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あなたの隣で(♀化 名前響希 「幸せ~」の続き)

肌寒さを感じた響希は身近にあった温もりを手繰り寄せた。
その温もりをぎゅっと抱きしめる。すると温もりの方から声がした。
「どうした?」
その声に頭がぼんやりと覚醒を始める。あたたかくて、そして、自分が一番安心できる声。
目を開けるとそこにはヤマトの端正な顔があった。ああ、そういえば昨夜ヤマトの家にお泊まりをしたんだったと思い出す。ヤマトの手のひらが頬に触れ、思わず目を細める。
「さむかったから…」
だから思わず腕を掴んだのだとまだ覚醒しきっていない為にたどたどしい口調で告げればそうかと返ってくる。そして次に腕を解けと言われ、渋々離すと今度はその腕が響希の背中へとまわりそのまま抱きしめられた。
「こちらの方が暖かいだろう?」
「ありがと」
礼を言いそのままお言葉に甘えてヤマトにすり寄る。ああ、なんてあたたかくて、安心できる場所なんだろうか…。

 それから一時間後、身支度を整えた二人は朝食を取っていた。
「響希、お前は寒がりなのか?」
ふとそう問われてそうだと返せばヤマトはどこか嬉しそうだった。その理由を問うとこれから冬に近づくにつれて今朝の様な事が毎回起こるのが楽しみだと言う。そう言われた響希は顔を赤くしてヤマトから目を反らす。自分の方を見るように言われるが、まともに顔が見れない。
「だって…ヤマトが嫌がらないのはうれしいけど、やっぱ恥ずかしいんだもん…」
それくらいで恥ずかしがる事はないだろうと言われ、思わず昨夜の事が脳裏に浮かび、益々ヤマトの顔が見れない。そんな響希にヤマトが告げる。
「夏場は暑いだろうと思っていたのと、起こしてはならないと思い、抱きしめていなかったが…今後はお前を抱きしめて眠ることにしよう」
寒がりなお前の為だ。と、そう彼は言ってのけた。響希は彼の気遣いと、くっついて眠れる事が単純にうれしかったのだが、それを言うと完敗する気がした。
「そ、それより!今日はどうする?」
話題を変えようと切り出すと逆にどうしたいかを聞かれ、返答に窮する。昨晩の名残で出来るだけ外出は控えたかったからだ。だがそれを言って昨晩の事を蒸し返すのも恥ずかしくて気が引けた。そんな事を考えて返答が遅い彼女を知ってか知らずかヤマトが今日はここで二人で過ごしたいと告げた。二つ返事で響希も了承した。

二人で手を繋ぎ、並んでソファーに座っていた。いつからそうしていたのかわからないくらい自然と手は繋がれていた。特に言葉を発する事もなくしばらくそうしていた。
居心地がいいなぁと響希は思う。彼にとってもそうであって欲しいとも。
セプテントリオンやトリアングルムと戦っていた頃からは比べ物にならないくらい穏やかで平和な時間が流れていく。ふとヤマトが響希の手を強く握った。どうしたのかと問えばお前を失うのが怖い、そう告げられる。普段弱音を吐かないヤマトが珍しいと彼の方を見れば、空いた手で頬を撫でられた。その瞳は震えている様に見えた。
「お前がいなかった二周目の世界を思い出していた…」
響希が存在しなかった二周目の世界の話はみんなから聞いていたし、ダイチからはヤマトのおかげで何とかなったと、響希の消失で気力を失っていた自分達を奮い立たせたのは他ならぬヤマトだったと聞いていた。だからこんなにも弱々しく語るヤマトが意外だった。それが彼にも伝わったのか、彼は苦笑して言った。
「私には世界を守る義務があるからな…だから表面上は平気な振りをしていただけだ」
心の中では気が気ではなかったと、そう告げる。
「トリアングルムの襲来は予想外だったが、私にとってはお前を取り戻す好機だった」
トリアングルムを葬り、世界を巻き戻す際に響希のデータを修復するつもりだったと彼は言う。あの結果でもあの選択が出来たのはずっとその事が頭にあったからだと彼は言った。
「ありがとう。…それからごめんね」
「謝る必要はない。失いたくないから取り戻した、それだけだ」
取り戻せて良かったと、小さく安堵した声が聞こえた。そんな彼に響希の胸は絞めつけられた。一番大事な人に、こんな思いをさせているのが自分だと思うと仕方がなかったとはいえ自分が許せなかった。そして思う。この人の傍を絶対に離れないと。その事を伝えようと彼にそっと触れるだけのキスを送った。ヤマトは少し驚いたような顔をして、それから今度は向こうからキスをしてきた。触れるだけのものとは違って、深く、貪るようなものだった。
「んっ…」
思わず声が漏れる。彼はきっと不安なのだろう。そんな必要はないのだと必死で彼に応えた。
「はぁっ…やま、と…」
必死に呼吸を整えて言葉を紡ぐ。どうしたと返って来たので握ったままだった方の手を今度は響希が強く握る。
「俺はもう、絶対にヤマトから離れないから」
その言葉に彼が目を見開く。
「ずっと、お前の隣にいる。約束する」
「…それは返事と受け取っていいのか?」
「返事って?」
「新世界では私の隣で生きろと、既にそう言った筈だが?」
ああ、言われたな、と記憶を思い起こす。でも返事とは?もしかしてあれってヤマト的にはプロポーズの言葉だったりしたのだろうか?
「で、どうなのだ?」
ヤマトの顔が近づく。その瞳は先ほどの震えを微塵も感じさせないほどに強かった。
ああ、敵わないな。そう思った。
「返事で、いいよ。俺は一生ヤマトの隣で生きる」
そう告げた途端強く抱きしめられた。少し苦しいくらいに。
耳元で彼が真剣な声で言った。
「私も、一生お前の隣で生きると約束しよう」

これからもずっと、あなたの隣で。
ああ、なんて幸せなんだろうか。

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