名前を入力することであなたの名前でストーリーを読むことができます。
トド松、留学
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あんずちゃん。ボク、海外に留学することに決めたんだ。」
デートの途中。突然トド松から告げられた。
聞いてないよ、と言ったら
「言ってないからね。」
と返された。
“海外留学”
その短い四文字とは裏腹に、留学とは一度行ったらなかなか帰ってこないものである。
短くて短期留学の2週間や1か月。
長くて半年から1年。
中には期間を決めていない人もいる。
まるで彼の人生に私は必要ないと告げられているようだった。
彼が留学することを私に告げたのは、留学へ行く3日前。
そんな大事なことを、なぜそんなに急に言ってくるのか。
問い詰めたかったが、私にはそれをする余裕がなかった。
問い詰めてしまったら、「別れてくれ」と言われそうで怖かったのだ。
私は、トド松がいないと生きていけない。
留学に行っている間、私は正気を保っていられるだろうか。
そんなことをもんもんと考えているうちにいよいよ見送りの日が来た。
空港に着き、トド松と待ち合わせた場所に向かうと、そこには彼とよく似た顔、ほぼ同じ背丈の男性が5人いた。
「トッティ…!」
少し気まずさを覚えながら彼の元へ駆け寄る。
すると、彼のお兄さんたちが挨拶してくれた。
「おお!あんずちゃん!」
おそ松さんがにっこりと微笑んで手を振る。
「フッ、我がキュートなフェアリーの羽が羽ばたくのをその目におさめに来たか。」
カラ松さんは相変わらず。革ジャンにお顔付きタンクトップ。でも、そのタンクトップにはいつものカラ松さんの顔ではなく、トッティの顔がなんとスパンコールで刺繍してあった。
「これって・・・。」
そう呟いてカラ松さんのタンクトップに顔を近づけると
「わ!わー!見ちゃダメだよ!あんずちゃん!」
トッティが顔を真っ赤にしながらそのタンクトップを隠した。
「もう!カラ松兄さんのバカ!あんずちゃん来るし、人前で恥ずかしいからそのタンクトップ着ないでって言ったのに!」
カラ松さんに怒ってぽかぽかと頭を叩く。
そんなトッティがあまりにも可愛くて、いつも通りで…。
私の胸はきゅっと苦しくなった。。
それに、ああやって文句を言いながらも、タンクトップを私から見えないように隠す時、わざわざカラ松さんに抱きついていたのだ。隠すだけなら、抱き着く必要はないのに。
仲の良い六つ子。
彼もその一人なのだなと実感する。
「カラ松やめろよ・・・。あんずちゃんひいちゃうじゃん。ごめんね、このイタイヤツのことは放っといていいから。」
チョロ松さんがカラ松さんを軽く殴ってから私に笑顔を向ける。
チョロ松さんは、私を最初見たときひどく緊張してまともに話してくれなかった。悪意がないことはすぐに分かったので良かったが、なかなか慣れてくれなかったのを覚えている。トト子ちゃん以外の子が家にいることに違和感があったらしい。
「ドライモンスターの見送り?よく来たね。どうせ三日前くらいに急にこいつに知らされたんでしょ?ボク、海外行ってくるね☆とかって。」
そう声をかけてくれたのは一松さん。
一松さんは、最初は何を考えているのか分からなかったし、私が松野家に遊びに行った時、誰よりも私のことを警戒していた人。時々猫ちゃんみたいだなと思う。でも、挨拶から少しずつ言葉を交わすようになって、今ではそれなりには話してくれるようになった。
「トッティ、僕たちに言ったのは3時間くらい前だったー!あはは!あんずちゃん、トッティ留学してる間寂しかったら、一緒に野球しよ!」
いつも笑顔で出迎えてくれる不思議な十四松さん。十四松さんは過去好きな人とうまくいかなかったことを話してくれたことがある。その時とてもつらい思いをしたらしく、トド松には幸せになってほしいと思っているらしい。
そして驚いた。我が彼氏トッティはなんと家族に飛行機が飛び立つ3時間ほど前にようやく告げたらしい。それならば、彼女である私が3日前に告げられたのはまだ彼の中では良い方なのかもしれない。いや、常識的に考えるとおかしいタイミングではあるが。
「やだよ…トッティ…。海外留学なんて…寂しい。」
トド松の袖をキュッと掴む。
「あはは、大丈夫だよ。さっと行ってさっと帰ってくるから。」
頭をぽんと撫でてくれるトド松。
「それでも寂しい…。ねぇ、本当に行っちゃうの?」
「うん。これは、僕がずっとやりたかったことなんだ。」
「うん…。」
「だから、寂しい思いさせちゃうけど、あんずちゃんには応援していてほしい。」 あんずを抱きしめるトド松。
そのぬくもりが、すごく優しくて安心させてくれた。
「……外国の綺麗な女の人と浮気したら許さないから」
「どこにいても、あんずちゃんのことは忘れないよ。誰のことも目に入らない。ボクって、意外と一途なんだよ?」
へへっと笑う。
抱きしめられているから少しだけ顔を上げてトド松を見るあんず。
「うそ…。ドライモンスターだから、あっちの生活の方がボクに合ってる~。なんて言って手紙だけ寄越してそのまま移住するんでしょ?」
トド松はあんずの目をしっかり見た。
真っすぐにこちらを見つめる綺麗な瞳にドキッとする。
「そんなことしない。ボクは絶対に帰ってくる。父さんに母さん、兄さん達がいて、ボクの大好きなあんずちゃんがいるこの場所に…。必ず帰ってくるから。」
「うぅ…グスン…。」
トド松はあんずの頭を撫でる。
「泣かないで…。あんずちゃんが応援してくれてるって思ったら、ボクは向こうで1人でも頑張れると思うんだ。」
暗いところが怖くて夜1人でトイレに行くこともできないトド松。
私の家にお泊りデートしたときも、そんなに距離はないのに夜に起こされてトイレに付き合ったっけ…。
そんな臆病なトド松が海外留学。未だに信じられない。
「トッティ…。」
ほんとに1人で大丈夫?そう聞こうとしたけど、トッティの方がしゃべりだすのがはやかった。
「あんずちゃんの方こそ、ボクがいない間に兄さん達に行ったらダメだからね?まあ、こんなクソどものことわざわざ選ばないと思うけど。」
初めて見たトド松の独占欲のようなもの。それが嬉しかった。
お兄さんたちは「ひどいぞー!」「お前の方がクソだー!」などとがやがや騒いでいる。
そんなお兄さんたちをキレイに無視して
「あんずちゃんは、ボクを選んでくれた…。世の中にたくさんいる男の中から…、誰が誰でも同じだったボク達六つ子の中から、このボクを選んでくれた。」
こんな感動的なことをサラっと言われてしまった。
でも、素直にうれしい。
目の前で抱きしめあっているトド松を選んでよかったと心から思った。
「うん…。」
トド松のあんずを抱きしめる力が強くなる。
「だから、あんずちゃんにはここで待っていてほしい。ボクの成長を…帰ってくるのを…。ボクが慣れ親しんだこの赤塚の地で。」
留学にはまだ行っていないのに、もう逞しくなった気がする。少し寂しい。
でも、彼を応援して、彼の頑張る糧になれるのは私だけかもしれない。
そう思うと
「…頑張って」
素直に言えた。心の底から出た言葉だった。
「私、ここで待ってるから…あなたのこと…!」
涙が溢れる。
「あなたのこと、大好きだから…愛してるから、私、ここであなたを待ってるから…トド松。」
寂しい。ダイスキ。応援してる。愛してる。頑張ってほしい。行かないでほしい。
いろんな思いが溢れて止まらない。
「ボクも愛してるよ…。」
トド松の大きな瞳からも涙が零れる。
「トド松…!」
「あんずちゃん…!」
すがるようにお互い抱き着いた。
「今だけ…少しだけだから」
お互いに視線を絡ませながらキスをした。
「「さよなら…。」」
今よりも成長したあなたに、また会えるその日まで…。
1/1ページ