗なお花を買って跳ねた髪の毛を手ぐしで直してから、幸村精市と書かれている病室にノックを一つ。
「幸村くん、名前です!」
「どうぞ」
良く通る幸村くんの声で入る許可をもらうと、思わず大きな音を立てて入ってしまう。
病室では先程まで本を読んでいたのだろう幸村くんが私を見て微笑んでいた。その表情につい顔が赤くなるのを感じつつ、ベッドの近くにある椅子に座った
「今日は早かったね、苗字さん」
「えへへ、早く幸村くんに会いたくて頑張ってみた!」
「嬉しいな。でもあまり無理はしないで、心配だからね」
こんな彼氏と彼女みたいな会話をしてるけど、別に私たちは付き合ってない
私は幸村くんのこと好きだけど、幸村くんの気持ちはわからない。でも嫌われてることはないと思うし、こうしていられるだけで嬉しいから、これ以上の関係は望んでなかったりする。
今日あったこととか色々幸村くんと談笑していると幸村くんが思い出したかのようにそろそろ退院できるんだ、と言い出した。
退院、それは普通喜ぶことだ。
もちろん私だってよかったとかおめでとうとか思う。でも素直に喜べなくて。退院の日とか話してくれてるのに全然耳に入ってこなかった。
「そっ、か…
よかったね!これで部活戻れるもんね…うん、ほんと…おめでとう」
そう言ったあと早口で用事思い出したから帰るとか言って、病室を飛び出した。
まってって言う幸村くんの声なんて聞こえないふりして。
グルグルもやもやしてる気持ちのまま帰るなんてできなくて、広い病院内を歩いていたら初めて幸村くんと会ったベンチについた。
「…なんで素直に喜べないんだろ」
ベンチに座って思わずポツリと呟く
でも、本当は喜べない理由なんてわかってる
私と幸村くんは学校も違うし、住んでる地域だって違う。ただ病院で会って話すだけの女の子、なんて忘れられてしまうかもしれない。それに、退院したらもう会えなくなってしまう。
それが嫌なんだ。
だって私は幸村精市くんが好きだから。
これ以上の関係は望んでないなんてうそ。ただ断られるのも一緒にいれなくなるのも怖いだけ
「…寂しいよ、好きだよ」
つくづく自分はめんどくさい女だと思う。
勝手に飛び出して、勝手に自分の気持ち理解して涙が出てくる。本当に私ってめんどくさい
そろそろ帰らなきゃなのに、一度涙が出てしまうと止まらなくて。
周りに人がいないのをいいことに幸村くんへの気持ちを吐き出してると、後ろから誰かに抱きしめられた。変質者かと思い身構えたけど、ふわりと香る匂いは
「みつけた、苗字さん」
「ゆ、幸村…くん」
私を探してくれたのだろう、息を切らして私の肩に顔をうずめる。
その行動に、また涙が出る。
「僕はね、苗字さんが好きだよ」
「うそだ」
「うそじゃないよ」
「うそだぁ」
「なら、どうしたら信じてくれる?」
泣きながら、うそうそ言う私に幸村くんは優しく問いかける。
「キスしてくれたら信じる」
そう言ったら幸村くんは動きを止めて、そっと私の真正面に移動して視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「泣かないで、苗字さん…好きだよ」
ファーストキスは
しょっぱいのに幸せな味がした
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