君と、永遠を。
あの騒動を鎮めてからというもの、私と大和の日々は途端に忙しくなった。というのもいろんな神様が私たちの次世やそのまた次、さらにその次の世の縁結びと引き換えにいろんな問題を解決しろとやってくるようになったからだ。その問題は穢れがらみが多かったが、偶に舞い込んでくる神界がらみのものが厄介だった。具体的に言うと神界に連れて行かれると私はともかく人間の大和の身体は神界ではもって三日。なので持ちかけられた問題は最大でも三日以内に片付けないと大和は神界で暮らさなければならなくなってしまうのだ。因みに神界の仲間入りをすると最初は人々の信仰心を集める為に小さくてぼろぼろのお社に住まわなければならないらしい。そこには神様一人が住むのがやっとで、大和が神界の仲間入りを果たしてしまうようなことになったら大和が二人で住めるお社になる信仰心を集めるまでは私はあの私そっくりな神様の元に預けられるという事になっているらしい。大和も私もそんなのは嫌なので、必死に問題解決にいそしんでいたのだった。
「こないだはありがとな! おかげで穢れも綺麗さっぱりよ!」
十五歳くらいの男の子の姿をした神様が、昨日解決した問題のお礼にやって来ていたところだ。彼のお願いは彼が治める地区に大量発生した穢れを浄化することだったので、それほど問題はなかったが、こうして律義にお礼に来る。というか私たちに直に頼み込んできた神様は必ずお礼に現れてくれるものだから、最近では神様が以前よりずっと身近な存在となっていた。
「縁の神にもちゃんとお前らの縁を固―くむすんどいてくれって頼んどいてやるからな!」
そう言い残すと彼は神界へと帰っていった。
「あの縁の神で大丈夫かな?」
「……まぁ無いよりはいいだろう」
神様が帰った後そう私達が呟いたのには訳がある。実はその縁の神直々に依頼があった事があるのだ。それは神界がらみのもので、縁の神にもどうにもできない浮気癖の酷い男の神をどうにかして欲しいというものだった。完全に神界の問題だし、神界では大和は三日しか猶予もないし、断ろうと大和はしたのだが、断れば私と大和の縁を切ると言われ、拒否権が無かったのだ。
そのまま神界に連れて行かれ、連れて行かれた先には怒る女の神様とその神様に土下座して謝る男の神様。どうやら依頼されたのはこの男の神様の様だ。
「この男だ」
「お、縁の神じゃん! 相変わらず美人だねー!」
「オイ、てめぇまた他の女に……」
言い争いが始まりそうだったのを、縁の神様が手で遮って二人の神様に私と大和の事を紹介した。そしてそのまま縁の神様は忙しいとかでその場を去って行ってしまった。残された私たちはどうしたものかと顔を見合わせてしまう。
「これはこれは……」
「な、なんですか……?」
男の神様に舐めまわすように見られ、居心地悪くしていた私と男の神様の間に大和が割って入る。すると男の神様はこんなことをのたまった。
「顔もかわいいしスタイルも抜群! いいね! 次は君に決めた! 早速デートしない?」
「は?」
大和が間に割って入っているとはいえ、確かに私を見てそう言ったので、なるべく理解しようと耳を傾けたが、出た言葉は何とも間の抜けた声だった。
「テメェ! いい加減にしろ! さっきまで土下座してたのはどこのどいつだ!!」
女の神様が男の神様の胸倉をつかんで揺さぶるのにも男の神様の視線は私を向いている。それに呆れていると大和が女の神様の肩を掴んだ。途端に女の神様は大和を振り返った。
「んだ? テメェ! こいつ庇うってんなら……」
「代われ」
大和の絶対零度の低い声がその場に響いた。女の神様も男の神様も大和が何を言ったのか理解が追い付かなかったらしい。
「代われと言っている。さっさとしろ」
「お、おう……」
女の神様が大和の剣幕に押され慌てて男の神様を離した。そしてその胸倉を今度は大和が掴む。
「や、野郎には用事がないっていうか、お兄さん、目が座ってますよ?! 目が、目がこわlp@lqpc?!?!?」
哀れ男の神様は、大和の手により消滅寸前までボコボコにされたのだった。
そしてその後血を流して倒れる男の神様の手を強引にとり、その場で大和が作った術式の文に血判を押させた。そしてヤマトはその文を女の神様に手渡しこう言った。
「あとはこの男が他の女に懸想した時に発動する呪術をお前が込めるだけだ。好きな呪術をその文に込めろ」
呪術。なんともおそろしいが、浮気性にはそのくらいは必要だろうと思い私も黙っていた。すると女の神様は思いついたというようにこう言って念を込めた。
「こいつが他の女に一瞬でも気を取られたら、男の大事な部分が切られる痛みを感じますように!」
そう言った後これでいいのかと女の神様が言うのに大和は頷く。そこへ男の神様が目を覚ましたようだった。
「そこのお兄さん、なんの恨みがあって俺をこんな目に……」
「貴様が人の嫁に懸想などするからだ。それから、今後はその浮気癖を本気で何とかした方がいいぞ」
でないとそのうち死ぬ。大和がそう言うのに先程の呪術の事を思い出す。女であるからその痛みというものは想像もつかないが、大和の言葉から察するに大変なものだという事だけはわかった。私が男の神様に視線を送ると、それに気づいたのか男の神様が私を見た。その次の瞬間、男の神様から物凄い絶叫が上がり、再び彼はその場に突っ伏したのだった。
「という事になるようになっている。後はお前の好きなように監禁でも何でも好きにしろ」
「あ、なるほど監禁ね~。それはいいかも」
大和と女の神様が何やら不穏な会話をした後、私たちは人界へと戻ったのだった。その後その男の神様がどうなったのかは知らないが、お礼に来た縁の神様が心を入れ替えたようだと話していたことからとりあえず生きてはいるらしいという事しか私達も知らない。
通常の祓いの業務から、そんな神様たちからの依頼を受けたりしながら私たちは忙しいながらも穏やかな日々を過ごしていった。
大和の父親も最後の最後には私を認めてくれた。大和を頼むと私に告げ、彼は常世へと旅立った。その後もいろんな出会いや別れを繰り返し、私たちは気づけば齢も八十を超え、最後の最後に大和は私を宝玉から解放し、彼は眠るように亡くなった。私は彼を待って二人で手を取り合って常世へと旅立った。
それは私が死んだあの桜が散る日の四日後だった。
