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初恋は実らない?♀(名前響希)

「峰津院くん!私と付き合って!」
「断る」
これで今月に入って何回目になるかわからないやりとりに、ヤマトはうんざりしていた。


「で?結局何人ふったのお前?」
放課後幼なじみと待ち合わせして入ったカフェ。自分の目の前に座るダイチの言葉にヤマトは覚えていないとうんざりしながら答えを返した。そんなヤマトにダイチは羨ましそうに言う。
「俺なんて高校生やってて一回もなかったよ…」
「ダイチの良さは俺達がよく知ってるから!」
とフォローになっていない言葉をかけたのはダイチの隣に座る響希だった。
そんなダイチと響希はこの春高校を卒業し、無事同じ大学に通っている。
高校の時は昼休みや放課後を殆ど一緒に過ごしており、そのなごりか二人が大学に入った後も放課後にはこの三人はよくカフェに集まっていたのだった。
「で?ヤマトが告白ラッシュ受け始めたのって新学期入ってからなんだよね?でもどうしてだろうね?今まではヤマトに告白してくる子いなかったのに」
響希がそういうのにダイチがそれはお前が居たからだろ、と言うが響希もヤマトも分かっていないようでダイチが肩を落とした。
「でもヤマト、それだけ好かれてるってことなんだし、良いなぁ、って思う子いたら付き合ってみたら?」
響希が言うのにヤマトは眉を寄せる。
「何故ろくに知りもしない相手と付き合わねばならんのだ」
「でも付き合ってみたら好きになるかもよ?」
響希が言うがヤマトは信じられないといった風だった。そんなヤマトに告白する女子にダイチは心のなかで合掌した。
「それに!そんな事ばっかり言ってたらいつまでたっても彼女出来ないよ?」
「別に彼女など必要ない」
そう言いきるヤマトと、勿体ないなぁと呟く響希だった。
「あ!でもヤマトも大学入って新しい出会いがあれば考え変わるかも。俺みたいに!」
響希が唐突に言った言葉、その最後にヤマトは反応した。
「どういう事だ?」
「素敵な出会いがね、あって…」
ヤマトの問いに頬を染めて呟く響希はまさに恋する乙女、という言葉がふさわしい。
そんな彼女にダイチは呆れていた。
「こいつ最近この話題ばっかなんだよ……」
「悪い?!」
響希が怒るのにダイチが慌てて悪くないと答える。ヤマトの目にはそのやり取りは写っていなかった。そんなヤマトに気づかない響希はヤマトに説明した。
素敵な出会い、というのは大学に入りたての頃、各サークルが勧誘活動を行うなか、とあるサークルが響希を離そうとしないのをその人物が助けたらしい。響希は2つ返事で助けてくれた人物のサークル、写真部に入部したそうだ。
「とっても優しい先輩でね!」
響希が熱を込めて話を続けるもヤマトの耳には殆ど入ってこなかった。
「お前って案外ちょろいよな~。なぁ?ヤマト?」
「そんなんじゃないもん!」
ダイチが言うのに響希がダイチを殴る。
「…信頼に値する人物なのか?」
声を捻りだしヤマトが問うのに響希はこれから知っていくと言う。
「だからヤマトも応援してね!」
響希の言葉にヤマトは頷くことは出来なかった。

それから1ヶ月が経った。つい最近、響希は話していたサークルの先輩と付き合い始めたのだと、だから放課後会う時間が減ると言っていた。その言葉通り響希はその先輩とのデートで、今カフェにいるのはダイチとヤマトだけだった。
「…俺らもそろそろ響希離れの時期かなぁ…」
ダイチが呟くのにヤマトの眉間のシワが濃くなる。
「その男だが、大丈夫なのか?」
「んー、響希の話では大丈夫そう。ただ、トントン拍子に行きすぎてるのは気になるっていうか…」
「というと?」
ダイチの話ではその先輩は顔もいわゆる爽やか系で、一年の女子に人気らしい。そんな引く手あまたな男だが、意外にも告白したのはその先輩かららしい。響希も喜び2つ返事で了承したらしいが、こんな短期間でそんなに上手く行くものなのか?と。彼女いない歴生まれた年数なダイチは俺にはよくわかんねぇけど。と付け加えた。
「まぁ響希は彼氏も出来たし、問題は俺らじゃね?」
「私は関係ない」
ダイチが言うのにヤマトは冷たく返す。
そしてそれから一週間が経った。その日の放課後はダイチは用事でおらず、響希は変わらず先輩とのデートだという。ヤマトは一人本屋にでも寄って帰ろうと街を歩いていた。
あれから響希の事が気になって仕方がない。響希の初恋が叶ったというのだから、幼なじみとしては祝福してやらねばならないのかもしれないが、よく知りもしない男が響希を自分達から奪っているのかと思うとどうにも許せなかったのだ。一体どんな男なのかは知らないが自分より勝っているのか?響希が最初にその先輩の話した時の事を思い出すと今でも胸にもやがかかる。また響希の事を考えていると気づいたヤマトは思考を切り替える為に顔を上げた。するとそこに居たのは響希と、見知らぬ男。見知らぬ男に話しかける響希。男が響希の腕を取り歩きだす。自然とヤマトの足はその後を付いていった。

男が進むのに響希は少し小走りになっている。その強引さに、響希を気遣えないのかとヤマトが睨むが二人が気づくはずもない。そのうち繁華街を抜け、辺りにはラブホテルが立ち並び始めた。ヤマトが見ると男が響希をそこに連れ込もうとしている。何も考える事なくヤマトは動いていた。
「彼女を離せ」
ヤマトは男が響希の腰を掴んでいた手を引き離し告げた。
「誰だお前?!」
「ヤマト!」
響希が安堵し、男に告げた。
「迎えが来たんで俺帰ります。あの、今までありがとうございました!それからごめんなさい!」
言い切ると呆然とする男を放置し響希はヤマトの手を取ってその場を後にした。
無言のまま暫く歩いていたが響希が説明すると告げた為に手近なカフェへと二人は入った。


「実は、ね…あの人、俺の事が好きな訳じゃなかったの」
響希が話すのに先を促すと響希は困ったように続ける。
「その、最初のデートから家に誘われて…なんか、変だなって思って家には入らなかったんだけど…その後も家に誘うのは勿論、他にも他の男の人も一緒の飲み会に誘ってきたりして、その、おかしいなって…それで、今日、試しに別れ話持ち出してみたら、結果があれ」
そう話す響希に先程自分が居て良かったと心の底からヤマトは思った。
「だからさっきヤマトが来てくれて助かったよ。どうにかして逃げるつもりだったけど、失敗してたら、って思うと…」
「…信頼に値する人物なのかと聞いただろう…全く…」
「………うん、ごめん」
「すまない、初恋でこのような仕打ちを受けたお前に言うべきではなかったな…」
響希が俯くのに初恋でこのような仕打ちを受けた響希が傷ついていない筈がないと気づいたヤマトが彼なりにフォローを入れた、つもりだった。が、その言葉を聞いた響希が顔を上げた。
「初恋?俺の初恋あの人じゃないよ?」
響希の言葉に自分の知らないうちに響希が誰かを好きになっていて、尚且つそれを黙っていたのかと思ったヤマトは何故だか無性に腹が立った。
「違う?ではお前の初恋は誰だ?」
「………知らない!ヤマトのバーカ!!」
ヤマトの言葉に途端にへそを曲げた響希はそのまま詰問を続けるヤマトを無視し家へと帰ったのだった。


「……はぁ、お前そういう怪しい話は相談しろ」
翌日、放課後三人で集まった際昨日の出来事をダイチに話した彼の第一声がこれだった。
ヤマトも同意する。
「ごめんなさい。もし向こうに悪意がなかったら悪いなって…」
「被害を被るのはお前なんだぞ?!もっと自覚しろ!!」
「今後は少しでも怪しいと思えばすぐ相談しろ」
ダイチとヤマトにステレオで説教を受けた響希はごめんなさいとはいを繰り返す。
「まぁ何もなくて良かったけど、ちゃんと別れられそうなわけ?」
「…わかんない。一方的に言っただけだから…」
響希が今日もメールが来てたけど無視したと言う。
「……ああいった輩は一度思い知らせてやらねば」
ヤマトが不穏な空気を出しているのに苦笑いした二人はあまり過激な事はするなとヤマトを止めはしなかった。
「……そういえば、響希の初恋の相手を知っているか?」
ヤマトがふと思い出したようにダイチに問うのにダイチはため息をついた。その様子にダイチも知っているのだと悟ったヤマトはダイチの襟を掴んで睨んだ。
「ぐぇぇ!!言う!言うから!!」
ダイチが苦しさのあまり言えばヤマトはすんなりダイチを解放し続きを促した。
「お前だよ!お前!」
「は?何を言っている?」
ヤマトが再びダイチを締め上げようとすると響希が怒って言った。
「ヤマトってば俺の事ふったの全然覚えてないの!酷いよね!」
響希のその言葉にヤマトは目を丸くする。
「お前に告白された覚えもふった覚えもないが?」
「あー、まぁ一番最初に会ったときだし?覚えてなくても無理ねぇか」
三人が最初に会ったのは近所の公園だった。いつもの様に響希とダイチが公園で遊んでいると、そこに一台の黒塗りの車が止まり、中から銀髪の子供が出てきたのだ。その珍しい髪色に、ダイチは最初子供心に相手が普通の家の子供ではないと思ったのだが、響希は違ったらしく、新しく現れた友達に駆け寄って一緒に遊ぼうと告げたのだ。ここまではヤマトも覚えていた。問題はその先、ヤマトが帰る際、また会えるか響希が聞くともう来ないとヤマトは言う。響希はヤマトを好きになっており、ヤマトとどうしてもまた会いたくて仕方なかった。そしてヤマトが好きだから会いに来て!と告げたという。ヤマトの返答は私はお前の事など何とも思わないから来ない。だった。そう言ってそのまま黒塗りの車に乗って帰ってしまったのだ。
「あの後響希大泣きでさー、泣き止ますのに俺がどんだけ苦労したか…」
「仕方ないでしょ!もう会えないと思ったんだもん!」
響希が赤い顔をして言うのにヤマトは首を捻っている。
「ってそのわりに次の日今度は軽自動車で公園に来たんだもんな、お前」
「そういえば、もう来ない、って言ってたのに何で?」
ヤマトは言葉に詰まった。響希に言った言葉は全く覚えてないが、帰ったあと、何をしていても響希の笑顔が忘れられなくて社会勉強すると強引に親を説得してあの公園の近くに世話係と共に引っ越したのだった。
「言う必要はない」
「俺をふっといてそれ?!吐けー!!」
ヤマトが言うのに今度は響希がヤマトの襟を掴んで叫ぶ。ヤマトは響希に揺さぶられながらも固く口を閉ざしている。まさか今頃ふった相手が初恋の相手でした、なんて言えるわけもない。
「まぁ、ヤマトはともかくとして、お前どうすんの?」
ダイチが問うのに響希は明日話を付けてくると言う。響希を心配した二人は話をつけるときはダイチを同伴させると言うことで話がまとまった。

翌日、呼び出した先に現れた男は悪びれもせずなんだ、一人じゃないのか。と言った。
「一人にさせるわけねーだろ!」
ダイチが言うのに男が訪ねる。
「で?こないだの高校生といい、そいつといい何?」
「幼なじみです」
響希が答えるのに男は笑った。
「なんだ、だったらどうせそいつらともしてんだろ?一回くらい俺にも味見…」
「最低な野郎だなてめぇ!」
響希を庇いダイチが男を睨む。
「……残念だな。俺の仲間も早く味見させろってうるさかったんだけど…仕方ない。別れてやるよ」
「本当ですか?」
響希が疑いを込めて問うのに男が本当だと答える。なら話は終わりだとダイチが響希を連れ部屋を出ようとすると男が告げた。
「俺の顔に泥を塗ったこと、後悔させてやるよ」


その一週間後だった。ダイチがクラスの友達から噂を聞いたのは。
「お前久世と仲いいだろ?その、やったの?」
「は?何を?」
「その、セックス…」
その言葉にダイチが飛び上がり否定する。友達はあれ?という顔をした。
「何でそんな話になってんだよ?!」
「え、お前知らねぇの?久世は言えば誰とでもしてくれるって、しかもすんげぇ良いって久世としたって言う奴が言ってるって噂になってんぞ?」
その言葉にダイチは舌打ちをし、響希の元へと走った。
ダイチが響希の元へとたどり着くと響希は数人の男子生徒に囲まれていた。ダイチは慌ててその中から響希を連れ出した。
ヤマトと待ち合わせしているカフェへと入り、三人が揃ったところでダイチが説明した。
「…そういう話ばっかり持ちかけられると思ったら…」
響希がため息をついた。噂を流した犯人は間違いなくあの男だろう。響希は周りの様子がおかしいと感じてから一人になることを避けていた。
「…これじゃ危なっかしくて一人で大学行かせらんねぇよ…」
あの野郎!とダイチが怒鳴る。そんな二人にヤマトは考え込んでいた。
「……要は響希には手を出せない、いや、出せばどうなるかわからない。と知らしめれば良いのだな?」
ヤマトが言うのにそれが出来れば言うことはないが無理だろうと二人が項垂れる。
そんな二人にヤマトは明日はダイチに響希から離れないように言う。
「収まるまで休ませた方が良くねぇか?」
ダイチの問いにヤマトは考えがある、とだけ告げたのだった。

翌日、視線を感じながらも二人は放課後を迎えた。帰る為に校門へと向かうとなにやら騒がしい。主に女子生徒が騒いでいる様だった。何があるのか不思議に思いつつ二人が辿り着くと学生服のヤマトが仏頂面で立っていた。
「「ヤマト?!」」
ダイチと響希の声にヤマトが気付き二人に向かうと女子生徒が響希に向かって文句を言っているのが聞こえた。彼女達も噂を知っているらしい。いや、ほぼ全校生徒が今や噂を知っていた。
「どうしたの?なんでわざわざ大学に…」
響希が問うのにヤマトが問題を解決するためだと告げる。どうやって?二人が疑問に思って居るとヤマトが響希を引き寄せた。それを見ていた周囲が沸き女子生徒が叫ぶ。
「その女に騙されてるのよあなた!」
「騙されているのは貴様らだ」
ヤマトが周囲を睨む。それだけで周りの生徒たちは怯んだ。
「彼女は私だけのものだ。そうだな?響希?」
「えっ?!違っ!」
慌てて響希が顔を真っ赤にして否定する。
「お前の初恋は私だろう」
「そうだけど!そうじゃなくて!!」
響希が慌てるのに一人の生徒が告げる。
「そ、そうよ!おかしいわ!久世さん二年の先輩と付き合ってるじゃない?」
「あのようなクズが一時でも響希と付き合った、などと、彼女の汚点でしかない」
蔑むような目でヤマトが言うのに周囲が別れたことを察した。
「え、じゃあ、あの噂って…」
誰かが呟いたのにヤマトがその男が響希を陥れる為に流したと蔑み告げるとヤマトの様子に周囲にいた学生たちは納得し始めた。
「ごめんね久世さん…」
一人、また一人と響希に謝るのに響希が大丈夫だと返しているとふと一人の生徒が響希に問いかけた。
「で、その威圧的な高校生、久世さんの何?」
「あ、幼なじみ」
響希が言うとヤマトが響希に問いかけた。
「…のままで良いのか?」
「へっ?!」
まさかそんな問いを投げ掛けられると思っていなかった響希は声を裏返した。
「な、な、何いって…」
「幼なじみのままでお前は良いのかと聞いている」
響希は思わず言葉に詰まった。周囲にいた学生たちは二人の様子に興味深々だ。
「そういえばさっき初恋の相手って…」
誰かが呟いたのに響希が慌てる。
「む、昔の話だし!ふ、ふられたし、俺!」
「私は覚えていないからノーカウントだ」
ヤマトが言うのに響希はそんなのない!と反抗した。
「俺すっごく悲しかったんだよ?!あの後友達になれたけど、でもずっとヤマトは俺のことを恋愛対象として見ることはないんだって思って…」
「覚えていないと言った筈だ」
「だからって何か変わるの?!」
響希が叫ぶと恐る恐るダイチが手を上げた。それに気づいた響希とヤマトがダイチの発言を促す。
「聞いてて思ったんだけど、ヤマトは響希に告白されたいのかなー、なんて…」
「はぁっ?!」
響希が顔を真っ赤にするのに対しヤマトは無言だ。
「ひ、響希、ヤマトに…」
「い、言うわけないじゃん!!」
ダイチが響希を促すと響希は顔を真っ赤にして拒絶した。ヤマトが若干項垂れているのはダイチの気のせいではないだろう。
「じゃあ今はヤマトの事は幼なじみ兼親友でしかないと?」
ダイチが問うのに響希は言葉を詰まらせた。
「んじゃ俺は?」
「幼なじみ兼親友」
「ヤマトは?」
「……………………お、幼なじみ兼親友」
響希の態度に響希がヤマトを今も好きなのはまるわかりなのになかなか口を割らない響希にダイチはもとより周囲もあきれ始めた。そこへあの男が現れた。周囲がざわつき出す。
「…何?何か言いたそうだね、君たち?」
「貴様の企みは私が潰した」
ヤマトが男を睨み付け告げる。
「あの時といい今回といい、良くできた番犬だな」
男はヤマトを忌々しそうに見るがすぐ表情を変えた。
「だが一時でも彼女が俺を選んだ事実は変わらない。彼女はお前より俺を選んだんだよ」
「それは違う!ヤマトとあなただったら、俺は迷わずヤマトを選ぶ!」
響希が即座に反応した。響希は告げる。
「俺が本当にあなたのこと選んだんだったら、あなたの事疑ったりしなかった」
「……簡単に手に入ると思ったんだけどなぁ。クソムカツク女だ」
男のその言葉にキレた響希が叫んだ。
「そもそも!あんたなんかがヤマトより良いわけないじゃん!!あんたみたいな身体だけが目当てのさいってーな奴とヤマトを一緒にしないで!!!」
「俺に告白されて有頂天だったクセになにいってやがる!」
「あの時はあんたがこんなさいってーな奴だと思ってなかったし!ヤマトの彼女にはどうやってもなれないって諦めてたからだもん!」
男と響希の言い合いに周囲が押されていたが、よくよく聞いているとこれはある意味告白では?と気づいた頃、男が言った言葉が引き金だった。
「じゃあお前は好きな男がいるのに他の男と付き合った最低女だ!」
「……そうだよ。でも俺は好きでも絶対振り向いてもらえないんだもん!!だから!!」
今までの状況を見ていただけでもヤマトが響希に好意を持っていることは明らかなのに、当の本人はどこをどうしたら絶対振り向いてもらえないと思ったのだろうか?響希を除く全員が思った。
「響希、少しいいか?」
「何?ヤマト?」
「いつ私がお前を好きになることはないと言った?」
「だって俺ふられて…」
ヤマトがどれだけ根にもつのかとため息を付いたのち言う。
「それはその時点の私の話だろう?」
「でもヤマト彼女なんていらないって言ってたし」
響希が言うのにどれだけ鈍いんだと回りが思っているとヤマトが響希に告げた。
「そうだな、必要ないと思っていたが気が変わった。…ただ、相手が素直になってくれないとどうしようもないのだが?」
響希を見つめる視線にその相手が自分のことだと理解した響希は顔を真っ赤にした。
「い、言うの…?」
ヤマトは頷く。響希は少し躊躇ったが一気に言った。
「ヤマトの事好きなの!俺と付き合って下さい!」
「ああ。いいだろう」
「……ほ、ホントに?」
信じられないものを見るような目をした響希をヤマトは抱き締めた。その瞬間歓声が上がった。

その後校内のあの噂は消え、逆にあの男が踏み台にされたこととその最低さが広まったのだった。
「あれだけ騒げばな…」
「当然の報いだな」
放課後三人でカフェに集まりその事について話す。あの男の本性が暴かれてから実は以前に被害に遭っていたという女子生徒が何人か出て来ていたのだ。やり口は卑劣そのもので、あの男が誘導するのはもちろん、他にも酒に酔わせて仲間内で強姦、その様子を写真に納めて口封じをする、ということを繰り返していたらしい。あの男と仲間たちはその件で立件、起訴された。
「現在の日本では、あまり重い刑罰になりそうに無いのが悔やまれるがな」
「そうだね…」
ヤマトが言うのに響希が同意する。
「だけど、その被害に合った子には悪いけど、響希に何もなくてホント良かった」
ダイチが言うのにヤマトも同意する。
「……でも俺もあの人の事ホントに好きになってたらおんなじ目にあってたかも…」
響希が言うのにヤマトとダイチが暗くなる。
「あ!ごめんね!実際にはホントに好きな訳じゃなかったし、話しててもデートしてても
なんか、違うなって。多分どこかで比べちゃってたんだと思う」
「比べる?何と?」
ダイチが聞いてくるのに響希は顔を赤くし呟いた。
「その、ヤマトと…」
その返答にダイチはのろけか!という表情をし、逆にヤマトは眉間にシワを寄せた。
「それでは何故あの男と付き合ったりしたのだ!」
「ヤマトにはふられてるから諦めてたんだもん!」
そう言われてヤマトは過去に響希をふったという自分を呪った。
「ま、まぁまぁ、誤解も解けて付き合うことになったんだし、もうそのやり取り止めね?」
ダイチが仲裁に入るのに二人は渋々納得した。
「で、この後は…俺邪魔ですよね…?」
「邪魔だな」
ヤマトの即答にダイチは項垂れる。
「あー、これから放課後俺一人かぁ~。彼女欲しい~」
ダイチの嘆きに響希は苦笑し、ヤマトはどうでもいいからさっさと帰れと冷たく突き放したのだった。


あの後ダイチが帰りカフェを後にした二人はしばらく街を歩いたあと家に向かっていた。
ふとヤマトが口を開いた。
「来るか?」
ヤマトの家に?響希がそう尋ねるとヤマトはやはりいいと口にした。そんなヤマトに響希がいたずらっぽく笑う。
「行こっかな。だってヤマトは信頼に足る人物、だもんね?」
そんな響希に暫く耐える日が続くことを悟ったヤマトだった。

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