競馬雑記

雨の宝塚、王者は王者だった

2026/06/22 00:55
 こんにちは!
 6月も残すところ、あと10日ほどとなりました。光陰レールガンの如しとはよく言ったものです。
 本日は先週の振り返りのみになります。もう春GⅠ戦線が終わってしまいましたので、新たなレースの予想は無しとします。GⅡ以下のレースともなると、私の知識がまったく及ばず、馬券を考察しようという食指も動かないというのが一番の理由です。好きだからといって全部を楽しむ必要はないでしょう。馬券はほどよく楽しむ大人の遊びですから(JRAもこのコピーを呼びかけていることは言うまでもありません。ギャンブル依存症への抑止策にもなっていますね)。
 さて、それでは参りましょう。






 先週の宝塚記念(GⅠ)が終わりました。
 ただし、今年の宝塚記念を振り返るにあたって、まず触れなければならないことがあります。
 大変残念なことですが、競走を中止したマイユニバース号が、急性心不全のため亡くなったことが報じられました。
 マイユニバース号のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。

 私が彼を初めて見たのは昨年9月の九十九里特別。彼が競馬ファンの間で話題となったきっかけでもある、条件戦の1レースです。
 厳しい残暑に焦がされたターフ。相棒・横山典弘騎手を背に、中山芝2500mを堂々7馬身差の逃げ切りで圧勝。「主役は遅れてやってくる」。菊花賞に届き得る素質を持つ上がり馬は、往々にしてこの言葉を付され評価されます。私はあの日、マイユニバースはその主役になるかもしれない、と確かに思いました。
 その勝ちっぷりが高く評価され、条件馬のまま菊花賞(GⅠ)に参戦しましたが、歴戦の春クラシック組には届かず、悔しい結果に。
 しかし、そこで敗れてしまった後も挫けることなく、今年3月には3勝クラス・湾岸Sを制して古馬オープン入りを果たします。そしてその次戦となった日経賞(GⅡ)で、堂々の重賞初制覇を成し遂げました。
 マイユニバースは再びGⅠ戦線に戻ってきました。上昇の勢いそのままに、鋭い末脚で強豪馬を飲み込むか? 彼はそんな期待の中で宝塚記念を迎えました。愛されし優駿たちの競演である春のグランプリ。マイユニバースは、間違いなくこの大舞台に値する素質を持った馬だったのです。

 レイデオロ産駒期待の一頭として今後更なる活躍が見込まれていたこともあり、このような結果はとても辛く、残念でなりません。
 マイユニバース、どうか安らかに。


先週の宝塚記念2026を振り返る


 それでは、宝塚記念2026の振り返りについて。レース前の私の予想を再掲させていただきます。
 詳しくはこちらをご参照ください。「美しい春の締めくくり

 ◎クロワデュノール
 ○タガノデュード
 ▲ミクニインスパイア
 △メイショウタバル
 △シェイクユアハート
 ☆シュガークン

 そして結果は……

 1着 16 メイショウタバル
 2着 5 クロワデュノール
 3着 1 ダノンデサイル

 △メイショウタバルが見事に勝利し、このレース連覇という偉業を成し遂げました。メイショウタバル&武豊騎手、おめでとうございます!
 武豊騎手はこれで2週連続のGⅠ制覇です。GⅠ最年長勝利記録をまた更新しました(57歳2ヶ月)。
 あなたは一体、どこまでレジェンドなんだ……リアルタイムで見ていた私は、友人とそんなラインを交わしていました。

 メイショウタバルについて簡単にご紹介します。父はゴールドシップ。母はメイショウツバクロ。石橋守厩舎の管理馬です。
 彼の道のりは、決して順風満帆ではありませんでした。
 3歳春、毎日杯(GⅢ)を重馬場で逃げ切り勝ち。しかも6馬身差の圧勝でした。あの時点では、一気にクラシックの主役候補へ名乗りを上げたように見えました。しかし続く皐月賞では17着。日本ダービーは出走取消。強烈な個性と才能の片鱗を見せながらも、春の大舞台では結果を残せませんでした。
 それでも秋には神戸新聞杯(GⅡ)を制覇。中京競馬場での開催に伴い、コース設定も変わったレースでした。芝2200m、稍重馬場での勝利は、のちの宝塚記念へつながる重要な一戦だったように思います。一方で菊花賞は16着。距離や折り合い、スタミナ配分の難しさが表れたレースでした。長距離で我慢して運ぶよりも、やはりこの馬は中距離で、自分のリズムを作ってこそ輝く馬だったのでしょう。
 古馬になってからの初戦も、日経新春杯11着と、すぐに軌道に乗ったわけではありません。しかし、その後ドバイターフからコンビを組むことになる武豊騎手との出会いで、彼は自らのリズムを掴み始めることになりました。
 2025年の宝塚記念で、7番人気ながら逃げ切り勝ち。ベラジオオペラに3馬身差をつけ、ついにGⅠ馬となりました。重馬場の毎日杯、稍重の神戸新聞杯、そして稍重の宝塚記念。振り返れば、パワーの要る道悪の馬場と芝2200m前後の舞台こそ、この馬の本領だったのかもしれません。
 かくして彼は、「暴走する逃げ馬」から「自分のリズムを守ってGⅠを勝ち切る中距離王」へ変わっていったのです。

 それから一年。GⅠ戦線で勝ち切ることはできないものの、単騎の逃げという武器を研ぎ澄ませてきたメイショウタバル。彼は史上3頭目の宝塚記念連覇をかけて阪神競馬場に乗り込みました。最大の壁となったのは、3月の大阪杯で惜敗した相手でもある現役最強馬・クロワデュノールでした。彼もまた、偉業達成に王手をかけた挑戦者だったのです。
 史上初の春古馬三冠か。史上3頭目の連覇か。戦いの火蓋は切って落とされます。

 6月14日。まるで示し合わせたかのように、阪神競馬場にはレース直前に強い雨が降り始めました。あっという間に重馬場に変わった阪神競馬場の芝コース。俄かに沸き起こるファンのざわめきの中、ゲートが開きました。
 逃げることが予想されていた大外枠のミステリーウェイがハナを取らず、代わりにレースを引っ張ったのが、昨年の有馬記念で2着に入ったコスモキュランダでした。メイショウタバルはその後ろ、2番手で折り合います。クロワデュノールは5番手あたりで追走という形の道中となりました。
 昨年は完璧なリズムでの単騎逃げを披露したメイショウタバルにとって、前1頭を見据えての競馬はやや居心地が悪いのではないか。彼がこれまで見せた勝利の方程式とは異なる。ファンは背に汗が伝うような感触を覚えながらレースを見守ったことでしょう。

 しかし、我々は目撃することとなります。GⅠ馬になり、5歳になり、武豊騎手という最高の指南役を得た彼が編み出した、新しい解法を。

 道中の構図は大きく変化しないままに、雨の吹き付ける最終直線へ強豪馬が滑り込んでいきます。気が付くとコスモキュランダのリードは縮み始めており、残り200mでメイショウタバルが先頭に変わります。少し後ろ、外から上がってくる黒い影は、やはりクロワデュノールです。それより後方集団の脚色は、それほど良くは見えません。重馬場に脚を取られたのか、先頭集団が作り出したマジックに絡めとられたのか。
 逃げるメイショウタバル。追うクロワデュノール。雨中の阪神競馬場には、奇しくも3月の大阪杯の再演のような構図が立ち現れます。
 大阪杯ではクロワデュノールが差し切ったこの展開。しかし、得意の馬場に助けられた前年の覇者は底力を発揮! 魂の押し切り態勢を我々に見せつけることとなります。クビ差でクロワデュノールを抑えつけ、見事に1着で入線。3着争いは、内で懸命に粘りこんでいたコスモキュランダを、中団やや後方から追い込んでいたダノンデサイルが寸前で差し切ったところで決着がつきました。
 前年覇者なのに、春古馬三冠を狙うクロワデュノールの影で、どこか挑戦者のように見られていたかもしれない彼。しかし、終わってみれば王者は王者でした。

 これは、単なる宝塚記念連覇ではなかったと思います。
 去年は「自分の形に持ち込んで勝った」宝塚。
 今年は「自分の形にこだわりすぎず、それでも勝った」宝塚。

 皐月賞で制御しきれず大敗したあの馬が、GⅠの大舞台で我慢し、最後にもう一度伸びる。メイショウタバルは、強さだけでなく、その強さが最も輝く使い方まで身につけたのだと思います。
 父ゴールドシップもかつて宝塚記念を連覇した名馬でした。もちろん親子の馬生を重ねすぎるのは乱暴かもしれませんが、重馬場、阪神芝2200m、そして見る者の記憶に残る勝ち方。メイショウタバルは、確かにその血を受け継ぐ馬として、宝塚記念の歴史に名前を刻んだことでしょう。

 そして敗れた◎クロワデュノールについても触れなければならないでしょう。
 父キタサンブラックが成しえなかった春古馬三冠に王手をかけながら、あと少しのところで阻まれてしまいましたが、負けて強しの競馬でした。近年は中距離王者が天皇賞(春)に出走する例が少なくなったこと、ドバイワールドカップデーが身近になったことなどから、中距離王者が春古馬三冠すべてに出走する事例はほとんど見かけなくなりました。ローテーションの厳しさもその一因であることは言うまでもありません。加えて今年は宝塚記念の開催が早まったこともあり、さらに過酷になりました。
 走り切るだけでも絶大な負担になるローテーションの3戦を、1着、1着、2着で飾る。クロワデュノールは競馬ファンの夢を最後の最後まで現実に近づけてくれました。

 末脚を発揮して3着に滑り込んだダノンデサイルについても触れたいと思います。先日の予想においては特に申し上げておりませんでしたが、彼の脚質を鑑みるに、最内枠にはフィットするのが難しいのではないかと思い無印としていた一頭でした。
 しかし、終わってみれば強い馬は強い。直線で巧く外の進路を突いては伸び、馬券内に付けてくる地力の高さは、さすがダービー馬と言わざるを得ません。近走は悔しい3着が続いている本馬ですが、まだまだGⅠ戦線で1着を狙う実力を保っています。メイショウタバルとともに2024クラシック世代のトップランナーとして頑張ってほしいものです。

 なお、別稿にて令和の「壬申の乱」の主人公たり得る存在とまで論じた、「競馬界の大海人皇子」こと☆シュガークンですが、17着。道中は先頭集団に必死に食らいついていましたが、第4コーナーを回るころには苦しくなったのか、後退してしまいました。
 今回は残念ながら歴史を動かすには至りませんでした。吉野からの挙兵はならず。あるいは、まだ山を下りる時ではなかったのかもしれません。
 しかし、こういう馬に夢を見てしまう時間もまた、競馬の楽しさの一部だと思っています。

 また、○タガノデュードは5着。馬券内には届きませんでしたが、人気を考えれば十分に見せ場のある走りだったと思います。クロワデュノール同様に大阪杯、天皇賞(春)、宝塚記念と春古馬三冠を皆勤し、そのすべてで大きく崩れなかったことは、やはりこの馬の地力を示しているのではないでしょうか。勝ち切るにはもう一段階の成長が必要かもしれませんが、今後もどこかで重賞戦線を賑わせてくれる存在だと思います。
 ▲ミクニインスパイア△シェイクユアハートについては、今回は厳しい結果となりました。重馬場、展開、相手関係。宝塚記念という舞台の難しさを改めて感じました。彼らのような穴馬に夢を見るのは楽しいですが、やはり春のグランプリは甘くありません。
 こうして、2026年の春GⅠ戦線は幕を閉じました。歓喜もあり、悔しさもあり、そして悲しみもあった春でした。だからこそ、競馬はただの勝ち負けだけでは語り切れないのだと思います。
 走り抜いたすべての馬と、彼らを支えたすべての関係者に敬意を。
 そして、メイショウタバルの宝塚記念連覇に、あらためて大きな拍手を送りたいと思います。
追記
本来は6/21中に投稿したかったですが。私用が立て込んでしまいました。
真夜中の日記更新、ご容赦ください。

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